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東側の食卓を彩った陶磁器たち

ズトラーストヴィチェ!
現在BUNKNR TOKYOは「ソ連の食卓展」を開催しております。
ソ連時代のロシアやウズベキスタン、さらにはウクライナやなんと東ドイツのアイテムまで!
東側の食卓を彩った可愛い陶磁器を集めました。

というわけで今回は研究員のRyuseiがアイテムの紹介をしながら、その歴史や工場について軽く触れて行こうと思います。

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陶磁器というと日本では、やはり古くから伝わるアジア、特に中国や朝鮮の陶磁器を思い浮かべる方が多いかと思います。
東アジアからシルクロードを伝わって中央アジアやイスラーム地域にもその文化は伝わり、各地でさまざまな美しい陶磁器が古代より製造されていました。
もちろんその美しい品々は貿易を通じてヨーロッパにも持ち込まれました。
しかし時の権力者たちがさまざまな方法を試しても、中国製のような美しいものはなかなか再現できず……。試行錯誤の末にヨーロッパでは18世紀になりようやく磁器の文化が開花しました。
1710年にドイツに産まれたマイセンという窯がヨーロッパで最初の磁器となります。

①ロモノーソフ/インペリアルポーセリン

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マイセンが出来てからわずか30余年。
ロシアで初、ヨーロッパでは3番目の磁器工場が生まれます。それがインペリアルポーセリン。直訳で帝国磁器工場と呼ばれることもありますね。ソ連時代にはロモノーソフと呼ばれていました。
呼称の変化の裏には、1925年にロシア科学アカデミー200周年を記念して、ロシアの偉大な科学者であるミハイル・ロモノーソフにちなんでロモノーソフ磁器工場と名前を変えた後、2005年に皇帝の名を冠したインペリアルポーセリンに戻されたという歴史があります。

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そんなインペリアルポーセリンが生まれたのは1744年。
当時ロシアの権力を握っていたエリザヴェータ女帝の名によりサンクトペテルブルクに創設されました。
最初は皇帝のための献上品や、外交用の品を作っていた工場ですが、女帝ことエカチェリーナ2世の時代(在位1762〜96)に工場は再編成。
18世紀末には「全ロシアを満足させる陶磁器」を目標に様々な形のものがつくられるように。
その後も事業は発展を遂げていき、革命後の1918年に事業が国有化されるとプロパガンダ陶磁器も作られるようになりました。

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 コバルトネットというシリーズが1958年にブリュッセル万国博覧会でグランプリを受賞したり、1980年には科学技術分野でソ連国家賞を受賞したりと数々の功績を残すインペリアルポーセリン。
現在までこの素晴らしい技術や格調高いデザインは継承されており、プーチン大統領がエリツィン氏の次女であり政治家のタチアナ・ユマシュワ氏の誕生日プレゼントに選んだなどのニュースもあるほど。 
現在4000アイテム以上も展開しているインペリアルポーセリン。
中にはこのようなアヴァンギャルドなデザインのものも。

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 革命前後ではプロパガンダデザインのものも造っていたインペリアルポーセリンですが、マレーヴィチやカンディンスキーもその制作に関わっていました。
上記マレーヴィチデザインは、アヴァンギャルドコレクションとして不定期に復刻される希少な逸品です。

②東ドイツから

インペリアルポーセリンの次は少しソ連から離れ、東ドイツのアイテムを紹介させていただきます。
ヨーロッパ初の磁器生産はドイツのマイセンにて始まりましたが、その後もさまざまな工場ができ、美しい品々がヴィンテージとしても残っております。

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中にはこのようなどこか構成主義を感じるシュガーポットなども。
こちらはBremer&Schmidtという工場の逸品。80年代か
1896年に始まったブレーマー&シュミット磁器工場。二つの世界大戦を乗り越えた後、1958年にドイツ民主共和国(東ドイツ)が国の管理下に置き、73年に国有化。その後は76年まで続きましたが現在は無くなってしまった工場です。

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同じ工場からはこのような和風なデザインのアイテムも。ゲイシャモチーフなイラストが可愛らしいですね。虹色に輝く美しい逸品です。

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底部にはキリル文字も。ロシア語で「GDRの磁器」と書いてあります。
いろんな国のミックス感が面白い。

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ちなみにこの虹色の輝き、ラスター彩と言って起源はペルシア(イラン)にある製法なのですが、一度途絶えてしまったこの技術を復活させたのが加藤卓男という日本人の陶芸家。多治見の人間国宝です。
あるきっかけで最近は私も少し陶芸に興味があるのですが、こういう歴史を知るのも面白いですよね。

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他にも東ドイツの製品ですと、こちらのLichte Porcelainのものが。リヒテというドイツ東部の小さな町で1822年に始まった工場の品です。
ソ連や東ドイツなど共産圏の陶器は金彩が美しいですね。

③ウズベキスタンから

最後にウズベキスタンから入荷したアイテムもご紹介させていただきます。

前回こちらのブログにてご紹介したリシタンのものとはまた違った磁器のティーカップを入荷いたしました。

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綿花の柄と赤がとても可愛らしいですね!
ソ連らしい金彩も華やかです。
中央アジアの料理で食後に付いてくるチャイ。2枚目や3枚目のような形のカップと急須で出てくるのが中央アジア流だそうです。

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『Soviet Uzbekistan』という本からちょうど昼下がりの休憩の写真がありましてのでこちらも紹介させていただきます。
右に写る男性が同じ形のカップと急須でチャイを嗜んでいます。

リシタン陶器やこちらの磁器に見られる綿花の柄ですが、こちらにも歴史があります。
年間約100万トンも生産されており、世界6位の生産量を誇るウズベキスタンの綿花ですが、乾燥した気候のウズベキスタンでは本来向かない作物。
ですが、スターリンの農業政策によって無理やり灌漑を進め綿花栽培を行なったという歴史があります。
結果としてはアラル海が干上がってしまい、悲惨なことに……。
写真は左が1989年、右が2014年のもの。
自然は大事にしないとですね……。

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おまけ

悲しい話で締めるのは心苦しいので、穏やかな心になれるよう私がいけたドライフラワーを載せておきます。
リシタン陶器の華やかさと、ドライフラワーの組み合わせ。侘び寂びを意識しましたがいかがでしょう?

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