【能登半島地震】避難計画は非現実的 志賀原発再稼働に反対
※文化時報2024年5月24日号の掲載記事です。
原子力発電所をなくすことを目的に現職・元職の市区町村長らが集う「脱原発をめざす首長会議」は11日、フレンドパーク石川(金沢市)で学習会と年次総会を開いた。2006(平成18)年3月に北陸電力志賀原発2号機(石川県志賀町)の運転差し止めを命じた金沢地裁の元裁判長、井戸謙一弁護士らが講演。能登半島地震の被災状況を考慮し、原発再稼働に反対する決議を行った。(大橋学修)
脱原発をめざす首長会議は、原発周辺の自治体を含む首長や首長経験者ら70人が12年4月に設立。学習会やロビー活動に取り組んでいる。
志賀原発1、2号機は11年から運転を停止中で、北陸電力は2号機の再稼働を原子力規制委員会に申請している。能登半島地震では、外部電源を受けるための変圧器が壊れるなどした。
学習会で井戸弁護士は、能登半島地震では規制委の想定を超えて活断層が連動したと指摘。周辺の土地が隆起しなかったことなどの幸運によって、重大事故に至らなかったとの見方を示した。
その上で、原子力災害の避難計画について「帰還できるまでの生活をどうするのかまで含めたものであり『とりあえず逃げてください』ではだめ。合理的な避難計画ができないならば、司法は運転差し止めを判断すべきだ」と訴えた。
元珠洲市議で「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団長の北野進氏は、珠洲原発の建設計画が住民の反対運動によって、03年に撤回された経緯を紹介。能登半島地震のように道路の復旧に時間がかかると、原発事故が起きた際に放射能から逃れられない状況になると伝えた。
年次総会では、学習会の内容を受けて、「確実に命と生活を守れる現実的な避難計画がない限り、原発を稼働させてはならない」と決議。今年度中に政府がエネルギー基本計画を改定する予定であることなどを踏まえ、政府などへの働きかけを行っていくことを決めた。
元静岡県湖西市長の三上元氏は「地震や原発による複合災害に対応する避難計画はつくれない」と強調。元福島県南相馬市長の櫻井勝延氏は「最大の避難計画は、原発を稼働させないことだ」と述べた。
原子力行政を問い直す宗教者の会
長田浩昭事務局長に聞く
志賀原発を巡る避難計画について、真宗大谷派法傳寺(兵庫県丹波篠山市)住職で原子力行政を問い直す宗教者の会事務局長の長田浩昭氏に聞いた。
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避難計画は、原子力規制委員会の安全審査の対象になっていないことが問題。志賀原発で重大事故が起きた場合の避難ルートは、今回の能登半島地震で一部が通行止めになった。
原発事故で能登半島から出ていけない状況をつくることは、住民の切り捨てにほかならない。だから、私たちは命の問題であるとし、脱原発を訴えている。
能登半島地震の震源地に建設予定だった珠洲原発は、地元の人が14年かけて反対運動を展開したことで、計画が撤回された。もし原発が立地していれば、中部地方や西日本は大変なことになっていた。
その意味で原発事故を未然に防いだ住民たちが、今もがれきの中で生活している。こんな理不尽があっていいのだろうか。原発によって地元住民が安全な生活を切り売りしていることを、都会の人は認識すべきだ。(談)
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