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社寺を福祉避難所に 京都市上京区が協定

※文化時報2022年3月15日号の掲載記事です。

 新型コロナウイルス感染予防で災害時の密集を避けるため、避難施設の拡充を図る取り組みが全国の自治体で広がっている。そうした中、神社仏閣を避難所として活用しようと、京都市上京区は今年1月下旬、寺社を含む7施設と災害に関する連携協定を締結した。今回の協定で確保したスペースは、障害者や高齢者を受け入れる「福祉避難所」などとして用いる方針だ。(高田京介)

自治体との協力倍増

 福祉避難所は、自治体の指定避難所が立ち上げられた後、要配慮者の有無など必要に応じて開設される。原則として災害発生時から7日以内に設置され、社会福祉施設などで専門性の高い支援を行う。

 京都市上京区には、市指定避難所が21カ所、福祉避難所が13カ所ある。人口約8万2千人に対し、受け入れの上限は計約3万人。区地域力推進室の山内みどり総務・防災担当課長は「宿泊施設や商業施設などが少なく、場所の確保が課題だった」と話す。

 区はこうした課題を検討する中で、区内に約200の社寺があることに着目。昨年に協力寺院・神社の候補を各学区の代表者に呼び掛けて募り、今年1月21~28日に協定を交わした。

 協定を結んだのは、浄土真宗本願寺派の安養寺と西圓寺、長源寺、真宗大谷派長徳寺、白峯神宮、水火天満宮の6社寺と、宿泊施設「KéFU stay & lounge」。

 社寺では、社務所や寺務所の一室を、開設までに時間を要する福祉避難所の一時施設として障害者や高齢者の受け入れを行うほか、支援物資の供給拠点として活用することを想定している。

 山内総務・防災担当課長は「市民はもちろん、社寺にも取り組みを発信していくつもりだ。社寺の規模に関係なく、災害発生時にできることを共に検討したい」と話した。今後も協力社寺を募るという。

 宗教施設の防災拠点化に詳しい大阪大学大学院の稲場圭信教授(共生学)によると、自治体と協力する宗教施設が、コロナ禍によって2020年の2千超から4千超に倍増したという。

 稲場教授は「避難所の不足が叫ばれる中で、特に福祉避難所としての活用も視野に入れた協定を結んだのは意義深い」と評価。「宗教施設のバリアフリー化が問題になってくる。自治体は社寺への支援も行っていくべきだ」と語った。

信仰の場に理解を

 神社仏閣を避難所として利用する取り組みが注目される半面、避難所が信仰の場となっていることから、弊害も指摘されている。

 上京区と協定を結んだ白峯神宮は、普段武道を行う両道館を提供する。収容人数は約20人を予定。福祉避難所の一時施設にするほか、一般の避難所としても提供することを想定している。

社寺と地域の写真①

災害時に避難所となる白峯神宮。スポーツの守護神として信仰されている

 白峯神宮の山田蓉宮司は、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災の際に訪れた長田神社(神戸市長田区)の取り組みを知る。「食事や水などの支援は、数日たてば何とかなる。いち早く整備しなければならないのはトイレだった」と振り返る。

 震災発生当時は熱田神宮(名古屋市熱田区)で奉職していた。発生から5日後、大学の同級生が奉職する長田神社を見舞った。境内には、火災や倒壊などで家を失った人々が押し寄せ、敷地内の婚礼会場を半年ほど開放した。

 一方で1カ月ほどたってもトイレが整備されず、境内で用を足す被災者がおり、神職と被災者が対立することもあったという。山田宮司は「社寺はただの施設ではなく、信仰の場だ。自治体は信仰を担保する支援を、協力する社寺に行う必要がある」と話している。

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