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文化財を守り、活かすマネージャーに求められるもの(1/4)

1.はじめに
 文化財の保護(保存と活用)の取り組みは、所有者が行うことが原則です。しかし、所有者は文化財の保護制度についてあまりよく分かっていないという現状もあり、中には適切に維持・管理が行われなかったり、現状変更の手続きを怠ったりと、文化財として適切に管理が行われていないものもあります。また、平成30年の法律改正により文化財の活用の推進が求められる中、文化財の保護について指導する立場にある市町村においては、文化財保護条例を見直すとともに、これからは文化財についての新たな管理基準を儲け、これまで以上に文化財が適切に保存、活用されていくよう指導するとともに、自ら実践していくことが求められます。
 とはいえ、これまでの文化財行政は”守る”ことに重点が置かれ、”活用”することについては積極的ではなかったことから、すぐに指導するということは難しく、現場において文化財の保存・活用を推進する人(ここでは以下「マネージャー」といいます。)と協力して保存と活用の取り組みを進めていくことになります。マネージャーとは通常所有者から施設の管理・運営を委託された個人、NPO法人や任意団体の代表などです。マネージャーは文化財の価値を正しく認識した上で、それを適切に維持・管理し、正しく伝えていくための取り組みを実践しなければなりません。そういう意味ではマネージャーは誰でもいいという訳ではありません。そこで、今回はマネージャーに求められる「資質」とはどういうものなのかについて考えてみたいと思います。

2.保存と活用の取り組み

 文化財の”保存”とは、文化財の価値を適切に維持・管理し将来に継承すること、また”活用”とは、文化財の価値を広く国民に伝える取り組みのことです。最近では積極的に施設を利用し、収入を増やして保存のための好循環をつくるという意味の方が主流になってきているともいえます。しかし、収益性だけを追求し失敗したら撤退するというような活用方法はあまり好ましいとはいえません。文化財の価値地域の伝統風習を大切にしながら、新たなノウハウを導入し、次世代につなげていくというような考えのもとにおいて活用が図られるべきであると思います。
 マネージャーにあたる人は文化財の所有者から施設の管理・運営を委託された個人、NPOや任意団体の代表などで、現場における実質の責任者にあたる人です(受付業務や清掃のみを任された個人は除きます)。彼らは地域づくりに積極的に関わる方、仕事を退職した方などが多く、かならずしも文化財の保護制度に精通したとは限りません。
 一般的な仕事としては所有者から依頼された保存のための取り組みのほか、市民や観光客など施設を訪問してくれた方々への対応です。しかし、多くの施設において国が求めるような活用が図られているか、というと疑問です。文化財を適切に維持・管理するとともに、文化財の本質的な価値を理解してもらうため、積極的に情報発信を行って集客を図るとともに、ガイドの育成体験プランの造成などサービスの向上や地域への還元、いわゆる”活用”に資する取り組みが求められているのです。マネージャーは自分の役割を明確にして、しっかりとした体制をつくり、スタッフを有効に機能させていかなければなりません。               (2/4)へつづく

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