紙の上の旅(紀行文・第2回)
運転台の後ろから先の道を見遣る。線路の行く手に工場の、鉄の林が待ち構えている。更に先を見ると線路がその奥へ吸い込まれている。電車は岳南原田を出ると、手前で分岐することもなく、速度を上げながら工場群へ迷い込んでゆく。左右に上方、至る処を縦横無尽に錆びた鉄骨が走る。こいつは本当に人の乗る為の鉄道なのかと心細くなるかもしれない。線路は曲線を描き、見通しは効かない。効いたと思ったら古ぼけた貨物ホームが至近に現れる。これらの何処かに滑り込んで出荷されるのではないかとすら思うだろう。でも