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アルコールは百薬の長か、はたまた毒薬か

散歩が終わった帰り、「昼は、ラーメン食べに行こう。ビナウォークの『麺処ぐり虎』に行きたい」と謙也の提案に、息子が違うところに行きたいとごねた。ぐり虎(グリコ)は、イタリアンシェフから生まれた日本一の塩ラーメンで岡山初!ミシュランガイド2021掲載のラーメン店だとネットに載っている。

「じゃあ、バーミヤンはどう」と言うと、「歩けるの」と優子が心配した。「まぁ、『華の舞』でも良いけどな」「やっぱり、飲みに行くのか」てなわけで、三人は、ららぽーとの中を通って、道路の反対側にある「花の舞」に向かった。息子が、「営業中かどうか、俺見てくる」と確認に行った。案の定、準備中の看板が堂々と入口の看板と並んで出ていた。「仕方ない。バーミヤンに行こうか」謙也が気が乗らないのは、バーミヤンは国道沿いの田ぼの中にある。ロードサイド店だからだ。結構な距離があった。

生ビール、よだれ鷄、小籠包、焼き餃子、香港風酢豚、麻婆豆腐、優子は野菜たっぷりの塩ラーメン、息子は、バーミヤンラーメンと注文した。「最近は、タブレットで注文できるから、いいよね」と謙也が言うが、息子がタブレット操作している。「探しにくいよ。あと、何度も確認ボタンを押さないと行きつかない」とイラついていた。

「このラーメン、超絶に旨いんですけど」とラーメン好きな息子が言うと同時に優子が「本当に、美味しい。中華街に行ったみたい」と絶賛する。海鮮3種の塩あんかけラーメンは、カニ爪・海老・イカの3種の海鮮とフクロダケを優しい味わいのあんかけと麺だから本格的だ。

一方、息子の食べたバーミヤンラーメンは、昔ながらのスタンダードなあっさりラーメンで、東京醤油ラーメンというより中華そばの味だ。だから、超絶に旨いとなる。意外に古風な面を持つ若者世代の特徴かもしれないと謙也は思って笑った。

まだ、息子が小学生の頃、かしわ台駅近くに「楽」という本格中華屋さんがあった。酢豚、麻婆豆腐、焼き餃子と並んで、坦々麺が美味しかった。意外にもハーフチャーハンというメニュがあって、最後によく食べた記憶がある。今は、「東京餃子軒」に変わってしまった。「惜しいことをした」と謙也は寂しさを感じた。

結構酔っていたにも関わらず、足も悪いので優子と息子を先に返して、謙也は、ららぽーとの中にある「ロピア」に行った。マッコリとレモンサワー、かき揚げ、お茶ずけ海苔などを買って、家まで休み休み帰った。ちょうど、米が10%オフだったので、近くのスーパーに買い物に行っていた二人も同時に帰宅していた。「助かった」と鍵のない謙也は、ほっとした。寒空に外で待つのはキツイ。「酒飲むか」と聞くと息子は、「昼飲んだからいいよ。飲むと一日中、頭がクラクラの状態で過ごさなければなくなるから」と断った。

なぜ、マッコリを買ってきたかというと、優子が昨年夏に作りはじめた梅酒ができあがった。密かに、優子が一年間楽しもうとしている梅酒を2〜3週間で息子が飲み干してしまいそうだ、と謙也に告げたので、梅酒の代替えにマッコリを買って来た。

飲むか否かは分からないが、優子の来年の夏までの楽しみを奪われてはたまらないという思いで代替えが必要だった。ビール好きな息子だから、ビールがあればいいのだが、無くなった時が心配だ。

お酒好きには、アルコールが切れるとどんな種類の酒でも口に入れば、欲する習性がある。謙也がその習性を一番よく知っている。そんなわけで、老婆心が出てしまった。そんなに危惧することがないのに、飲んべえの悪癖を知り抜いているからこそ、守ろうと必死だ。

下手すると二人は朝から、ビールを飲む。まるでアル中に近い。優子の叔父がアル中で若くして死んだ。壮絶な闘いが家族や親戚にもあった。「だって、親類が集まっても、お正月に一切お酒類を出さないのよ。みんな心得ているから、お茶で我慢する」そんなことを言っていた。

心が弱いというわけではないが、酒の力を借りて物事を言ったり訴えたりしなければいいと謙也は思う。自分もそういう傾向にあるからだ。そんなこんなで、酔いどれ親子の狂宴が続くが、優子は鬱病になったり、塞ぎ込んだりしなければ、お酒は百薬の長だと思っている。そんな呑気な優子に助けられている親子でもある。明るい家庭は、そうやってできるのかもしれない。


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コミックの小説家でデビューしました。笑いをお届けしたいと思います。ペンネームは文豪乃冬目創玄てす。 こちらにも https://note.com/bungo_3/