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これからのプロダクトに求められる要素は「自己実現の欲求を満たすこと」と「信頼性」かもしれない

はじめに

どうも、ぶんたです。(@bunbuno0

音声プラットフォームのプロダクト「Voicy」のプロダクトマネージャーをやっています。

そのVoicyの中で世界のテック企業の創業ストーリーや成長要因などを調査してゆるゆるとお話している「プロダクトハック」という音声番組もやっていたりしているんですが、
これまでの世界を席巻したプロダクトの成長理由みたいなことを調べている中で、Web3.0の流れや、Z世代に人気のプロダクトが今まで違うところなど、世の中の流れは変わってきているような感じがして、今回noteを書いてみました。

このnoteでは
・世界でいま使われているプロダクトや成長要因になった事例
・今人気になりつつあるプロダクトの特徴や世の中の流れから、今後求められる要素は何か
・そう考えたら「自己実現の欲求を満たすこと」と「信頼性」かもね
みたいなところを、完全なる個人の妄想でお届けしたいと思います。

(ちなみにVoicyで以前Web3.0の特集をやっていて、錚々たる専門家の方々がお話しているので、web3.0に詳しくなりたい方はこちら超絶おすすめです!)


15年スパンで大きな入れ替わりが起こるのかもしれない

いろんな企業を調べている中で、今世界で多くのユーザーを抱えるプロダクトって、実は大体2010年あたり以前に作られたもので、直近作られて世界を席巻しているようなプロダクトは本当にTiktokくらいなんですよね。

以下がサービス開始年度をざっくりまとめたものです。(多少ずれてる部分はあるかもしれません)

●サービスのリリース年度
Amazon:1995年
Google:1997年
Netflix:1998年(DVDレンタルサービス。ストリーミングは2007年から)
Facebook:2004年
Youtube:2005年
Twitter:2006年
Spotify:2008年
Airbnb:2008年
WhatsApp:2009年
Instagram:2010年
Pinterest:2010年
Uber:2010年
Wechat:2011年
snapchat:2011年
Telegram:2013年
Tiktok:2016年(Douyinのリリース。ByteDanceの初期の主力プロダクトToutiaoは2012年リリース)

近頃はWeb3.0やメタバースなどのワードが飛び交っており、既存のソフトウェアからの革新の期待への空気感みたいなものを感じます。

インターネットユーザーの大半がコンテンツの消費者であるWeb1.0の時代が1991年から2004年にかけて、
また情報の流れが一方向性から双方向性になったWeb2.0の時代が2004年から現代にかけてということを考えれば、大体15年スパンで変わってきており、次の大きな変革の初動が今起こっていてもおかしくはないタイミングなんだと思います。

ちなみにハードウェアでもWindows95が発売された1995年から、iPhoneの登場の2008年ということを考えても、大体15年スパンで大きい変革が現れているのだといえそうです。

ハードウェア分野においても、AppleがMACの後iPhoneという革新を生み出したように、MetaがFacebookの後にmeta questのようなVRゴーグルへの革新というのを生み出すのかもしれません。(ずっと元年と言われてますが、そろそろ本格的に普及しそうな気がします)

なので、今世界を席巻しているプロダクト(Facebook、Youtube、Instagramなど)の成長してきた歴史と、いま現在新たに流行りはじめているプロダクトの特徴などから、2020年代のプロダクトに求められる要素をいろいろと妄想してみたいと思います。

もちろん、今でも20年以上前に生まれたAppleやMicrosoft、AmazonやGoogleが第一線にいることを考えると、一気に全てがすげ変わるということは決して無いとは思いますが、中堅以下のプロダクトは徐々に淘汰されて、気付いたら大きく変わっている!という状況になるような感じなんでしょうね。

いま世界を席巻しているプロダクトのユーザー数

現在、世界のインターネット利用経験者は約50億人で、上位はほぼSNSが占めます。ソーシャルメディア利用人口は46億人といわれているようです。
(ちなみにGoogle利用者は43億人)

世界で使われているプロダクトの上位は以下のようになっています。

●ユーザー数(大体2020年前後のデータを抜粋)
Google:43億人
Facebook:29億人
Youtube:23億人
WhatsApp:20億人
Instagram:13億人
Wechat:12億人
Tiktok:10億人(Douyinの6億人を除く)
Telegram:7億人
Snapchat:5.5億人
Spotify:4.6億人
Pinterest:4.5億人
Twitter:4.5億人
Reddit:4.3億人
Amazon:3.1億人
NETFLIX:2.2億人

やはりGoogleは強いですが、全体で見るとSNSの分野がほとんど上位を占めています。

2004年以降はWeb2.0という、誰もがコンテンツを作れるようになった時代において、過去成長したプロダクトの一つのキーとしては「コンテンツが作りやすい・アップロードしやすい仕組み」は大きなポイントでした。

またデータを構造化してレコメンドすることによって、広告収益につなげていくモデルが大きく成長しました。
特にGoogleはWebコンテンツの情報の構造化を、Facebookは人間関係の情報の構造化を行って世界で最も使われるサービスとして今もなお君臨しているのは、そういったテクノロジーの力を使った構造化する力が圧倒的だったからだといえます。

そしてソーシャルの強みである、バイラルやネットワーク効果で人をどんどん増やし、さらには承認欲求を満たす仕掛けを利用しプロダクトに夢中にさせていき、どんどん増殖していきました。

つまりいろいろ調べるなかで思ったのが、2010年代に強くなったプロダクトは「コンテンツが作りやすく」「バイラルとレコメンドで注意を引き」「承認欲求を満たすこと」のできるプロダクトが大きく成長したのではないかなと思っています。

その点はもう少し詳しくこのあと取り上げたいと思います。

いま世界で使われるプロダクトが成長した特徴

①コンテンツが作りやすく増える仕組み

SNSサービスの大きな伸びる要因としてはコンテンツが増える仕組みはおそらくかなり重要なキーだったかと思います。例えば、

  • Youtubeはどんなファイル形式でもアップロードできるようにし、画質を落としてでもアップロードや再生できるようにした

  • Instagramは当時カメラの性能が良くないことをフィルタを利用して綺麗な写真をアップロードできるようにした。またアップロードする際の体感速度を速くした

  • Snapchatは一定期間で写真が消える仕組みを発明。インターネットに残すことへの恐怖感をうまく緩和しコンテンツが生まれる仕組みを作った。それはInstagramのストーリーズにも応用された。
    また、ARフィルタは誰でも楽しいコンテンツが作れる機会を与えてくれた。

  • Tiktokは音楽とアニメーションの掛け合わせで誰でも簡単にコンテンツを作れるようにした。「musical.ly」というリップシンク(口パクで歌を歌う)アプリを買収して加速させた。また短尺動画はクリエイターにとってコンテンツを作るハードルを下げた。コラボ動画を作る機能なども後押し。

これは余談ですが面白いのが、YoutubeにしろInstagramにしろ、アップロードできることやフィルタは、当時普通に他の会社もやっていたというところなんです。
その中でも、アップロード時間を短縮したことやファイル形式を全て対応したことなど、細かい課題解決やその組み合わせが最初の広く使われる原動力となっていたようです。
当時はインターネット環境も、デバイスの性能も今ほど良くなかったりしますから、その中で工夫したんでしょうね。

YoutubeやInstagramがなぜ伸びたかというのは、もちろんその後のプロダクトの磨き込みがあったからこそなのですが、初期はそういった理由で数千万ユーザーの規模まで一気に膨れ上がったんですね。

だからこそ、今の時代だったら何がユーザーの潜在的課題になっているのかを考えないと、表面的に同じようにやって伸びるようなヒントはあまりないんだろうなと思ったりします。

少し話が逸れましたが、こうやってコンテンツが大量に生まれる仕組みを作り、行動データをレコメンドに活用、さらには広告のターゲティングに使うといったような流れがSNSプロダクトのメインモデルとなっています。

これが今個人情報観点から問題になり、Appleはデータをとらないようにしたり、それによってFacebookの収益が下がったりなど、ここ20年は主軸だった広告ビジネスというものが揺らいでいる事実はあるかと思います。
この辺りは後半で触れたいと思います。


②バイラルとレコメンド(アテンション)

先ほどのようなどんどんコンテンツが生まれる仕組みが出来れば、情報がどんどん溢れてきます。
その中で、人気のコンテンツをレコメンドし、それを誰かに伝えたくなるというような仕組みもこの時期大量に作られました。少し歴史を遡れば、

  • Youtubeの埋め込み動画は当時人気だったブログとの相性がよく、どんどんブログに埋め込まれた

  • Spotifyは音楽ストリーミング市場を作り、Facebookと提携しFacebookのタイムライン上で自分のお気に入りの音楽を友達に聴かせられる体験を実現した(タイムライン上で再生することはストリーミングでこそ成し遂げられた)

  • 各社コンテンツレコメンドの仕組み×広告マッチングの仕組みの進化

YoutubeやSpotifyは誰でも気軽にコンテンツが作れるプラットフォームではないので、どちらかというと、コンテンツを軸にバイラルできる設計を作るのが上手でした。今ではどこでもやれる当たり前のことですが、当時は画期的でした。

また、SNS全般で言えることですが、よく言われるネットワーク効果がよくできています。
他の人を呼べば呼ぶほどコミュニケーションが取りやすくなったり、自分のタイムラインには面白いコンテンツが増えていくので、自然とユーザーが増加していきます。

またいいねやフォロワーのような分かりやすい影響力を持った数字が上がっていくため、中毒的に利用するユーザーが増えていきました。

ここでの弊害は、そのコンテンツの情報が合ってるか間違ってるか、良いか悪いかは置いておいて、人気になったものがより多くの人の目に留まるという点です。
フェイクニュースであったり、事実無根の情報がシェアされたり様々な問題を生むことにもつながっています。


③承認欲求を満たす

承認欲求を満たす仕組みをうまく使ったのは、SNSで世界1のユーザー数を誇るFacebookだと思っています。

Facebookの初期はハーバード大学の学生だけが入れるサービスとして登場しています。(ハーバード大学のメールアドレスでしか登録できませんでした)
一番大きいポイントとしては、ハーバード大学は世界でもトップレベルの大学なので、自分がFacebookに登録していること自体がステータスとなり、他者に対して自慢できるという点でした。また、実名制というところの由来も自分のアピールになるからこそ、実名でなければいけないのです。
つまり、Facebookに登録していることが他人からの羨望となり、かつハーバード大学内でのステータスのあるコミュニティに参加する権利が得られたのです。

そんなところから、徐々に他の大学に広げていき、一般利用できるようになったので、Facebookで人のつながりを作っていくことやプロフィールや投稿が自分をどう見せるかにつながっていっているのではないかと思います。

また今では様々なSNSに搭載されている「いいね」機能は2010年にFacebookが発明したものでした。
いいねを多くされることが承認欲求を満たすことになり、もっとコンテンツを投稿したいとなる仕組みを作りました。
これは承認欲求を満たす機能の賜物なのではないかと思うのです。

(ちなみにこのnoteも「スキ」がありますよね。僕の承認欲求もスキの数で満たされることになるので、よかったら押してください笑)

ただし、この承認欲求を満たす仕組みは大きな弊害を生んで、いろんなニュースになってきています。

Instagramがいいねを非表示にしたりすることもそういった部分を和らげる施策の一つでもありました。

という形でざっくりとですが、「コンテンツが作りやすく」「人にそれを伝えたくなり」「承認欲求を満たすこと」のできるプロダクトがここ15年くらいは牽引したのではないかというお話でした。

次からはこういった世界を席巻したプロダクトの仕組みがありましたが、今の現状を見て、どうなっていくのかを考えてみたいと思います。


【これから求められる要素①】自己実現の欲求を満たすこと

まず一つ目はこれからの時代に求められる要素として、
「自己実現の欲求を満たすことができるか」がポイントになってくるかもしれないなと考えています。

プロダクトは何らかの人間の欲求を満たしていると考えると、いま世の中的には承認欲求までを満たすプロダクトが世界中で使われているということが言えるかもしれません。

その中でいまの動きを見ると、よりその承認欲求を満たすことから、世の中は自己実現の欲求を満たすものを求め出しているのではないかということを最近思ったりします。

有名な話ですが、歴史を振り返れば、インターネットが普及したのもエロ画像や動画を見たいという性欲という根底の欲求だったりして、
そこから上図でいうと、徐々に上側の方を期待されていっているんだと思います。

もちろん、生理的欲求や安全の欲求も今もソフトウェアに求められる部分はあるので、完全には切り替わらないので徐々に上の方に広がっていっているイメージかなと。

SNSもおそらく最初は「所属と愛の欲求」を満たす道具として使われ始めたように思います。
余談ですが、あのYoutubeも始めは出会い系として利用されるのではないかと社内で想定されていたくらいです。

ただそれだけでは飽き足らず、よりSNSに熱中するように「承認欲求」を満たすツールへと進化していったというのがSNSの歴史なのかなと思います。

ただ承認欲求を満たすことだけでは、幸せになれないということを世の中が気付き始めたタイミングが今だと思ったりもします。
SNS疲れ、他人と比較することによるメンタルヘルスの悪化、依存など様々な問題が取り上げられています。(もちろん良い面もあります)

そんな環境の中、恐らく今後大事になってくると思われるのが、より高次の「自己実現の欲求」なんじゃないかなと思っています。

自己実現の欲求とは以下のようなものになります。

①「自己実現の欲求」とは、「自分らしくありたい」「自分の内側に眠る可能性を最大限に発揮したい」という欲求である
②自己実現とは、欠乏を埋めるためのものではなく、他者からの賞賛や社会的な見返りなどといった自分の外側から与えられるものを求めるものでもない
③またそれは、苦痛を伴う努力ではなく、自然に表に出てくる本性のようなものである
④そして、自己実現とは何かゴールを達成するための手段ではなく、その過程そのものに価値を見い出し、その道程自体を楽しむものである

https://maslow-quest.com/

いま先行き不透明なVUCA時代だとよく言われていますが、社会が豊かになり、低次の欲求がある程度満たされるような今だからこそ、より「自分らしく」生きることや、「見返りを求めず」社会に貢献していく欲求というのが強くなっているんじゃないかなと思います。

だからこそ、今の時代のプロダクトも承認欲求から自己実現の欲求を満たすものが求められてきているのでは?という事例をご紹介します。


ありのままの自分を見せ他人とつながる

例えば、フランス発で1,000万DLを突破したSNSアプリ「BeReal」のコンセプトは「Your friends for real. Not another social network.(ただのSNSではない。本物の友情を築こう)」です。

ざっくり特徴としては、フィルタや加工ができず、1日1回プッシュ通知が来ると2分以内に自分の撮影をしなければならず、ありのままの自分を投稿しなければいけない点です。また、投稿も基本的にはつながりのある友達だけが見れる仕組みになっています。

これが海外のZ世代を中心になって人気になってきている点は注目すべき点で、Instagramのいわゆる"写真で盛る"ことへのアンチテーゼとなっています。

2020年サービス開始のプロダクトなので、もちろん一過性の可能性もありますが、「ありのままでありたい」「自分らしくありたい」という欲求を満たしたいという一つの事例と言えるかもしれません。
また、SNSのコミュニケーションでということを考えると、より安心できるコミュニティで自分らしくありたいというということなのかもしれません。


そういう意味でいうと、YoutubeでVlogコンテンツが流行ったことも、着飾ったコンテンツよりも、よりそのクリエイターのありのままの姿が親近感や信頼性につながるからと言えそうです。

例えば、チャンネル登録者数1,000万人超えのエマ・チェンバレンは、これまで人気だったような作り込まれた動画とは真逆で、日常的でメイク無しの自分、自分の本音で嫌なことの愚痴とかも含めて、そのままさらけだすようなスタイルで動画を作っています。
視聴者がまるで自分の友達の日常を見ているような感覚になる動画を作って、一気に人気になりました。

これまでの有名人のような「憧れの対象」というより、こういった「ありのままの自分」をさらけ出す人の方が、今の時代は自分らしくあることへの共感を産んでいると言えるのかもしれません。

その他にもさまざまな自然体の動画を作るクリエイターが人気になり、日本でもVlogといった形式の動画も急進していきました。

このあたりはOffTopicがエマチェンバレンほか人気YouTuberを紹介している音声が分かりやすいので是非聴いてみてください。

この中でも「自分の弱みを見せることによってそれが信頼に繋がる」と言う話もありますが、今回の話にもある信頼性の話に連動します。


自分の可能性を最大限に発揮する

自己実現の欲求である「自分の内側に眠る可能性を最大限に発揮したい」という要素は、Youtuberを代表とするSNSプラットフォームからスターが登場した部分はまさにこれに当たると思います。Instagram、Twitter、Tiktokなどでも同じです。

このようなプラットフォームは先ほど述べたように、「コンテンツが作りやすく」「バイラルとレコメンドで注意を引き」「承認欲求を満たすこと」によって、新しいスターを誕生させることにかなりワークしましたが、反面、SNSのプラットフォーム側のパワーがかなり強くなってきました。

クリエイターはどれだけフォロワーを増やすことが出来てもアカウントがBANされたら終わりですし、ちゃんとクリエイターにお金を還元しているのはYoutubeくらいで、TwitterやInstagramなんかはクリエイターにほぼコンテンツの対価を支払わずに、これまでどんどん利用者を伸ばしていきました。
ある意味、いいねやフォロワー数による承認欲求を対価として払うだけだったんですね。

そういうカウンターとして登場したのもWeb3.0で、アカウントやコンテンツの所有権をプラットフォーム側にではなく自分のものにしていきたいという欲求を実現していくような運動なのかなと思ったりもします。
(このあたりもまたまたOff Topicがとても参考になります↓)

これも「自分の可能性を最大限に発揮するために」ということを考えると、既存のSNSで満足させられていたものが、ふと我に返るとプラットフォームに貢献しているだけだということに気付かされるんですね。

だからこそ、Substuckのように個人が簡単にニュースレターを配信できるサービス(手数料10%)や、PatoreonやCameoのようにマネタイズ化するプラットフォームも注目されています。
Substuckでは新聞記者が独立して個人でニュースレターを配信し、人気になったような事例も出ています。

クリエイターのマネタイズができるプラットフォームは少し情報が古いですが、以下に過去まとめてるので参考までに。

そういった点も含めて、FacebookやSNS各社はクリエイター支援プログラムや機能を積極的に推し進めています。
Instagramでは投げ銭機能も追加され、ショップ機能が個人にも解放されたり、アフィリエイトプログラムのテストを行なっていたりし、個人クリエイターのマネタイズを強化しています。SpotifyやTiktokでも強化の取り組みを日々打ち出していってたりします。

これも「クリエイターの可能性を最大限に発揮できる」仕組みにした方が、よりプラットフォームとして強い位置にいれるということを判断したからだと思われます。

さらにはクリエイターだけではなく、ギグエコノミーのような言葉も出てきましたが、AirbnbやUberやTaskRabbit、日本でもクラウドソーシングや副業プラットフォームなどのサイトも一般的になり、個人が稼げる環境も増えています。

これまではただ単にコンテンツを消費する側だけだった人たちも、様々な手段が出てくることにより、「自分の可能性を発揮する」チャンスが増えています。


その商品を使う目的から意義へ

そして次は、コンテンツを作るクリエイターだけでなく、商品を購買するユーザーの価値観も変わりつつあるというお話です。

これまでのサービスやプロダクトは、「性能が良い」「使って楽しい」「コスパが良い」など具体的な目的を達成できるものが選ばれていました。
ただ直近でいうと、よりその商品を使う目的というよりも、使うことでどうなるのか?という意義を意識することが強くなっていくように思えます。

それはエシカル消費(地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動)という言葉にも象徴されるように、社会を考えて行動するというムーブメントが形成されつつあります。
企業の在り方として、「パーパス・ドリブン」なんて言葉もよく聞くようになりました。

代表例でいうと、D2Cブランドの「Allbirds」。創業3年でユニコーン企業になり、2021年上場時し売上は約300億円の企業となり、現在日本でも展開しています。
ウールを使った履き心地の良さという品質が良いこともあるのですが、環境に良い素材だけを使い、これまでの安価で大量消費する靴に警鐘を鳴らし、より長く履けてサステナブルなブランドとしてメッセージを発信し、若者を中心に支持されています。

食品の分野においても、植物由来の代替肉を製造する”Beyond Meat”や、”Impossible Foods”などが急成長していることも、環境問題を意識する人が増えてきていることの現れだと思います。
Beyond Meatは2019年に上場し、一時的ですが時価総額1兆円にもなるほどの注目度でした。

さらに有名どころではアウトドアメーカーのPatagonia(パタゴニア)が2019年に企業理念を「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というメッセージに変更しています。
具体的には再生可能素材のみを利用した製品製造や、2050年までに二酸化炭素排出をゼロにする取り組みなど、このあたりはよくいろんな企業から聞く話ですが、
本気度が伝わるのは店舗においても「必要ないモノは買わないで」というメッセージを大きく見せたり、修理を推奨していたりする部分です。

このような企業の姿勢や在り方というものが、重要視される時代にはなってきているのだなあと感じます。
また、こういったブランドは自分が購買・利用することで、その企業に共感してる、自分はこういうものを信じているというアイデンティティになっています。

実用的な商品に対してお金を出すということよりも、よりそのブランドや世界観への共感に対してもお金を払う流れに緩やかに変わっていっているような感じがします。


さらにソフトウェアプロダクトにおいても、3,000万人のユーザーを抱えるDepopというSNS×古着のフリマアプリが人気になってきていることも使う意義を大事にしていることの流れが大きくなっている一つかと思われます。

まずDepopが人気になっているのは、古着が環境にやさしいサステナブルの観点からという点でユーザーは利用しており、企業としても環境問題に取り組む動きや発信を積極的に行なっています。

また、古着は1点ものであるものが多く、人とは違うファッションを追求するということも古着が再度ブームになってきている要因らしいんです。
これも「自分らしさ」という自己実現の一つですよね。

今後はより一層、企業やプロダクトのストーリーや思想がこれまでよりも重要な要素になっていくように思えてなりません。

これまでは「人気だから、実用的だから使う」ということから「自分が使う意義・意味があるから使う」になっていく人が増えるんじゃないかと思っています。


【これから求められる要素②】信頼性

これから世の中に求められる要素として重要になりそうなのが、自己実現の欲求を満たすことと、もう一つは信頼性です。

2002年〜2020年のインターネットの情報量は6000倍になっているという話もあり、インターネットはその速報性や相互性という大きな利点を持ちつつ、世の中の情報を一気に増やしていきました。

これまでのプロダクトはバイラルとレコメンドがワークして一気に広がっていったということを前述しましたが、膨れ上がった情報をレコメンドするという仕組みに陰りが出てきたのも事実です。

使う人にとって事実かどうか、良いことか悪いことかは置いておいて、とにかく注目を引くものが出るという形になってしまっている事象も起きてきました。

例えば、Facebookでは10代にメンタルに悪影響のコンテンツをレコメンドしていることなどを知りながらアルゴリズムの変更を行わなかったことを内部告発された事件も問題になりました。利益を優先したことに批判が集まりました。
また、フェイクニュースや事実無根の誹謗中傷がレコメンドされる問題も日々ニュースとして見かけますし、少し時を戻せばGoogle検索の上位に不正確な医療情報が載る問題も大きく社会を揺るがしました。いわゆる「WELQ問題」です。

という形で個人だけじゃなく企業やプロダクトから発信・おすすめされる情報も、もはや信頼できるものではなくなってきました。
Web3.0の盛り上がりは、こういった企業の中央集権型の体制への懸念から民主化へという流れもあるのだと考えます。

そんな中、例えば2018年創業の「NewsGuard」はニュースソースの信頼性を評価するプロダクトを開発しています。ニュースサイトに対して信頼度をスコア化し、"その栄養"を表示しています。
chromeの拡張機能でそのスコアを表示するプロダクトを提供していたり、企業向けの導入などで伸びている企業です。
驚くべきはそのスコア化をアルゴリズムではなく、人間の目で行なっていることです。

先ほどのGoogleもそうですし、コロナで偽情報が出回ったことや、フェイクニュースなどが社会問題になっていることも考えると、
ありふれた情報の中での注目度よりも信頼性がより重要視されていくのは間違いないことかと思います。

大手SNSでも信頼性が疑わしい投稿に関しては注意喚起を促すというようなことを行なっていることを考えても、いかに”コンテンツの信頼性”が今重要視されているかということが分かる事例だとも思います。

ただやはりアルゴリズムだけでは、”信頼性のある情報”というのはまだまだ判断がつきにくい段階かと思います。
ある意味、今後また出版社や新聞社のような旧来メディアの編集能力やファクトチェック機能のようなものが重要になる時代に来ているのかもしれないなと思いました。


また、プロダクトに対する信頼性という意味ではセキュリティやプライバシーにも目を向ける必要があるかもしれません。

2013年ロシア発のTelegramはメッセージの暗号化や一定時間で消える秘匿性など高いセキュリティ性から選ばれ、現在7億MAUと非常に多くの人に使われているメッセンジャーアプリです。
またTelegramは非営利団体によって運営されており、プロモーションなしの口コミだけでこれだけ広がりました。

また現在のロシアの情報統制の中、利用できるSNSとしても注目されています。

そう考えると、Appleのプライバシー保護強化の流れは、他のプロダクト含め今後さらに影響を強めていくかもしれません。

すぐに大きな転換は来ないものの、SNSの主流だった広告ビジネスから今後大きく変わっていく可能性もあります。
また企業の姿勢として、個人情報を取得することへの懸念は強まる可能性はあります。

5,000万MAUを突破した、セキュリティ特化・広告遮断するブラウザ「Brave」が人気になってきているのも、そうした流れからかもしれません。


まとめ

ここまで長々と書いてきましたが、まとめていきたいと思います。

【いま世界で使われるプロダクトが成長した特徴】
・コンテンツが作りやすく増える仕組み
・さらにそれがバイラルとレコメンドする仕組み
・承認欲求を満たす仕組み

【2020年代以降のこれからのプロダクトに求められる要素】

・自己実現の欲求を満たすことができる仕組み
 ーありのままの自分を表現できる、またそういったコンテンツを求める
 ー自分の可能性を最大限に発揮できる
 ー自分の消費行動によって社会に貢献できる
・信頼性を担保する仕組み
 ー情報の正誤の信頼性
 ー個人情報の管理の重要性

Tiktokがここ数年でユーザーが急増したことを考えても、コンテンツが作りやすいということは今後も重視されると思います。
その中で自分らしさを表現できたり、安心感がある、信頼があるプラットフォームが求められるのだろうと思います。
具体的には以下のような要素が世の中に求められるのではないかと思います。

【これから求められそうな具体的な重要要素】
●自己実現の欲求を満たすことができる仕組み
・"いいね"などの表面的な報酬が多くもらえることよりも、実生活においてより意味のあるものがもらえること(お金や経験や他者への影響など)
 →サービス利用者が現実で活躍できるための機能や支援をしている

・より安心できる(相互理解、無駄に批判されない)コミュニティ作りやコミュニケーションができ、自分らしくいられること

・サービスを使うことによって得られる具体的なメリットが分かることよりも、サービスを使うことによって自分はどうなるのかが分かること

・企業やサービスとしてどう社会に貢献しているのか、具体的にどのような行動を行なっているのかが明確に表現されていること

●信頼性を担保する仕組み
・提供する情報に信頼のある人や企業のお墨付きがあること

・自分に表示されているコンテンツがなぜ自分に表示、おすすめされているかなどの具体が表記されていること

・個人情報を取得しないこと

・セキュリティ面での安全性を担保する仕組み

こうやって考えると、企業やプラットフォームへの信頼が落ちて、ますます信頼性の重要度が増し、自己実現の欲求が高まっていっているということを仮定したときに、
ブロックチェーン技術を利用して記録を分散化していくことや、NFTのように所有権を自分のものにしていくというようなweb3.0への流れは必然的にあるように思います。面白いですね。

サービスは顧客に価値を提供してなんぼのもんですが、
まやかしの価値でなく”顧客の自己実現をいかに手助けできるか”、そういう真の意味で価値を提供できないと信頼できるサービスになり得ない時代になってきているのかもしれません。

そんな感じで締めくくりたいと思います。あまりうまくまとめきれませんでしたが、長々と長文読んでいただきありがとうございます。何か参考になれば幸いです。

ちなみに私が担当しているVoicyもプラットフォームなので、こういったことを延々と社内で考えたり、どうあるべきかなど議論したりしてプロダクト作りを行なっています。
こういった話題やVoicyに興味がある方は是非お話しましょう!

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また、Voicyの他のメンバーもいろんなnoteを書いていますので、よかったら見てみてくださいね!


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