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すべてが12年前の事件につながっていた/日曜劇場『アンチヒーロー』

相変わらず、日曜の夜はドラマのハシゴで忙しい。一週間前の日曜劇場は、野村萬斎独壇場と言ってもいい回だった。

腹立たしい伊達原検事正。明墨が自分に似ているからこそ、彼の行動を先読みできると緑川にほくそ笑む。ただ、証拠を手に入れて、足で踏みつぶす伊達原がちょっとゴジラに見えてきて(みんなそう思ってるのね)、「やりすぎじゃない?」と少々食傷気味。それでも明墨たちを絶体絶命に陥れた彼には、想像以上の執念を感じて震えた。

わかりやすい伊達原キャラとは違うが、「良心の人」と思われた裁判官の瀬古も、あちら側の人間だった。神野美鈴さんが演じるという時点でドラマ『100万回言えばよかった』の記憶がよみがえり、きっと裏の顔があるのね……とは思っていたが、いやあ、神野さんってあんなにやさしい表情なのに(以前パートナーの小曽根真さんのライブでお見かけしましたが、とっても素敵な方です)、こういう役柄で登場すると奥のドロドロしたものを感じさせて不安を煽る。世間をだまし続けた彼女を糾弾した明墨も、伊達原にはこのまま敗北するのか?

明墨の本当の目的は、12年前の糸井一家殺人事件の犯人とされる志水(緒形直人さん)の冤罪を証明すること。事件当時、志水を自白に追い込んで、無実の罪を負わせてしまった明墨の闘いである。

私は緒形拳さんがとても好きで、緒形直人さんがドラマや映画に出はじめたころは、その息子さんとして見ていた。正直当時は、昨今の活躍にみるような素晴らしい役者さんになるとは思っていなかった。虚無感が漂っていた志水が、娘と再会して心を開くシーンには、胸のつまる思いがした。緒形さんや長谷川さんの演技を受けとめる、志水の娘・紗耶役の近藤華ちゃんもすごい。父親が殺人を自白したことで、人生すべてが変わってしまった紗耶。そんな彼女を等身大で見事に演じている。華ちゃんは、ドラマ『ばらかもん』のメガネの子、タマちゃんをコミカルに演じたあの子! 全然雰囲気が違うじゃないか。この先も楽しみな役者さんだ。

一見何のつながりもないと思われた案件は、どれも糸井一家殺人事件に関連するものだった。明墨の弁護によって無罪になった緋山も、志水の無実を証明するための重要な人物。こうした展開はとてもゾワゾワしたし、気持ちいいぐらいにパズルがはまっていった。

残り2話にして、初めての敗北。このピンチを明墨たちはどう乗り越えるのか。予告では、「裏切り」ということば。え、裏切り者って明墨側? それとも伊達原側?

明墨側は名前に色がついている共通点があることから、ネット上では木村佳乃さんが演じる緑川が味方になってくれる説がある。私もそれを期待している。しかし同時に、大島優子さんが演じる白木がこれまで何となくぼやけた役なので、裏切りという点では彼女を疑っている。「裏の裏をかいた、明墨の策略でしたーー」という流れもある? 公式サイトの事件の相関図には、1人だけまだ登場していない「千葉県警の警察官」の存在があるんだけど、今後キーマンになり得るのかも気になる。

うう、第9話待てないわー。今夜は亡くなった桃瀬についても詳細が明らかになりそうだし、絶対リアルタイムで視聴したい。

どうなるんだろう、志水父娘。どうか、彼らに再び平穏な日々が訪れますように。モヤモヤしてドラマが終わるのだけは嫌だなあ。


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