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わが家の猫生活【その五十七/鯉に恋する猫さまたち】

日曜日、敬愛するマエキヨ(前川清さん)がまちを旅する番組をいつものように観ていたら、鯉のいるお宅が出てきた。マエキヨは錦鯉好き界隈では有名な人だ。

わが家も、祖父の趣味で鯉を育てていた。コンクリートで固めた細長い大きな池がひとつ、四角いこぢんまりした池がもうひとつ、稚魚用の小さな池がさらにもうひとつ。これ、趣味じゃなくてもう商売に近くない?ってぐらい大量に鯉がいた。

そんなわけで昔から鯉には親しんでいたが、わが家にモモちゃんがいた頃は近所に野良猫もたくさんいて、その頃明らかに鯉の数が減った。田舎なので他の動物の餌食になった可能性もあるけれど、当時野生動物が集落に下りてくるのはよほどのこと。それに、池の縁から狙っている野良猫をよく見かけたのだ。

祖父はすでに他界しており、鯉の管理をしていたのは父。「まったく、野良猫には困ったもんじゃ」と困惑していた。そんなある日、池の縁にまた猫が……。洗濯ものを干していた母が「こらっ!」と言いながら猫を見ると、それはモモちゃんだった(笑)。

もしかして、今まで野良猫の仕業だと思っていたのは、全部モモちゃんだったのでは?

父はもともと猫が好きではなかった。でも彼と暮らすようになり、お互い恰好の遊び相手になっていた。まあ溺愛ってやつ。そんな父が「お前なのか?」と問い詰めても、モモちゃんは知らんぷり。こういうときの猫って、いかにも猫な「はっ? 知らねーよ」って感じの素振りをする。こちらも鯉をさらう瞬間を見ていないので、なんとも言えない。彼はすっかり“疑惑の猫”に。

その頃の私は実家暮らし。話を聞き、俄然猫ストーカーのランプがピコピコと点滅した。休日には、カメラを持ってモモちゃんを探しまくった。そして、ついに池を覗きこんでいる瞬間に遭遇した。

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ところが、彼はじっと鯉を見ているだけ。もしかしてビビりなのか? それとも鯉と友達になりたいと思ったのか?(そんなことないか) ひたすら座って覗き込んでいるだけだった。興味津々であることは間違いなかったが、結局その日モモちゃんが鯉に手を出す瞬間はなかった。

それから月日が経ち、彼が天にのぼった頃には、もう池に鯉は1匹もいなくなっていた(苦笑)。網を張ったりして防御策はしていたのだが、賢い誰かがそこをかいくぐって、いただきに参上つかまつったのだろう。モモちゃん、本当は食べたのかしら。今でも謎のままだ。

マエキヨが鯉に歓喜する姿を見て、ふとそんな疑惑の事件を思い出した。もうすぐモモちゃんの命日がやって来る。(つづく)

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