58五木食品

アベックラーメンをつくる会社のうどんと焼そばが好きだ。

皆さんは、「アベックラーメン」をご存知だろうか。西日本エリアではお馴染み、五木の子守唄をモチーフにしたマークが目印・五木食品さんの超ロングセラー商品。もっこす県出身で東京に住む知人は、「火の国とんこつ熊本ラーメン」「熊本もっこすラーメン」(どちらも五木食品の商品)と共に、時折無性に食べたくなるらしい。

私は五木食品さんの商品が大好きなのだが、目当てはラーメンではない。「スープ付きうどん」と「焼そば」だ。やわらかなうどん麺、つるつるの焼きそば中細麺。だしの効いたうどんスープも、フルーティな甘みがクセになるコク旨な焼きそばソースも自分好みだ。

話はビンボー学生時代に遡る

真面目だった大学生の頃の私は、サボることなく講義に出席し、空き時間と夜はひょんなことから入った音楽サークルの練習に明け暮れていた。練習の掟は厳しく、休みは一週間のうち水曜日の一日のみ(プロかよ)。その一日も、ときに演奏会パンフレットの広告ノルマを達成するため、飲食店や美容室などに営業をかけに行かねばならなかった(プロかよ)。

「諸先輩方が来ているのになぜ休む?」
そんなクレームがあれば半殺しのため(それは大げさ)、アルバイトのために休みたい旨をなかなか言えない状況だった。今考えたら、鬼おそろしいサークルだ。その証拠に、自分の尿を検査するという講義内の実験で、蛋白尿が確認された人全員がうちのサークルの人間だったというシャレにならない事件まで勃発していた。

当時実家からの仕送りはひと月8万円。そこから国民年金を支払ったら残りは7万円弱。家賃を払ったらもう半分しか残らない。わずか週1、週2程度のアルバイト代は、サークル関連のチケットノルマや合宿費用にすぐ消える。仕方がないから支出を削るしかない。最初に何を削るかといえば、当然食費だ。

自分の中のロングセラー商品はコレだ

その頃からお世話になっているのが五木食品さんの「スープ付きうどん」「焼そば」だ。ディスカウントショップだと3食入り129円(一番安いときで108円)でよく販売されている、アレ。ちなみにこのシリーズには「ナポリタン」もある。「焼そば」は、同じ五木食品製だが少々値の張る新参者の「日田風焼そば」とは異なる。

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学生の頃は、午前中の講義が終わると自分の部屋に戻って、五木のうどんを素で。たまに卵とわかめを入れて。冬は白菜と椎茸と大根を入れて。風邪をひいたときも粥がわりに。焼きそばは肉なしで。たまに肉を入れて。ちょっと贅沢になると目玉焼きをのせて。

面倒くさがりで料理が得意ではない私が、なんとかお金を使わずに食べていけたのは、間違いなく五木食品さんのおかげなのだ。何度空腹を満たしてもらっただろうか。冷蔵庫が空っぽになっても、「五木のうどんさえあれば、どうにかなる!」という最後の希望!!

長年親しんだ味が突然店頭から消えた

何十年と食べ続けているその麺が、熊本地震後しばらく販売停止となったときにはショックを受けた。「マルキン食品」の納豆然り、「お菓子の香梅」の菓子然り。一部の商品が販売再開されると、西日本ではその時点でニュースになったが、全商品が揃うのはまだずっとずっと先のこと。それは相当商品をチェックしている人か、地元の人でなければ知ることのない現実だった。

今まで普通にあって当然だったものが、急になくなる。こんなにおそろしいことはない。だから何カ月も経って、主要商品以外も店頭に並びはじめたとき、心の中で静かにガッツポーズした。ホッとした。自分にとって、五木食品さんの商品がキッチンにあるということは、もう暮らしの中に組み込まれているのだ。

慣れ親しんだ食品にはエピソードがたくさんある

違う意味で思い入れのある商品もある。最果ての島の小さな商店で「五木庵カレーうどん」を発見し、五木食品さんの商品はこんな場所の人にも食べられているのか! 感動!!と、勝手に盛り上がったのが懐かしい。なぜこんな遠く離れた島でこんなマニアック商品が!?という不可解さより、感動の方が上回っていた。

人生に伴走してくれたり驚きに満ちた出合いをしたり、好きな食べものにはエピソードがつきもの。五木食品さんの商品にまつわるエピソードを募ったら、きっとたくさん出てくるはずだ。

これからも自分の暮らしには欠かせない。生活に困って経済をまわせないときも(今)、疲れて家事をやりたくないときも(今!)、これさえあれば今夜のごはんはなんとかなる。


(余談)
ところで3食入りシリーズ、ここ数年、麺袋や3連のソースの切り込みが甘くて切れにくかったのが、昨秋あたりから元のように切れやすくなった。改良されたのか? 大人になっても 3日に1食は食べているので、細かい部分まで気になるー。


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