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文化住宅を地域に開いて @コミュニティスペース「いきな」

2023年3月18日土曜日、「コミュニティスペース『いきな』文化住宅を地域に開いて」をNPO法人古材文化の会主催、ぶんぶんカフェイベントで開催しました。
自宅を地域に開き、まちづくりの拠点・コミュニティスペース「いきな」として活動している文化財マネージャー川瀬俊之さんと「いきな」メンバーの文化財マネージャー鞍元玉緒さんにお話していただき、大学生の若松さんにも建物見学の案内をしていただきました。


鐘紡の元社宅群

今回の会場である文化住宅は、鐘紡の元社宅であった建物です。鴨川の東側、京都大学の近くにその元社宅群はありました。
大正11年頃に建てられたと伝わり、当時は塀で囲まれて通り抜けのできない一角に社宅がひとつの町内として、同じ区画に集会所や銭湯も建っていたそうです。ひとつの世界が築かれていました。
建設当時の経営陣の「良き建物を建てることで快適に働いてもらう、人材を確保しよう」という思いの伝わる良質な社宅であり、およそ100年を経て社宅群として残っている貴重な建物です。

トップ画像地図は昭和2年頃京都市明細図(長谷川家版)から
近代京都オーバーレイマップ

文化住宅の概要

この建物は木造2階建ての重層長屋で、1棟に上下別世帯8軒として計画されています。1階に2階世帯の玄関も並び、2階世帯の玄関から入るとストレートに階段が付いているという珍しい間取り。2階建ての木造アパートの外廊下式のものはよく見ますが、こちらは外廊下はありません。
各世帯の間取りは続き間の和室に台所、トイレが付くもので、押入収納がしっかり取られて社宅としての住まいやすさが考えられています。
2階にもトイレが付き、当時は非水洗ですから張り出したトイレから直下の肥溜に落ちる仕組みとなっていて、近在農家が引き取ることで循環が成り立っていました。
台所は1、2階とも土間床で他の部屋とは段差があり水を流すことでできたそうです。当時の技術としてどのような水仕舞いであったか興味深いものがあります。
それぞれの部屋の天井高さは当時としては高めで、お庭も付いて暮らしやすい住宅であったことがうかがえます。

昭和30年頃に社員などに分譲されて、集会所や銭湯は廃止されたことで各戸での浴室設置・水回り改修がすすみました。住民が入れ替わる中で、上下階が同一の所有者になることもありました。
時代の変化により分譲された住戸は長屋から切り離され、当時の外観を保ったままの住戸の横に新築住戸へ建て替えられ、また空き家となっている住戸もあります。
このままでは、どんどん住戸が切り離されて、いつか解体されてしまうのではないかと川瀬さんは危機感を持ちました。建物のみならず、この町内のまとまりを大切に思うことから、川瀬さんは建物群の保存と活用に取り組むようになりました。

5軒さまざま、住戸見学

建物見学は、5戸訪問させていただきました。
似ているけれど各戸少しずつ違う間取り
当時のまま残されている2階の台所土間
2階へストレートに上がる階段
木造の躯体だけ残して大胆におしゃれに改修された事例(この家は1、2階同じ所有者で1軒の家として改修)等々見せてもらいました。

居室の窓は南面していて、日当たり風通しのよい間取りとなっています。
町内のまちあるきでは、古写真を見ながら町内の様子、道端での子どもたちの遊びなど当時のお話を聞くことができました。
住戸見学をした1軒の家の方は昔のことをよく知る方で、昭和初期の光景が目に浮かびました。

「いきな」の活動

川瀬さんは、この自宅を地域に開いて(住みびらき)まちづくりの拠点・コミュニティスペース「いきな」として活動を始めました。このような活動を通して、地域や地域外の方にも関心を持ってもらうことで地域と住まいを大切にしていきたいと考えておられます。
始まったばかりで、お庭や部屋の改修もまだこれから。
杉玉づくりのイベント、高齢者向け転倒予防教室や拓本教室などの貸しスペースとしても使いながらまちライブラリー(地域の図書室)や地域の方々が交流できるイベントなどを予定されています。「いきな」としてのコアメンバーも川瀬さんの交流関係から集まった方々で学生さんたちも巻き込み今後の発展がとても楽しみです。

文化財マネージャーの鞍元さんは、エリアマネージャーの上級講座も受講していて、この「いきな」の活動を取り上げて発表されました。
コミュニティスペースの運営支援としてどのような関わり方が可能か探っておられます。住民アンケートを実施、それらを踏まえてのイベント開催などエリアマネージャーとしての関わりのありようです。
関わってきているからこそ見えてきた課題、コンセプトの共有や運営のあり方など今後も向き合っていかれるそうです。

意見交流会

参加のみなさまからも活発に意見や質問があがりました。活動の輪をどのように広げていくのか、地域へ関心を持ってもらうにはまずはそれぞれが暮らしている場所(地域)知ることが大事等、、、みなさまもそれぞれ地域の活動に関わっている方がおられるので興味のある様子です。


雨模様のお天気でしたが、徐々に雨は上がってよかったです。ご参加いただいたみなさま、川瀬さん、鞍元さん、若松さん、見学させていただいた各住戸のみなさま、本当にありがとうございました。


主催・認定NPO法人古材文化の会(企画部会)
この催事は(一社)京都府建築士会・まちづくり地域貢献活動の補助を受けています。

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