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パフォーマンスを向上させるコミュニケーション

はじめに

今回は、試合中に行われるコミュニケーションについて、最近学んだ脳科学や組織論を踏まえて、チームのパフォーマンスを向上させるためにはどういったものが望ましいのかを考察したものを投稿します。

今回の考察で目指すもの

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コミュニケーションというとメンバー同士のものを想像しがちかもしれませんが、今回は監督から選手へのコミュニケーションも含んで考察しました。また、野球の試合でよく聞くような声出しも含んでおります。

内容の構成

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試合中のコミュニケーションでよくあるものと課題感

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学生時代では、よく監督から怒りのご指導を受けた方も多いかもしれません。それって本当に必要?というのがこの考察を始めたモチベーションの1つです。私自身今思えばとんでもない人の下で野球をしていたのだなと思いますし、精神状態としては正常ではなかったのではないかとも思ったりもします。
また、試合中には皆さんよく声出しをされてますが、あれって本当に意味があるのか疑問に思っておりました。いつのまにか普通になっておりましたし、逆にシーンとすると違和感を覚えるようにもなってしまってますが、改めて声出しについても考え直してみたいと思ったことが、今回の考察のモチベーションの2つ目です。

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よくあるコミュニケーションについて、私が考える課題感を記載してみております。相手に対して良かれと思っていることがほとんどだと思いますが、それが本当に相手の為になっているのか、ということについて検討してみる方が良さそうなものも多くあることがわかりました。


試合中のコミュニケーションで実現したいことの確認

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課題感を解消するというよりも、そもそも試合中でやりたいことは何なのか?というところから、必要なコミュニケーションを考えてみました。やりたいことはチームと選手のパフォーマンスを向上させるところに集約されると考え、直近の試合と今後という観点で考えてみました。
ここから、各【】内の項目について、考察したことを記載していきます。


コミュニケーションでできること【指示確認】

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指示確認を事前にしておくことで、やるべきことをスムーズに処理できるようにすることを目指しております。試合中にどうしようか混乱してしまうことは、ケースが複雑な場合だとあるかと思います。
また、チーム内で具体例として聞けたものを追記します
※追記コメント
・一瞬の判断と相手のプレーの精度が成功を左右するので、むしろ良い判断をするためのコミュニケーションをベンチやグラウンドで行う方が理にかなっていると思う。
・内外野手問わず、守備時に自分の意識している守備範囲それを変えた時、ランナーやアウトカウントのケース毎の送球先の共有を野手内でしておくと捕球後の送球の迷いが生まれにくい。
・「監督が不在=一人一人の責務」と考えても良いと思う。
・これらは大きい声で前出る!後ろ下がる!思い切って!取ってからはやく!ではなく会話ベースに聞こえる範囲内の声のボリュームで十分だと思う。性格上のことかもしれないが個人的にはそれぐらいの方が頭に入りやすいし冷静に判断できる。

コミュニケーションでできること【情報共有】

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よくあるものとしては、打席後に投手の球について情報をお伝えすることかなと思ってます。これはやってくれる人とやってくれない人がいますね。(私自身はあまり言いません。聞かれた言いますけど・・)
なかなか自分からは言いだしづらいところもあるかもしれないので、ベンチに戻ったら必ず何かしら言うとか、回が変わって攻撃開始する前には円陣を組んで情報共有の場を設けるとか、仕組みとして取り組むことも良いかもしれません。

コミュニケーションでできること【集中力の維持】

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ここはこれまでの慣習とは反する部分かと思います。ただ、野球の打撃や投球は狙ったところに道具を正確に移動させるデリケートな動作が求められますので、集中力を阻害することは極力避けた方が良いと感じてます。
こちらについても、チームメンバーから具体例として聞けたものを追記します
※追記コメント
◆打撃時について
<ポジティブなもの>
・おー!とかおしいー!などの感嘆系は何故か盛り上がりを感じます
・ランナーへの打球毎の進塁のアドバイスや(コーチャーができると良いけどね)、アウトカウントの確認
・打席中に言われたポジティブな掛け声で好きなのは「考えるなー」です。ある意味究極の思考なのではないかなと笑

<ネガティブなもの>
・打者への一球一球に関する打者への声掛けが気になります。「今の見逃し危ないよー、そのコースいっぱいよー、今日はそれ取られるよー、ナイスカットー!上げちゃダメよー!次変化球あるよー!落ち着いてー!力まずー!」と聞くことがありますが、そのために練習やイメージをして打席に立っているし、打者が1番わかっていることなので、逆に集中力が削がれます。
・打席というのは繊細なので、掛け声1つでもポジティブもしくはネガティブなイメージ付けば結果が変わってくるのかなと。自分は掛け声に左右されたくないので打席にいる際はいいバッター!とかナイススイング!とかいいねー!といったたぐいの声しか聞かないようにしてます。
・でもランナーへの掛け声含めて何も声が無かったら打席で期待受けてないんじゃないかとかも思ってしまいます。
・よく試合中にここ良くないから修正した方がいいよ、とアドバイスもらうことがあったのですが、自分自身で修正ポイントに気づかない限り修正できません。(以下の理由もあり、やめてあげた方が良い)
 ・試合中の修正はそもそも難しい
 ・修正を気にして投球への集中力が低下する可能性がある
 ・そもそも求めていないFBは逆効果(スライドにも記載)
 ・修正ポイントは自身が気づく&肚落ちしないと修正できないため他者からの簡単なコメントでは修正できない(なので、修正を指摘するならガッツリ時間をとって治るまで付き合う覚悟を持ってくださいね)

◆投球時について
<ポジティブなもの>
・自分の殻に入り過ぎない、ひと呼吸いれる、という目的で、野手側に声をかけることはある
・気持ちが上がる掛け声(良い球、良いコース、打たれてない、押してる、打たせて良いよ)
・情報共有(この打者引っ張りだから外攻めると良いよ)

<ネガティブなもの>
・ストライク入れて移行
・打たせていこう
・バッター勝負しよう

<その他>
・そもそも野手側からの声についてはほとんど聞こえていない

コミュニケーションでできること【試合中のモチベーション向上】

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これは、試合中にモチベーションが上がるようなコミュニケーションについて考察したものです。個人的な具体例で言えば、「勝つ」というテーマを設定しているときは試合開始前などは気持ちが奮い立つような感覚を持ったりします。あとは良いプレーをしてそれを誉められたりすると、次も頑張るぞ、という気持ちになったりします。
個々人に対しては、良いプレーや姿勢に賞賛を送ることはわかりやすいのですが、チーム全体としてのモチベーションを上げるというのはなかなか難しいと感じてます。「勝つ」はわかりやすいのですが、結果のみに報酬を感じると、それが難しいもしくは達成できなかった際に逆にモチベーションを落としてしまいます。チームとして成長するために何かしらのテーマを設定して臨めるようにすることも、監督としての1つの仕事なのかもしれません。

コミュニケーションでできること【心理的安全の確保】

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これは、私自身のこれまでの経験上、非常に重要だと感じているものになります。野球は攻撃時の打席と投球時、守備時の捕球と送球は、1人の人間に注目が集まりやすいスポーツだと考えております。その際の成功と失敗も非常に明確に結果がでます。(例 バットがボールにあたらない、ストライクゾーンに入らない、捕球ができない、送球がそれる等・・)
その際に、ミスをしてしまうことに対して恐れを抱くことにより、適切な身体の反応ができなくなり、動作の正確性が下がったり、積極的創造的なプレーができなくなったり、結果として再度ミスをすることになってしまう可能性が高くなると感じております。
ミスが生じた際によく、ある周りもしくは指導者がとってしまう行動の具体例としては、
・ミス時に落胆してしまう
・ミス時に怒ってしまう
・ミス時に指導してしまう
・ミス時にアドバイスをしてしまう
などがあるかと思います。
私自身の苦い思い出として紹介ですが、ボール回しをX周する練習において、ミスをしたら連帯責任でベースランニングになりかつ周カウントは最初から、というメニューがありました。ミスをしたくない一心で必死にやるものの、腕がこわばり結果としてミスしてしまい、周りからも責められ、それに加えてそこから一時期満足な送球ができなくなりました。
こういった練習目的の1つに、昭和的指導者から「精神力」を鍛えるといった言葉を良く聞きます。仮にそれがストレスコントロールができるか否かだとすれば、そこにも個人差があるため、適応できるようになることにこしたことはありません。ただ、ストレスコントロールを身に着けるにしても適切な方法があり、少なくともこのように心理的安全を脅かしてトレーニングをすることによる弊害(トラウマのようなネガティブなエピソード記憶と感情記憶を植え付けるもしくは強固にすること)を考えると、こういったミスによる懲罰、連帯責任を問う手法は望ましくないと考えます。
選手のパフォーマンスを向上させるという目的においてであれば、ミスをするなではなく、ミスを学びの機会ととらえてさらに成長する、という意識で臨むことが必要です。

コミュニケーションでできること【フィードバック】

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ここではフィードバックを、問題点や改善点の指摘や提案、ネガティブな評価という意味で使用してます。
ここもよくある慣習とは異なる部分かもしれません。
監督にしろ先輩にしろ同僚もしくは後輩にしろ、良かれと思って指摘したりすることはよくあるかと思います。ただ、そういったことは労力の割に効果を成さない、ということがここでお伝えしている内容です。先述した打席時や投球時のコミュニケーションについてのコメントからも、求めていないネガティブなフィードバックは不要もしくは逆効果に作用していることが伺えます。

こちらについても、チームメンバーから具体例として聞けたものを追記します。
※追記コメント
・野球は結果で評価が分かれるようなプレイばかりなのでそれに対してのチームメンバー同士の成功失敗の批評の声は無駄だと思う。成功した時には讃え、失敗した時には振り返りで自分毎にして次にどうすべきか考えれば良いと思う。

コミュニケーションでできること【成長のためのモチベーション向上】

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これは先述した「勝ち」だけをモチベーションとするのではなく、個人やチームの成長をモチベーションとすることを意図しております。
例として個人的なものを紹介しますと、昨年の決勝トーナメントで相手打線を0~2点に抑えられたピッチングは、佐藤さんと地道に投球練習をして緻密な投球ができるようになったおかげ、とか。
また、個人としてもこれを意識して日々のトレーニングや試合に臨めると良いですが、チームとしてもこのモチベーションを得られるような工夫が、運営としてできると良いように感じてます。特に試合ですと、「勝ち」「ヒットやHR」「アウトを取った良いプレー」「0点に抑えた投球」といった目立った結果が生じる部分にフォーカスしがちです。
チームとしてテーマをもって臨み、それを全員で達成することを目指し、その過程についても振り返ってみることができると、チーム全体として成長することへのモチベーションも生まれるように感じます。
あくまで極端で適当な例ですが、
・決勝トーナメントでは走塁を軸に攻撃をできるように、リーグ戦で全員が盗塁を仕掛け、チャレンジに対しては成功でも失敗でも賞賛する
・送球の際に暴投を怖がることがなくなるように、安全に置きに行くような送球はやめて送球の際は思いっきりなげる。思いっきり投げれたら暴投でも賞賛する
とか。
そういった積み重ねで経験を重ね、それらを踏まえて決勝トーナメントを勝てた際に、これまでの取り組みを振り返って、そういった取り組みの成果が勝利につながったことを紐づけて記憶する。
積み重ねが結果に結びつくことが記憶付けられ、成長することにモチベーションを得られるようになる、と考えております。

まとめ

今回考察してみて、これまで普通だと思っていた取組について、改めて原理と効果を考えることができました。継続してやった方が良いなと思うものもある一方で、慣習としてやっているがやめるべきだなと思うものも出てきて、新しい発見があったと感じております。

また、集中力を保ってもらうために打席や投球時は声掛けはしない方が良さそうに思いますが、逆に何も声が無いと期待されていないと思ってしまう、というコメントもありました。感嘆や賞賛は期待されているという報酬を感じれてモチベーションを得られるのかもしれませんね。

一方で、バッチコーイというような、とりあえずワーワーやっている雰囲気を感じられるような声は、やはり意味がないのだと感じました。

また、打席時に「っしゃー」と叫ぶことについては、高まり過ぎた緊張感を弛緩させる効果があるそうです。たしかに高校時代に、緊張した打席で「っしゃー」と声を出すと、少しひざの震えが止まったような・・以下の記事が参考になりそうです。
https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/article/kodomoq/6tR24vVws.html

以上です。皆さんの参考になれば幸いです。


※追記
私自身が高校野球の監督に対して非常にネガティブなイメージがあり、将来は自身が監督になって選手を救いたい、という想いを持っていた時期もありました。それもあって、選手に対してより効果的なコミュニケーション方法があることをぜひ知って頂きたいという思いも含めてまとめました。もちろんご自身で学習されて指導の仕方を常にアップデートされている方も多くいらっしゃることは存じております。そういった方々がもっと増えてくださると良いと思い、また私の思い出の中にいる指導者のような方が少しでも減ってくれると良いなと思ってます。

参考文献

BRAIN DRIVEN
4Focus
HappyStress
自律する子の育て方
最高の脳で働く方法
恐れのない組織

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