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白雪姫のサスペリア

映画は総合芸術で、色彩藝術である。
『サスペリア』というイタリアの傑作映画がある。
ジャーロ映画の巨匠、ダリオ・アルジェントの代表作であり、魔女三部作の一つである。

サスペリアは2018年にルカ・グァダニーノ監督によりリメイクされた。3時間近い作品で、色彩はモノトーンや寒色に満ちたもので、オリジナルではクラシックバレエの学校だったのが、リメイク版ではコンテンポラリーダンスに変化している。
際どい赤い紐衣装を着ていて、珍作の匂いを放っているが、モーリス・ベジャール的な野心的なイメージがそこにあった。

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オリジナルの『サスペリア』の色彩は唯一無二である。

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極彩色の、と有体の例えが使われるが、原色とネオンの入り交じる世界は、まさにニコラス・ウィンディング・レフンの『ネオン・デーモン』的なものだが、今作をダリオ・アルジェントは、「『白雪姫』の色彩を表現したかった」と語っていて、私は非常に感動した。
確かに、この恐ろしい血みどろの世界は、『白雪姫』である。

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この『白雪姫』の世界にも魔女がいて、バレエ学校には魔女たちが巣食っている。この悪魔崇拝者達を逆に覗き見る恐怖、快楽がこの映画の一つの肝であり、ああいう、悪いことしている連中を覗き見るのが楽しいは、『ローズマリーの赤ちゃん』の悪魔崇拝者たちの集いを見るのに近いものがある。(隣の部屋の老夫婦はまじでムカつく)

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然し、ホラー映画というものは色調が美しいものが多い。
どんなにきれいな文芸映画も、壮大なファンタジーも、或いは豪華絢爛なミュージカルも、ホラー映画の持つ色彩の豊かさには及ばない。

あの、美しい『ロード・オブ・ザ・リング』でも、目を引くのはモリアの坑道で息を潜めるオークやトロル、火の悪魔バルログではないか。
或いは、ティム・バートン監督、デビッド・リンチ監督の描く、奇怪な人々や生き物たち。
ピーター・ジャクソンの描く世界、『ブレイン・デッド』のゾンビたちのおぞましさの持つ美しさ。

あ、すみません、『ブレイン・デッド』は普通に気持ち悪いです、やっぱり(映画は面白いけど)。

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