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ダンス・マカブル③ ダンス・ダンス・ダンスール


もうすぐアニメ化されるバレエ漫画、『ダンス・ダンス・ダンスール』に関してまた書こうと思う(ネタバレは全開で書く)。


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『ダンス・ダンス・ダンスール』はおそらく、今連載している漫画の中でも大変おもしろい部類に入る作品である。

天才が、その才能で周囲を圧倒する作品といえば、近年では『ブルージャイアント』にも似ている。『ブルージャイアント』の宮本大はサックスの天才だが、彼は日本でその巨星を見いだされ、一人世界最高のサックスプレイヤーになるこを確信し、ヨーロッパでバンドを組み、ついには単身、アメリカへ降り立つ。

世界が舞台の藝術では、このように世界編が繰り広げられることは当然だが、今作もバレエ、無論、日本だけに留まるわけがない。

基本的には大枠で分けると、

第1幕
1〜2巻…バレエ開眼編
3〜5巻…生川サマースクール編
第2幕
6〜8巻…生川子供バレエ公演編
9巻〜10巻…ユース・アメリカ・グランプリ編
11巻〜13巻…『眠れる森の美女』オーディション編
14巻〜18巻…ユース・アメリカ・グランプリ本戦NY編
第3幕
19巻〜現在…NY武者修行編?

と分けられると思うが(なんとなく)、主人公は当初14歳である。最新刊では18歳か19歳くらいになっている。

今作には娯楽漫画に必要な要素
1・恋愛
2・ライバルたちとのバトル
3・青春の友情
4・仲間との切磋琢磨
5・主人公の覚醒
6・人生の師匠とも言える幾人もの大人たちとの出会い

と、全てが過不足なく散りばめられている。その上で、それを見事な芸術的描写力で描いていて、惹き込まれる。

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バレエ、と聞くと取っつき難く、私も観ていても寝ることが多い。やはり、言葉がないと、人は集中力が続かないのだ。言葉は、強制的に意味を刷り込んでくる(けれども、難しい言葉は往々にして人を煙に巻く)。
然し、美しいダンサーの踊りや、舞台の美術など、ワンダーが溢れる世界は、やはり藝術だと言える。彼らは、舞台では異次元の存在である。
つまり、漫画というものは言葉があり、物語があり、背景があり、異次元の存在の表情が眼前にある。それは、没入感を一層に高めてくれるわけだ。
そして、言葉があるとは言ったが、やはり今作でも雄弁に肉体と表情こそが、芸術を感じさせてくれる。

『ダンス・ダンス・ダンスール』では、主人公である潤平を軸に、彼に好意を示す女性が幾人か登場する。それは、彼を見つけてくれる都であったり、彼と互いを高め合う夏姫であったり、思春期の友情からの発展の黒島であったりするわけだが、その恋愛模様も、意外にどこに落ち着くかわからないので面白い。

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まぁ、潤平の本命はライバルの流鶯であるから、彼女たちも所詮は当て馬なのかもしれないが……。

ステージがどんどん上がる漫画は面白い。
私はそういう漫画では、例えば前出の『ブルージャイアント』や『ヒカルの碁』が挙げられると思うが、そのような漫画は人気のあるキャラでも実力がなければ切り捨てられていく。然し、人生のステージは例え凡人でも、そうではないのか。

潤平は、その突出した才能を持って、傑物揃いのバレエスクールを飛び越えて、その宝石のような輝きに、海外にいる天才たちも注目の視線を向ける。
潤平は、彼をバレエに目覚めさせたブランコに師事するようになるが、ニューヨーク編に入ってから、作品はウルトラに面白くなった。

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然し、今作は紛れもなく藝術をテーマにしたスポ根漫画であり、青春漫画である。青春のその輝きは、若い肉体だけに宿るわけではない。けれども、やはり若い肉体だけが、ある種天上に連なる美しさを獲得できるものであり、そのような青春は、誰にも等しくあるのである。


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