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日本の美少女、八百万のアリス。

『不思議の国のアリス』という作品は世界で大変に人気のある作品で、特に、様々なアーティストに影響を与えて、それをモティーフに様々な作品を作らせることが多々ある。
ファン層も広いが、女性のファンが特に多いだろう。

ティム・バートンが(そう言えば、ティム・バートンの最新作は『ビートルジュース』の続編である『ビートルジュース・ビートルジュース』だという。大事なことなので2回言ったのだろうか、これも死語)2010年に監督した、『アリス・イン・ワンダーランド』は、当時ウルトラに人気だったジョニー・デップ、それからその前年に公開されて映像革命を起こし、3D映画ブームを起こした『アバター』の超ウルトラヒットにより、こちらも大ヒット、日本でも110億円の興行収入をあげていた。

ミア・ワシコウスカって、『永遠の僕たち』とか『イノセント・ガーデン』とかいい映画いっぱい出てるよ。


今年9月に公開だ。マイケル・キートン。

何より、アリス役のミア・ワシコウスカがとても似合っていて、然し、映画として駄作だと思うのだが、とにかくヒットしている。
この頃はヘレナ・ボナム=カーターともまだパートナーだったのだ。

デップ演じるマッド・ハッターとはイカれ帽子屋であり、まぁ、イカれているわけだが、デップも、2003年公開の『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでウルトラブレイクして(それまでも人気があったが、メジャーになった)、それからコスプレばかりしている、いやその前からか。
ティム・バートンはデップを常に仮装させているが、『シザーハンズ』、『チャーリーとチョコレート工場』、『スウィーニー・トッド』、『ダークシャドウ』……。私はこのコンビでは、『スリーピー・ホロウ』が好きだが。

ディズニー版の『ふしぎの国のアリス』も大変に人気のあるアート作品で、チェシャ猫はねこバスにしか見えないが(無論、チェシャ猫が先行だ)、然し、こちらも様々なアーティストに影響を与えている。

『不思議の国のアリス』といえば、画家の金子國義が何度も何度もモティーフにして描いている。1973年、金子國義の装画により『不思議の国のアリス』が、イタリアのタイプライターの会社、オリベッティから出版された。出版された、といっても、これはクリスマスプレゼントとして子供たちへ贈られる、非売品である。文化的な事業としての出版である。
英語版と、イタリア語版があって、こちらは英語版。

金子國義が2年かけて描きあげた挿絵がたくさん。非常に美しい本。

金子國義、と言えば、津原泰水、であり、四谷シモン、であるが、津原泰水、といえば、『妖都』、であり、その表紙を津原泰水が金子邸へ使用許可をもらいに行くエピソードが好きである。

津原泰水は津原やすみ、として、少女小説でデビューして、『妖都』は、初の津原泰水名義なのである。少女漫画の先生として男性が女性名を名乗る、或いは、少年漫画の先生として女性が男性名を名乗る、ということは多々ある。

津原泰水は金子邸に赴く際に、アロハシャツを来て向かったのであるが(アロハは正装)、当初は『列聖式』なる絵を使いたいと頼んだが、それは駄目、あれは気に入ってんのよ、と言われて、現在の絵が使用された。津原本人は、海外の本みたいでかっこいいと喜んでいた。
金子國義、と、言えば友人の四谷シモン、四谷シモン、といえば人形であるが、この人形を美しい装丁で飾ったのが津原泰水著の文庫版『バレエ・メカニック』である。

まぁ、それよりも、花咲く乙女たちのシリーズ、これは今ならば幾らするんだろう、と思うが、大体500万円くらいかなぁ、とか思ったり。いや、ものによれば1000万円くらいなのかなぁ。でも、海外のサイトを見ていても、肉筆画は大抵は200万円〜500万円くらいが相場(号数にもよるが)のようだ。

とてもじゃないが手が出るわけないが、然し、つい先日ヤフオクで真作が出ていて、これは80万円弱で落札されていたが、鑑定団とかなら300万円とか400万円はつけるだろう。
基本的にはBtoCは高いのだ。美術品でも、CtoCならその半額もザラである。
価値、というのは、需要と供給であるから、市場相場や評価などで、絶対額の500万円という値付けも、その額で欲しい人がいなければ成り立たないわけで、売り手が早く捌きたければ、それは100万円にも50万円にもなる。

津原泰水は金子國義の死の翌年、2016年に『イルミナシオン』なる金子國義の画集に関わって、これはバジリコ出版から発売された、非常に良い画集であるが、Amazonのレビューで叩かれていて、それに津原泰水本人が別レビューで反論コメントを返している。まぁ、かなり感情的なのである。


この本も絶版なので、結構レアだが、まあ、とはいえ、一葉様一人、或いは諭吉一人で対応可能だ。バジリコは、津原泰水の『ブラバン』の始めの出版社だ(文庫は新潮社)。

さて、このオリベッティ社のアリスは鉛筆書きで大変に愛らしいのだが、この本は大判なので、想像以上に大きくてびっくりする。意外に重い。非売品なので大変貴重であり、なかなか入手が難しい。

金子國義のアリスは顔がかわいい。無表情の愛らしさ。
鉛筆のアリスの妖艶さ。

こういう稀覯本、というのはやはりその作家が好きならば蒐めなければならないものであるが、アリス、という永遠少女に向こうを張った、永遠少年ピーター・パンがいるわけだが、ピーター・パンの本でも気になる本がある。ジェームズ・マシュー・バリー卿のこの作品は、1904年に発表された戯曲がその始まりだが、『不思議の国のアリス』同様、イギリスの作品だ。どちらもイギリスであることに、何か意味はあるのだろうか。

然し、ピーター・パンよりもアリスは兎角人気者だ。このロリータ・コンプレックスのトンネルを潜って『千と千尋の神隠し』が生まれてきたし、日本には数多の美少女たちがいて、それは最早八百万やおよろずのアリスである。

このピーター・パンにもウルトラレアな本がたくさんあるが、海外の動画でこんなものがあった。

私の愛読書の一つ、『翻訳家の蔵書』で、作者の大瀧啓祐が、このピーターパンの、ゼインドーフの工房で作られた稀覯本を持っていて、この本を紹介した文章が好きなのだが、やはり、本人の言うところの我が家の本棚に収まる至宝、それは誰しもが持たなければならないのである。

この動画のタイプの本とか異なるが、そういえば、昔のディズニーの映画は、よく、こう、洋書が開いて、そこからアニメーションが展開されるという、黄金パターンが多かった。つまりは、物語が本から始まるのである。
口語、歌、映画、演劇、などなど、物語る方法は無数にあるが、然し、始まりは本、なのかもしれない。

本が紐解かれることで、物語が飛び出す。
本は物語の肉体なのである。つまりは、美しい本は美しい肉体である。
魂だけでも心は震わされるが、その美しい肉体に、人は魅了されてやまない。


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