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ディレクターズカット

『ハリーポッターと賢者の石』に3時間版があるという。

クリス・コロンバスがインタビューで語っていた。これは恐らく近々お目見えしそうだと思う。
要は、ディレクターズカット的なやつである。

最近は、タランティーノが『パルプ・フィクション』の未公開シーン7箇所を入れ込んだバージョンをオークションに出すということで、ミラマックスに訴えられている。これはウルトラに観たいバージョンである。

映画は長いとハサミを入れられる。映画館は上映回数を上げたいわけだから、そりゃあ上映時間は短い方が有り難い。2時間なら1日5回上映出来るが、3時間だと3回上映になり、儲けが減るわけだ。3時間や4時間の大作というのは、観るものにも覚悟と忍耐を要求し、人を選ぶ。結果、売上は芳しく無く、大コケ認定される。

『ブレードランナー2049』は4時間バージョンで前後篇で考えられていた。私はこのバージョンが観られるのならば命すらも差し出すところだが、生憎、2時間43分版の現状の作品がまさにディレクターズカットだということらしい。4時間版は、未公開シーンが多いというよりも、1シーン1シーンが更に濃厚に長くなっているのだという。そして、後編はセックスを終えたマリエットの瞳から始まる予定だった。

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『ラストタンゴ・イン・パリ』にも4時間版がある。これは、関係者や、曲をつけたガトー・バルビエリが観たバージョンだが、今はもう存在していないそうだ。マーロン・ブランドのもう人目には触れることのない演技が観られる、というだけで、素晴らしいバージョンである。

『ロード・オブ・ザ・リング』は、SEE版が存在していて、『旅の仲間』は30分、『二つの塔』は40分、『王の帰還』は1時間ほどのシーンが追加されている。全部観たら3本で11時間半くらいになるのだが、未公開シーンがあることで(サルマンの串刺し回転ガラガラとかね)、作品世界が非常に厚みを増すので、重要な要素である。

小説も、未公開シーンというのはたくさんあるだろう。推敲の果てに、死んでいったものたちである。作者=監督が、何度も何度も、作品を研磨していくうちに消えていくもの。
然し、本物というのは、消えていったものにすら、愛おしさと美が宿る。

『ハリーポッターと賢者の石』は、他のフィルムより、遥かに重要な要素がある。
それは、あれは3人の子役たち、そして、あの3人のキャラクターの、その時の感情が収められているフィルムだからだ。
誰もまだ観たことのない30分は、あの2001年の少年少女たちを閉じ込めていて、観るものをまた過去に連れて行く魔法の時間になるのだろう。    タイムターナーを使うかのように、観たことのない景色も視えてくる。

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