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村上春樹を読みたいが、読めない

村上春樹の新刊が今年の4月に発売されるのだという。
タイトルも、内容も、まだ未発表。

私は、何度もnoteでも書いてきたが、村上春樹は未だ1冊も読んだことがない。

村上春樹という存在は、巨大な存在であり、恐らくは現代文学においては最重要の作家の一人であろう(と、テレビで観た)。
然し、読んだことはない。
と、いうのも、伝え聞く所によると、村上春樹の小説というのは都合よく女性たちが群がってきて、その人達と恋に落ちて、セックスをして、やれやれと言いながらまたセックスをして、そしてそれが何かのメタファーなのだという。
最早、村上春樹は概念と化しており、実在の作家ではないのではないかと私は疑っている。

村上春樹はノーベル文学賞を嘱望されていて、ノーベル文学賞と言えば、1968年の川端康成、1994年の大江健三郎の二人だけが受賞しており、前者は『美しい日本の私』、後者は『あいまいな日本の私』で講演しているが、もし村上春樹が3人目になったら(カズオ・イシグロが日本人枠という説もあるが)、どのような日本の私になるのであろうか。

然し、既に村上春樹の中では、○○○な日本の私としての講演は既に原稿すら完成しており、J・K・ローリングよろしく、『ハリー・ポッター』の最終章は既に書き終えて金庫に入っているの、的な感じで金庫に眠っていると推測される(然し、ハリポタの最終章、絶対あの時点では書いてねーな、と私は睨んでいる)。

私も、村上春樹は何度か読もうとしたことがあるのだ。然し、私は天の邪鬼なので、たくさんの方が既に読んでファンも山のようにいる小説家、いや小説家に限らず漫画家、ミュージシャン、藝術家は、その大勢の方々にお任せして、青田買い&消えてしまいそうな人の作品、というのを好んで選ぶ傾向にあり、当然、村上春樹は外されるべき存在であるが、然し、テレビであんなに村上春樹村上春樹言われたら、そりゃあ天の邪鬼であろうが多少はね……ってなもんで、『騎士団長殺し』とか、『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』とか発売されたときには、よおし!今度こそ読むぞと思いながらも、発売直後にインターネッツで酷評を読むと、ああ、お金が勿体ないかもしれない……と暫しの逡巡、それからもう目的の本は買わずに月日は流れて、村上春樹童貞を永久に拗らせる羽目になる……。

然し、時々村上春樹が私のもとに現れる。ポスターでドドン!とそのご尊顔を向けているのが、書店などで目につくのだ。目があうのだ。無論、村上春樹にとって私は名も知らぬ路傍の石ではございますが、でもね、私が買えば村上春樹が映画館に行った時、缶コーヒーくらいは買えるじゃない……。

すごい威圧感だ。然し、なぜモノクロームで写真を撮るのだ?著者近影とかってオナニー大会にしか思えない。


それで選ぶわけだが、どれが最適解かわからない。何が一番いい作品なのだろうか……?『風の歌を聴け』とか、『1973年のピンボール』とか『ダンス・ダンス・ダンス』とか『羊をめぐる冒険』とか『ねじまき鳥クロニクル』とかいっぱいあって、まぁ迷うわけなのだが、こうして見てみると、やはり村上春樹の本は異様に魅力的なタイトルが多いなぁ。読みたくなるよ。タイトルを付けるってのは小説家の一番大切な仕事だからね。内容はいらないのよ。そして、そっと書棚から『風の歌を聴け』を抜き取るわけだが、最難関、書店員が待ち受けている。これが一番イヤなんだ、なんせオイラは天の邪鬼。レジで書店員に本を差し出したら、(え!なにこいつ。今頃村上春樹読んでんのかよ、ああ、そうか、4月に新刊が出るから興味出たニワカだな。にわかがまた4月に春樹をしたり顔で語るのかよ、あーあ、やだやだ。糞にわか、にかわ死ね、死んでしまえ、にわか死ね)「にわか死ね!」と、言われてしまうかもしれないではないか。

誰でも初めはヴァージンであり、筆おろしのときはあるものだ。然し、それは天の邪鬼の私としては、誰もが村上春樹を認識していない瞬間(そんなものはないと思うが)、いや、何もそこまで贅沢を言わないから、世界中で村上春樹がほぼ話題になっておらず、かつ村上春樹のことを考えている人が二桁くらいの……そのような状況下において買ってしまいたい。なんとしても、にわかと思われることだけでは避けなければならないのだ。
通販だって同じことだ。「今頃村上春樹の本を注文しているやつがいるぞ!」と梱包時に思われる可能性もあるし……。
だから、私の肥大化した自意識を虐殺しなければ、村上春樹の本を読むことができないのが現状である。
まぁ、大抵の方にとっては知らんがな、どうでもええねん!って感じかもしれないが、最近、私はまた村上春樹の本を買いたいムーブが来ていて、実は今年こそは村上春樹を読むぞ−!と誓っていたのだが、そのタイミングでの新刊発売の報である。これから、だんだんと、村上春樹の名前を聴くことが増えるだろう。ワイドショーでも、村上春樹を語りだすだろう。ハルキストたちが騒ぎ出すだろう(というかハルキストって何だ?本当にいるのか?)……。
つまり、この2月が最終の購入タイミングである。とにかく、私は今考えている。村上春樹作品のどの作品が、春樹童貞の卒業に相応しいのかを……。

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