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リボルバーといえばオセロットではなく、これからはリリー

『リボルバー・リリー』を鑑賞する。
目的は、本日発売の『君たちはどう生きるか』のパンフレットであり、それを購入して、折角劇場に来たのだからと鑑賞。

私は今作の原作は読んでいない。読んでいないが、監督が行定勲であることと、大正時代のセットなどがいい感じなので観た次第。
『メタルギアソリッド』のリボルバー・オセロットが関係している物語かと思ったが、やはりそんなことはなかった。

で、お話としては、ものすごく入り組んでいてわかりにくいので、まぁ要約すると、『からくりサーカス』の序盤のようなものであり、つまりは大金の在り処を識っている少年を守る元スパイの最強女性の戦いである。
その主人公のユリさんを、綾瀬はるかさんが演じている。言わずもがな、リリーとは百合の花である。

とにかく豪華俳優陣である。無論、綾瀬はるかさんと長谷川博己さんがメインであり、その他の役者は出演時間はトータル10分くらいしかないのだが、役者陣の豪華さは随一である。
まず、始めに東映の三角マークが出るが、これが、昭和時代のマークであり、このあたりから行定勲監督の本気度、そして、当たり作品の匂いが濃厚に漂う。そして、冒頭5分くらいで炸裂するウルトラ暴力。
これもまた、この映画は飛ばしていくぜ!という決意表明であり、観客への宣言だろう。

結果としては、想像以上に面白い作品だった。

上映時間は139分あり、このあたりはマイナスポイントだろう。刈り込んで110分くらいならばなお良かったのだが、全然集中して観られる。
それから、位置関係がわかりにくい、ストーリーの視点が多方面に渡りすぎて見づらいし、飲み込みづらい点もマイナスだ。

大正の町並みがCG乃至はセットっぽいのはお約束であるが、その中で銃弾の雨霰あめあられが飛び交い、特撮的銃撃戦が最近の邦画の中でも濃厚である。
リリーは要人を殺しまくっていた過去があるが、とある出来事からそういうことから足を洗い、撃っても殺さないのである。でもやむを得ない時とか重要どころでは普通に殺す。この塩梅がいい。これは、漫画『サイレン』における主人公のアゲハのようなものであり、絶対に殺さない、というわけではなく、殺す時は殺す、というのがなんとも死線を潜ってきた感じでいいのである。

『サイレン』は面白い漫画だが、序盤が『GANTZ』過ぎて…。

然し、今作で一番良いのはなんといっても長谷川博己さんである。

長谷川博己は『シン・ゴジラ』でも良かったし、『セーラー服と機関銃』でも良かったし、本当にいい役者さんである。
今作は美味しい役を演じていて、主人公のユリさんのいる娼館(的なものなか識らんが)の相談役の弁護士であり、元海軍である。
最後に暴走機関車ばりの爆走シーンもあり、私はそこで爆笑したのだが、なんともいい男を演じているのである。
この娼館は玉ノ井にあり、玉ノ井と言えば永井荷風であるが、出で立ちも荷風のようであり、ハイカラな服装で、娼婦たちから「先生、先生」と呼ばれている。実写版永井荷風は長谷川博己で決まりである。

いやー、いい男。本当にいい男だなぁ。

で、この長谷川博己さんを筆頭に、この娼館(といってもどこまで客相手の仕事をしているのか不明であり、『探偵はバーにいる』ばりに、ユリさんはバーにいる、のかもしれない)にいるメンバーの古川琴音さんとシシド・カフカさんもメインキャラで、戦闘に参加する。どちらも脛に傷のあるようで、シシド・カフカさんはユリさんの台湾時代からの知り合いであり、彼女は本当に魅力的な佇まいで、今作でも良い役を演じていた。ユリさんを含めたこのメンバーは恐ろしい耐久力を持っており(まぁ、主にユリさん)、まぁ、銃弾数発くらいならば大丈夫なんである。

そして、ユリさんにとっては最強の敵である、自分が育ったスパイ要請の組織の後輩が敵として襲ってくるのだが、これを清水尋也さんが演じている。
とてつもない色気を持つ清水尋也さんは、中盤以降、亡霊なのか何なのかよくわからない存在になるのだが(まぁ、ユリさんにとっての過去の亡霊であり、乗り越えるべきトラウマの具現化である)、彼関連のシーンもいい。
特に◯の中で◯◯シーンはなかなかの長いショットで印象を残すが、どうせならば、『ブレードランナー2049』のラヴが水中で死ぬときの顔面を30秒くらい流していたが、それくらいのインパクトが欲しかった。

この映画がなんといっても良いのは、洒落ているところである。
出てくる小道具や色合い、カラーコーディネートがずば抜けてセンスが良いと感じられるし、夏の緑や海の色、光のキラメキなど、文芸映画の監督だからこその繊細さが感じられるところもいい。

総じて品が良いが、少し詰め込みすぎて散漫な箇所も出てしまった感もあるが、締め方もお約束ではあるが小粋で軽やか。
個人的には好きな1本である。

暫定2023年ベスト(映画館で観たものに限る)

測定不能…君たちはどう生きるか(2回鑑賞)

1位:ザ・フラッシュ…96点
2位:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー.Vol.3…93点
3位:フェイブルマンズ…83点
3位:キングダム/エクソダス(脱出)…83点
5位:リボルバー・リリー…82点
6位:カードカウンター…81点
7位:AIR/エア…80点
8位:スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース…78点
9位:クリード/過去の逆襲…75点
10位:アラビアンナイト/三千年の願い…74点
11位:シン・仮面ライダー…62点









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