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私の贔屓しているギリアム映画

テリー・ギリアム監督作品の中で一番のご贔屓の映画について。

世間的にはやはり『未来世紀ブラジル』、或いは『バロン』、若しくは『12モンキーズ』だろうか。
最近だと、念願の『ドンキホーテを殺した男』を撮り上げて、ひとまずはゴールと言えるのかどうか、『ゼロの未来』などは設定は面白いものの、
なかなか入り込む素地がなかった。
『ブラザーズ・グリム』や『ローズ・イン・タイドランド』あたりの頃はまだ名監督の風格もあったが、近年では完全に一線級から退いた感のあるのが、SF御大のリドリー・スコットとは異なるところだろうか。
初期の『ジャバウォッキー』なども捨てがたいが、雑な作りだ。

けれども、やはりテリー・ギリアムの感性、美しい絵画めいた、それはフランシス・デ・ゴヤを思わせるが、そのマットな色合いが織り込まれたタペストリー作品はファンタジー、それもジプシーが出てくる砂埃めいた世界がやはり似合いだ。
それで言うのならば、やはり、『Dr.パルナサスの鏡』こそが私の愛するギリアム映画である。

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公開は2010年だった。この映画はDr.パルナサス率いる旅芸人の一座を主役としている。まだスパイダーマンになる前のアンドリュー・ガーフィールドが新鮮な輝きを放つ。
そして、なんと言ってもパルナサスの娘である、ヴァレンティーナの美しさである。スーパーモデルのリリー・コールが務めたが、人形のような歪な愛らしさである。

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映画とは、夢幻を見せるものであるが、その夢幻がこの映画には詰まっている。
悪魔と賭けをしている(スイートシックスティーンの娘ヴァレンティーナがその代償だ)パルナサス博士は不死を生きているが、この一座と悪魔との間に入る俳優は、本当にはヒース・レジャーが最後まで演じるはずだったが、
彼の死により、役者は物語中に顔を変えることになり、皮肉にも万華鏡的な作りのこの映画は、更に曼荼羅へと昇華していく。

イマジネーションが横溢している。この作品は、まさにパルナサス博士の一座の馬車の中に通されて、ラマのいる高山の寺院、人面風船の飛ぶ子供の空想世界、不可思議な世界へと連れて行かれる。然しその入口である一座の舞台は、まるでセルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ・リュスそのままだ。
映画は舞台である。舞台が映画である?

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魔法がなければ、映画ではないのではないか。少なくとも二時間の暗闇の中では、魔法は解けないで。
暗闇を出た後にもまだまだ魔法が続くのであれば、それは悪魔の仕業かもしれない。
然し、この映画はどこまでも歪で不可思議だが、恐ろしいほどのハッピーエンドを齎してくれる、奇妙な映画だ。
そういう映画をやはり推したい。

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