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私の好きな作家① 津原泰水


私の好きな作家さんの一人、津原泰水さんの作品を紹介いたします。

津原泰水さんの作品で好きな作品は
①『バレエ・メカニック』
②『ペニス』
③『赤い竪琴』

の3作品です。

①のバレエ・メカニックはSF作品で、主人公の木根原は造形作家でして、彼の事故で眠ったままの娘である理沙の夢が東京を侵食していく、というお話です。
四谷シモンさんの人形が、理沙を彷彿とさせるようです。

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この映画が元ネタ的なことを、解説で柳下毅一郎氏が語っていました。
シュルレアリスムをSF小説で行った形です。

この、東京を侵食していく夢のガジェットというのは、モーツァルトであったり、加藤清正であったり、巨大な馬が引く馬車だったり、東京を襲う波だったりと、様々で、木根原と理沙の主治医の龍神(女装の男性)が行く東京は美しい硝子と紙の細工の街のようで、酩酊感を味わえます。
全3章立てで、第1章のラスト、思い出の浜辺での再会のシーンの美しさは筆舌に尽くしがたいほどです。
押井守監督とかに、是非ともアニメーション映画にしてほしいです。『天使のたまご』とか、或いは今敏監督の作品の匂いも感じます。

②の『ペニス』は『バレエ・メカニック』の前身で(『ペニス』のような作品をと頼まれたのが、『バレエ・メカニック』)、井の頭恩賜公園の管理人が管理人室で発見した少年の死体を、冷蔵庫を調達して隠す話です。

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どうしてこんな所に少年の死体が、というミステリーですが、もはや管理人が正常ではないため、この死体を大切に保管し始めるわけです。この少年も、公園内で動物を殺したりしていた悪ガキだったり、作中には異常な奴らばかり出てきます。あらゆる文体を試していて、とにかく凄まじい濃度の作品です。
主人公の管理人はEDで、冒頭、ピンサロでフェラチオをしてもらうシーンから始まります。『バレエ・メカニック』の木根原は、冒頭少年の男娼にフェラチオしてもらっていたので、そこを同じにする必要性はあるのかと思いました(笑)
『バレエ・メカニック』はモーツァルト、『ペニス』はチャイコフスキー。
それぞれに使用されるイメージの作曲家があるようです。

③の『赤い竪琴』は、元々少女小説から出発した津原泰水さんの原点回帰的な作品で、その少女小説を読んでいた女性(津原さんは永久少女たちへと謳っています)たちに向けての恋愛小説です。

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物語はとある詩人の日記が、主人公であるフリーグラフィックデザイナーの入江暁子(さとるこ)の祖母の遺品から見つかるところから始まります。
その詩人の孫だという楽器職人の寒川(『耳をすませば』の天沢聖司を思い出しますね…)とを日記が縁を結び、喧嘩しながらも、徐々に…という王道のラブストーリー、そこに、ザトウクジラのソングが通底音のように流れていて、とても美しい物語になっています。
彼は世間知らずな王子のように私の靴を拾い、持ち主は君だねと私に云い、そしてふたりはいつまでもいつまでも幸せに幸せに幸せに幸せに、なぜ物語はここで終わらないのか。
と、いう文章が私はとても好きでして、非常にオーソドックスな物語をあえて描き、それをどこまでも上品に美しく描く津原泰水さんならではの味わいを感じられます。

現代作家の中ではトップクラスの筆力を、耽美力も圧倒的で、私の大好きな作家さんです。
個人的には『たまさか人形堂ものがたり』も大好きで、何度も読み返しています。

ステイホーム中におすすめです。

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