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六月の夜のバースディプレゼント

6月…。夏至。そう、もうすぐ夏至であり、私の誕生月。
私はマリリン・モンローと同じ日に生まれた。それから、『ブレードランナー2049』のシルヴィア・フークス!

そんな私の6月、六月の夜の都会の空、であるが、ついに!念願叶い!ゲットした…!嬉しくて、涙がちょちょ切れる……。

そう、稲垣足穂の『ヰタ・マキニカリス』の的場書房版限定100部本の1冊!

思っていたより小ぶり。鉛筆絵は『ヰタ・マキニカリス』の作品群とは関係のない、『一千一秒物語』から。

この1冊、どれだけ欲しかったか……。夢にまで視た1冊……。

1948年に書肆ユリイカから発売された限定500部本の『ヰタ・マキニカリス』。無論、これは所持している。入手難度は10段階で6、くらいである。
カバーなしは5、カバーありで6、それに帯付きの完品だと7、くらいのイメージ。無論、完品である。

この書肆ユリイカ版の『ヰタ・マキニカリス』を見た北川幸比古は、タルホ曰くびっくりして、これのデラックス版を作る!と決意して生まれたのが、1956年刊行の的場書房版『ヰタ・マキニカリス』。

完品ではなかった。帙はなかったし、タルホについて書かれた冊子もない。でも、ボール函に赤い函、特製のフィルム型枝折しおりは付いている。
(ちなみに、栞の語源の枝折は、枝を折り目印にしたところからきているんだヨ!【吉野山 去年こぞ枝折しおりの道変へて まだ見ぬかたの花をたづねん】)

もう満足……!これ以上ないほどの多幸感……!
早速あらためてみる。

ボール函を開けると中に真っ赤な函が。
その中に納められている本はB6サイズで思ったより小ぶりだった。
タルホの小説はセルライドのフィルムの感じがする……。それを体現するとこうなる。
粗布装丁がいいね。

塚本邦雄が言っていた、藍色の文字の本文。たまらん。なんという、綺麗な文字。そして、ギチギチの段組み。そこに愛おしさを覚える。

なんと、それよりも、私が感動したのが、この本の天である。以前、私は、『稲垣足穂大全』特装版限定75部(入手難度8)を入手した折に、その本が美しい天紫であることを改めて記載していたが、今回の的場書房版『ヰタ・マキニカリス』、なんと天の色がココア色!天ココア!私は識らなかったが、なんというハイカラーさ。まさにタルホの本。

ちゃんと天がココア色で染め抜かれている……。

タルホが『一千一秒物語』において引用する、ツェラの一説の誤訳ー『芸術とはココア色の遊戯である』、その天の色である。
そう、藝術とはココア色の遊戯であり、六月の夜の都会の空であり、美少年時代への郷愁なのだ。
なんという嬉しい誕生日プレゼント!このボール函はユリイカ版の編集者である伊達としては、本当には葉巻箱にしたかったそうだが、そうだったらこの上ない藝術だなぁ。

書物には、作者の色を刻印せねばならない。

さて、この的場書房版ヰタ・マキニカリスは入手難度は9、であるが、やはり入手難度10である、13部限定である『イカロス』もまた、射程に捉えねばなるまい……。何れは……。


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