UX設計はお作法って話

いつもはライティングに関するワザがメインテーマですが、今回は少し思想じみたお話。

UX(ユーザーエクスペリエンス=ユーザー体験)と制作の関係についてです。
ここでいう制作とは、ライティングを含めた、さまざまなプロダクトや商品やサービス、あるいは趣味の創作に至るまで、すべての「つくる」行為のこと。

先に結論を話してしまいます。

UX設計は「思いやり」であり、守るべき「作法」のようなもの。
ライティングはもちろん、何かを作るときには考えておいたほうがいい。

です。
もう少し詳しく知りたい方は、以下へお進みください。

UXとは?

UX=ユーザーエクスペリエンス=ユーザー体験とは、文字通り、なにか商品や製品などの対象があり、それを使ったユーザーの一連の体験すべてのことです。

それを知る前、知った後、使う前、使っているとき、使った後。そして、知ってから使ったあとまでのすべての流れ。これらに対して、「どんな体験か」を評価し、設計するための考え方です。

新規プロダクトを開発する大きなプロジェクトなら、多くの場合、UXデザイナーがユーザー体験を設計します。役職名は違うかもしれませんが、やっていることは同じです。
この商品を使うユーザーは、どんな気持ちで、どのように使うか?
それらを調査・評価・改善していきます。

直感ではわからない。を、忘れない

UX設計の一環として、商品やサービスを世に出す前、ユーザーに使ってもらうテストを行うことがあります。

ユーザーテスト、ユーザビリティテスト、UXテストなどとさまざまな呼ばれ方があるうえ、意味するところがそれぞれ少しずつ違ったりしますが、やっていることはとにかく、「説明者がいないとき、ユーザーはどう使うか」の調査です。

理想的なのは、説明書なしでも、見ただけで使えるという状態。
それができない場合がほとんどなので、大抵は説明書やヘルプを添えておきます。
そしてモニター越しに開発者が観察していて、ユーザーは使いながら思ったことを口に出してもらったりします。

ユーザーのことを考えて、開発者たちはいろいろな方法で「直感を誘導」しています。

握って使うものなら、グリップしやすい形にしておく。
スイッチは、どっちがオンでどっちがオフかわかりやすくする。
組み立てミスを防ぐため、関係ない場所にはハマらない構造にする。

ですがテストを行うと、驚くほど「ユーザーは、見ただけでは商品の使い方がわからない」ということがわかります。

直感でわかる範囲は、相当狭い。そして「ユーザーの直感」は、開発者の意図とかけ離れていることもあります。

開発者自身は、その物に深く関わってしまったがゆえに、「初めてそれに触れる体験」は、二度とできません。
いや、あなたが作ったものだったとしたら、「初めてそれに触れる体験」は、一度として、できたことなどない、未知の体験なのです。

これは、制作や創作でも同じ。
あなたが書く文章の、最初の読者は、あなた。
でもあなたは、「一度も読んだことが無い、新鮮な、初めて読む自分の文章」を体験することは、不可能なのです。

初めて触れる人は、わからない。
直感では、わからない。
この感覚を忘れないようにしましょう。

結局、思いやり、大事

ユーザーの体験を良くするにはどうすればいいか。

それを考えるのが、UX(ユーザーエクスペリエンス)設計です。

機能を増やせばいいというわけでもなく、説明書を丁寧にしてブ厚くすればいいというわけでもなく、削り過ぎて足りなくてもダメ、多すぎて煩わしくてもダメ……。
どうすりゃいいのさ……。

月並みなことですが、使う人や読む人のことを考え、思いやりをもって相手の立場に立って考えること。これが実は、必要なことだと思います。

読み手が知らないかもしれない言葉を、相手のことなど考えずに多用するのは、思いやりがある行為でしょうか?
技術力の高さを示すために、ユーザーが求めてもいない機能を増やすことは、思いやりがある行為でしょうか?
説明書に画像を入れず、長々と文字だけで説明して「読める人だけ読めばいい」という態度でいるのは、思いやりがある行為でしょうか?

ユーザー体験の向上を考えることは、結局、ユーザーを思いやることだと思います。

思いやりって、ホントはあって当然(作る人なら)

世界的な大企業が、生き残りを賭けた一大ビッグプロジェクトを立ち上げて、各所から専門家を招聘し、何度もテストをして……。

それでも、ボタンまみれでクッソ使いにくいリモコンつきのテレビを作っちゃうんですよ! ユーザー体験、最悪。

でもこれは、ボタンを小さくして押しにくくしたり、どのボタンか分かりにくくしたりして、ユーザーを困らせたかったわけじゃないんです。
もちろん、何も考えていないわけでもありません。
思いやりをもって考えに考えても、こうなっちゃうことがあるんです。

だから、初めから思いやり(=ユーザー体験を設計する思考)をもっていないと、とんでもない独りよがりなモノができてしまいます。

もちろん、それでいい場合もあります。ユーザーを一切想定しないのであれば。

ですが、人に何かを提供するなら、モノを作るなら、思いやりはあたりまえにもっておきたいものです。もっておいたほうが、最終的に良いことが起こります。
大事! 思いやり!
大事! ユーザー体験を設計するという思考!

まとめ

・ユーザーが使うとき、どう思うかな? みたいなモノがUX。
・作ってると自分視点になって、ユーザーから乖離してくる。
・UXを良くするために、思いやりを忘れない。
・UX設計=思いやりは、制作の「お作法」。

マナーとか作法って、本来はとても大事なことだと思います。
過去の形式に囚われるのではなく、「こうすべきと決まっているから、こうすべき」と思考停止するのでもなく、そして謎の誰得創作マナーでもなく、実態にあったマナーや作法をスマートに適用したいもの。

今回は、制作におけるマナーや作法として、思いやり=ユーザーのことを考えて作ること、を取り入れていきましょう、とお伝えしました。

世の中に、もっと使いやすいモノや読みやすい文章が増えると、うれしいと思っています。

それでは、みなさんに良きクリエイターライフがあらんことを。

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