薬機法とか個人情報とかコンプレックス広告とか、表現の締めつけが“ちゃんと”キツくなってるので、ちゃんとしようね、というお話

薬機法チャレンジとか、ダークパターンとか、コンプレックスを煽る系のクソ広告とか、そういった不誠実なコンテンツは、基本的に嫌われるものですよね。
最近はそれに、個人情報を勝手に使う系も入ってきていると感じます。

でも、なんだかんだすぐに成果が出たり、上から求められたりして、自分が作る側・広告を発信する側だった場合、「自分が見たらムカつく広告」とか表現を、やっちゃうのではないでしょうか。
心当たりがめっちゃあり、大変心苦しいです。
今回のお話は、そういうの、やめたほうがいいよ、という内容です。

参考に、話題になったWeb記事のURLも載せておくので、気になった人は見てみてくださいね。
というか個人的には、「クソコンテンツを腐せる記事をまとめておく」という目的でこのページを作りました。

大いなる上位存在が「そういうの、やめようや」って言い始めてる感がある

大いなる存在とは、具体的には大手プラットフォームと政府(法律)です。

直近では若干、落ち着きぎみですが、この流れは止められないと思うし、止まらずに、ぜひ誠実なプロダクトだけが残ってほしいな、と思います。
ちょっとだけ詳しめに解説します。

大手プラットフォームのUXとか体験重視が進んでる感がある

「見ていてムカつく」って、やっぱりUX(ユーザー体験)をめっちゃ下げるよね、って、いろんな人が気づいてきたのではないでしょうか。

  • ムカつく広告をプラットフォーム側がはじく傾向が強くなってきた

  • 根拠がない、誤解を招くなど、いわゆる「広告文学」がNGになる

  • そもそも、広告手法に違法性がある商品広告を掲載しなくなっている

こんな感じで、UX低下につながる可能性がある広告やコンテンツが、大手プラットフォームからなくなりつつあるように思います。
具体的には、Google、YouTube、Yahoo!とか、そのへんです。
いくつかの事例は、後半のWeb記事にあるので見てみてください。

ユーザーの不利益になる行為を、法的に規制する動きがある

法規制に関しては、だいたい3つの軸で考えています。
一つは全体としての考え方。残り二つは、個別の事例に関する考え方です。

傾向として、「努力が義務に変わる日」が来る感じがある

一つめは、規制に関する考え方です。
EUとかカリフォルニアとかで適応されていた、けっこうキツめの規制とかが日本に入ってきたりしています。欧米のマーケティングに対して日本のトレンドは2年から5年遅れている、なんて言われることがあります。このマーケトレンド、いい物ばかりではありません。悪いものも、2年から5年遅れで入ってきます(ざっくり計算)。すると、欧米では悪いマーケ手法に対して規制が成されるのですが、その規制も2年から5年遅れで日本に取り入れられます(最近だと、もっと早いですが)。

上記で挙げた、EUやカリフォルニアの例だと、Eメールに関する規制が有名ですね。これらは、最初は大手プラットフォームが「気をつけまーす」「俺ら進んでまーす」みたいな感じで始めます。ですが、だんだんと一般化してくると、守っていない中小企業が悪目立ちするようになります。彼らが派手にやらかし始めると、企業努力から政府命令になっていきます。
ユーザーにとって不利益になる構造は、今までは「そういうもんだしね」だったのですが、だんだんと政府の命令によって、あるいは規制強化によって、変えることが必須になるかもしれません。
ちょっと分野は違いますが、例えば、携帯電話の乗り換え縛りが良い例だと思います。2年縛りだとか、やたら高い解約金がかかるだとか、そういう点は、政府が携帯キャリアに文句をつけていました。結果として、乗り換え縛りは見直されています。

個人情報の扱い方が変わってくる&キツくなってくる

二つめは個人情報やプライバシーについての意識です。
前提として、厳しくなることはあれど、ゆるくなることはなさそうです。そして、法改正によって個人情報とされる範囲が、どんどん拡大している感があります。
後ほどWeb記事も紹介しますが、Googleが、個人情報を取得する範囲を狭くしつつ情報を収集するという技術を開発しました。
ちょっと前までGoogleは、cookie利用を規制することに反対する立場でした。少なくとも、積極的にcookie利用を排除しようとはしていませんでした。
iOSでcookieを利用したトラッキングを積極的に排除しようとしたapple社(※1)とは対照的ですね。

ですが、世間的な「いや、cookieって個人情報じゃん。個人情報、勝手に使うなよ」っていう流れに逆らえず、ついにcookie利用はサイトで同意が必要になりました。それに対応して、個人情報を取得する範囲を狭くしつつもトラッキングできる、みたいな技術の開発に舵を切ったということは、もう、めちゃめちゃ細かく個人データをcookieとかを使って収集する感じではない、ということも意味すると思います。
これは実は、マーケティングオートメーションとかリターゲティングとかにドカンと影響があるので、個人的にはビビっています。

前述の個人情報保護法の改正で、どこまでを個人情報とみなすか、という設定において「さすがにこれは、個人情報じゃないよね?」という範囲が切り出されました。個人と結びつかない会員番号とかIDとか、行動は伴っているけど個人を特定できないとか、そういうやつです。そうやって切り出された「個人情報じゃないけど、行動分析とかはできるデータ(※2)」を使って、いかにマーケティングするか、みたいなお話にシフトするのではないでしょうか。

薬機法の「何人も」の改正は必ず覚えておく

三つめは、いわずもがなですが、2021年8月の薬機法改正についてです。
薬機法改正で「何人(なんぴと)」も、処罰の対象になるように変わりました。
違法な広告表現を指示を出した広告会社や制作を命令した上司だけでなく、実際にデザインを作ったあなた、文章を考えたあなた、広告設定をしたあなたも、何かしらの罰金的なものを払ったりしないといけなくなりました。逆もしかりです。部下が勝手にやった、上司がやれって言った、みたいなヤツでは、言い逃れできなくなっています。
あと、効果の匂わせとか、直接は言ってないけどそうとしか感じられない表現とか、「個人の感想です」による逃げとか、そういうのも全部、ダメです。逃げれているように感じたかもしれませんが、見逃されているだけで、しょぴいてやろうと思われればアウト(※3)です。
速度違反のネズミ捕りと同じですね。速度違反者の全員逮捕は無理だけど、特定の誰かは捕まえられるし、実際にしょっぴかれています。
あと、流行りの感染症関連で誇大広告をやると、かなりの確率でしょっぴかれます。見せしめ効果もあるためです。なお流行りの感染症関連では、薬機法だけでなく、消費者庁のほうから攻められるケースもあります。業務改善命令とかで商品回収、とかをさせられたりしています。
薬機法について気になる方は、こちらの過去記事もどうぞ。

こんな事例あったよ記事まとめ

このページの本題です。いくつか、本件に関わる動きをまとめたので見てみてください。

ユーチューブ、それでも残る危険な広告~薬機法違反など55万件を削除~

https://medical.jiji.com/topics/2333

薬機法違反の広告がめっちゃ削除されたよ、って話。YouTubeは世界的な企業で、薬機法は日本の法律です。日本の法律に対しても、(いろんなからみがありつつ)ちゃんと動いてるよ、ってことですね。

ヤフー、「コンプレックスを露骨に表現した」広告禁止を改めて通知 「差別を助長する」

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2009/03/news074.html

コンプレックスを煽る系のクソ広告、ダメよ、って話。コンプレックスを煽る系のクソ広告には石を投げよ。

「飲むだけでやせる」「シミが消える」…コンプレックスあおる広告、大手ITが排除の動き

https://www.yomiuri.co.jp/national/20211202-OYT1T50128/

こちらも、コンプレックスを煽る系のクソ広告について。ただしこちらは、排除する動きはあるが、そういう広告を受けないと広告会社の売上が激減する、という話まで突っ込んで書いてあります。
やはり我々が監視して、コンプレックスを煽る系のクソ広告に石を投げていくしかない。全員で投げよう。過去にコンプレックスを煽る系のクソ広告に手を染めた汚れし者も、今クソ広告やってるヤツにはどんどん石を投げていこう。

YouTubeが2021年11月から「低品質の子ども向けコンテンツ」の収益化を停止するとクリエイターに警告

https://jp.techcrunch.com/2021/10/27/2021-10-25-youtube-warns-creators-it-will-start-to-demonetize-low-quality-kids-videos-next-month/

コンテンツの内容もちゃんとしてね、というお話。こちらは広告ではなく、コンテンツそのものに対する指摘という点で画期的です。

ヘルスケア表示 拱手の代償① アフィリエイト、大混乱 「何人規制」発動に業界震撼

https://www.tsuhanshimbun.com/products/article_detail.php?product_id=5408

「薬機法チャレンジ」の何が問題? コロナ禍で広まる“地雷”広告

https://withnews.jp/article/f0211011002qq000000000000000W0bx10701qq000023725A

こちら二つはまとめて薬機法のお話。薬機法ギリギリを攻める薬機法チャレンジとか薬機法チキンレースとかっていう言葉もありますが、大抵はクラッシュしてエンドです。

Twitter、個人の写真・動画の無断投稿を禁じるポリシー変更

https://news.yahoo.co.jp/articles/c0fb44bbb7515da75e5fae04e0e02cdf9fcdc278

こちらは、個人情報の範囲って結構広がってるし、センシティブだよね、というお話。特にプラットフォーム側の対応としては、現行の法律よりも厳しめにやるのが定石になっています。法規制ギリギリを攻めて法律が改正されたら被害がデカいので、あらかじめ法律よりも厳しくしておこう、って感じでしょうか。

広告で個人特定を大幅に制限 グーグル、新技術を発表

https://www.advertimes.com/20220126/article375152/

こちらは、当ページのなかでもちょっと出てきたGoogleの個人情報を特定しすぎない新技術のお話。いかにして個人を特定するか、という手法に血道を上げていた以前の状況からは、考えられない変化です。

不当な「人気NO.1」にリサーチ協会が猛抗議 恣意的な調査にメス

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/00807/

そのNo.1表示、調査は適切ですか 景表法違反の危険も

https://www.advertimes.com/20220120/article374552/

広告で「No.1」と表示をする場合にどのような調査が必要か

https://www.businesslawyers.jp/practices/153

No.1表現に関して、まとめてご紹介。No.1とか、何倍とか、そういう表現ってどうなの? という議論は古くからありました。ちゃんと、NGな表現はNGだからね! と、認識しておくのが大事です。
例えば、『新宿居酒屋串焼きを出すチェーン店のなかで17時の客入りNo.1(私調べ)』を略して『新宿No.1居酒屋!』とか言ってはいけません。
冗談っぽいでしょう? でも、世の中にはこんなNo.1があふれています。
(一部、会員登録が必要な記事ですみません。)

【独自】TikTok運営会社が一般投稿装い動画宣伝…協力者に歩合制報酬、年500万円も

https://www.yomiuri.co.jp/national/20220124-OYT1T50007/

Instagramでの豊胸表示投稿に景表法違反、指示を出したEC会社に措置命令

https://news.yahoo.co.jp/articles/160d1f5b23c48d8126bdc253c3d3cffaac140997

こんな感じで、あんまり良くないことすると注目を集めるよ、という話。TIKTOKは、プラットフォーム側がやっちゃってた、って例だけども。

「クリック1つでサブスク、解約は電話で」という手法が違法に

https://gigazine.net/news/20211118-click-subscribe-call-cancel/

最後は、ダークパターンにも関わるお話。
ダークパターンについては、こちらの過去記事もどうぞ。
ユーザーの不利益になる、不誠実な方法はどんどん規制されてっちゃうよ、というお話。
欧米はマーケが進んでる、などと言われることも多いのですが、このような狡狡(こすずる)い、セコい手法がバンバンはびこる無法地帯です。やつら、ユーザーのこととかユルい財布だとしか思ってないから、容赦がねぇ。だから、それに対する規制もガンガンかかります。
ダークパターンに属するような不誠実な手法は、日本に上陸してきても、ちゃんと規制も上陸してきますよ、という感じですね。

まとめ

上司とかが、うんちみたいなマーケティングをやろうとしたら、ここに記載した事例のURLを見せて「でもぉ、今ってそういう、煽るみたいなヤツ、止めたほうが良くないッスかぁ??? 情報古いッスねwww(爆煽り)」ってやってほしいな、と思います。

ほかにも、こんな事例があった、などを目にしたら教えていただきたいです。

やっぱり、「自分も一人のユーザーであること」を忘れずに、誠実に商品/サービス/事業と向き合ったほうがいいのではないかと思います。
がんばって働いた結果、『社会がよりクソになった』、なんて、イヤじゃないですか。

それでは、みなさんに良きクリエイターライフがあらんことを。

蛇足

次の表現規制の流れとしては、個人的には、ほかの分野での匂わせ規制が来るかな、と感じています。
薬機法チャレンジの匂わせ手法には、こんなものがあります。
まず、ビタミンの効果を説明。これは学術的事実なので書いてもOK。
その後、「この商品にはビタミンが含まれています!」って言う。
イコール、ビタミンの効果をこの商品でも得られそう、みたいな匂わせるヤツ。なお、バリバリNGです。
こういった手法は、薬機法チャレンジでは明らかなNGなのですが、ほかの分野ではまだ規制されていなかったりします。
人材系、マーケティング、教育、コンサル、そのほかいろいろな分野で応用できそうな匂わせ文学が、次あたり規制されるんじゃないか、というか、規制されないとヤバいんじゃないかと思っています。

注釈類
※1:iOSでcookieを利用したトラッキングを積極的に排除しようとしたapple社
これは別に、個人情報を慎重に扱う素敵な企業だから、というわけではないようです。自社外のプラットフォームにユーザー情報を渡さずに自社で管理して、ユーザーもサードパーティも囲い込みたい、という思惑によるものだ、といわれています。

※2:個人情報じゃないけど、行動分析とかはできるデータ
個人と紐づけられていない単純な識別子は、個人情報には含まれない、とされました。
つまり実は、cookieって個人情報じゃない、ってことなんですよね。
(って理解であってますよね??? 間違ってたら指摘してほしいです!!!! タスケテ!!!)
でもそれを、大抵の場合はECサイトとかだと、商品発送する先の住所とか、名前とかクレジットカードとかの情報と紐づけちゃいます。紐づけると、「組み合わせで個人を特定できる情報」になって、個人情報の範囲になっちゃうのです。

※3:見逃されているだけで、しょぴいてやろうと思われればアウト
私も、かなり心当たりがあります。広告文学。
はちゃめちゃに気をつけていますし、絶対にユーザーの不利益にならないようにしようと思っていますし、エシカルに、誠実にやろうと思っています。
ですが、NGの範囲がかなり広くなったので、過去の記載が引っ掛かっているかもしれません。
私の手が後ろに回ったら、ああ、見つかっちゃったんだな、と思ってください。
個人的には、それでもなお、市場が浄化されるのならば素晴らしいことだと思っています。

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