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【大学教員公募・若手向け】重宝される人・煙たがられる人

 しばらく冬の静けさが漂っていたJrec-inにも春が訪れつつあるようで、2024年度採用に向けた公募がちらほらと出てきました。今年こそはと意気込む公募戦士の方、今年からいざ出陣と鼻息荒い若手の方、現所属に辟易として移籍を目論む方など、様々かと思います。今回は、特に若手の同輩向けに、教員公募においてどのような人物が重宝されるのかを記事にしてみます。

 本記事で書く内容は、公募においてしばしば求められる「教育・研究に関する抱負」や、書類審査後の面接で多少なりとも役立つものかと思いますので、他の記事と合わせて参考にしていただければ幸いです。

 当たり前のことですが、若手研究者は「若さ」で満ち溢れているべきです。落ち着いてしまったベテラン研究者に対して、研究や教育に対する情熱をぶつけ、「ああ、自分も昔はこうだったなあ」と思わせてください。通り一遍の研究計画や、独自性に欠ける教育への抱負を語っても何も面白くありません。荒削りで全く問題ないので、下記の点を整理しておきましょう。

①現在の研究をどのように発展させたいのか(将来性)
②どのように研究成果を発信し社会に貢献していきたいのか(社会貢献)
③そのような自分が応募先の大学に所属していることで大学にどのようなメリットがあるのか(大学のメリット)

 特に③は想像以上に重要かと思います。多くの私立大学は、周辺の大学と受験生を取り合っています。あなたがその分野における期待のホープであり、かつその分野が社会的にも重要なものであると認識されているのなら、あなたが大学に所属しているだけでいい宣伝になり、受験生があなたが所属している大学を選ぶ理由になるのです。実際に重要であるかどうかは関係ありません。科研然り、公募然り、研究者は自己アピールのプロでなければなりません。積極的に自分を売り込んでいきましょう。

 教育に関するインパクトは、研究に劣らず重要です。別のいくつかの記事でも指摘しましたが、例えば、

④どのようにアクティヴ・ラーニングを促進していくか
⑤授業中にスマホを使用している学生にどのように対応していくか
⑥ゼミをどのように運営していくか
⑦レベルの低い学生に対してどのように対応するか

 上記の点を軸に、現代風の大学教育のあり方について思いを巡らせておくべきです。私は、あえてスマホを学生に触らせながら、学生が匿名で気軽に質問し意見を言えるアプリを使用して授業を行っています(④・⑤)。公募の模擬授業でもそのような形態の授業を実施しました。審査員の先生方に手元のスマホでQRコードを読み込んでいただき、私の授業ページが表示されるようにしました。授業では学生(先生方)に問いかけ、授業ページ経由で意見を書いていただき、それに応答して講義を進めていきました。インパクトがあったようです。
 ゼミ運営についても、積極的に学生を外に連れ出していくような企画を練っておくと良いでしょう(⑥)。「外」は、企業であれ外国の大学であれ、自分がこれまで築いてきたコネクションに依存します。コネをフル活用し、学生にとって魅力的なプランを立てておくと吉です。また、⑦は大学側(特に低偏差値帯であればあるほど)が気にしています。私立大学は、学生の離学率を下げるのに必死です。授業についていけなくなった学生や出席率の低い学生をどうフォローするかは大きな問題で、若手教員は学生と年齢も近い分、上手な対応が求められるのです。この点についても考えを巡らせておくと良いでしょう。

①〜⑦は、私自身が面接で聞かれたことや課題文で書いたものの抜粋です。他にも色々とネタがありますので、余裕のある方は別の記事をご参照ください。少なくとも、これらを網羅的に考え、自身の研究・教育生活の軸に置いている人はかなり重宝されるはずです。

 逆に、煙たがられる人の特徴は、研究についても教育についても自分のことしか考えていない点です。つまり、あなたの研究が大学や社会にもたらすメリットや、講義に参加する学生目線で物事を考えられない人は、研究・教育双方において魅力がないだけでなく、学内業務においても協調性が欠けると思われやすいのです。この点は大学業界だけでなくどの世界でも同じだと思いますが。
 自分が楽しいからその研究をする、教育は副次的なもの、という本音はわからなくはないですが、人生を左右する公募の場において馬鹿正直である必要はありません。嘘も方便と言いますが、「自分がやりたいから」「教育は苦手」という本音は隠して、なんとか大学目線・学生目線で案を練って行った方が良いでしょう。

 若手の方の中には、次の食い口を探すのに必死な方、(就職が原因で)パートナーとの関係に悩んでいる方など、多くの方がいると思います。悩みや葛藤を抱えながら、上半期の公募では現職の大学教員と戦っていかなければなりません。厳しい戦いが予想されますが、私の記事が少しでもお役に立てることを願っています。
 4月以降、私もまたぐっと忙しくなりそうですので更新頻度は低いままかと思いますが、可能な範囲で有用な情報を発信していきたいと思います。どうもありがとうございました。

 

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