光田寿

単なるミステリ好き。横溝正史、海野十三、結城昌治、法月綸太郎、麻耶雄嵩、殊能将之、飛鳥…

光田寿

単なるミステリ好き。横溝正史、海野十三、結城昌治、法月綸太郎、麻耶雄嵩、殊能将之、飛鳥部勝則、アントニイ・バークリー、エラリー・クイーン、クリスチアナ・ブランドなど。我流筑前煮愛好会会長。 カクヨム→https://kakuyomu.jp/users/mitsuda

最近の記事

手記はいかにして改訂されたか?――法月綸太郎パッチワーク論

法月綸太郎氏の綸太郎シリーズについて、論じる前に、やはり彼が「どこからその参考文献を集めてきたのか?」を示しておく。 『雪密室』 ジョン・ディクスン・カー『白い僧院の殺人』。 エラリー・クイーン『オランダ靴の謎』。 カー風の謎をクイーン風のロジックで解くという、綸太郎シリーズ一作目。 この辺りでは作者は本当に楽しんでパズラーを書いていたのだと思う。 面白みがあまりないという表現はここでは置いておくとして、森博嗣がこの作品が好きだという理由も分かる。 むしろ、文庫版あとがき

    • 飛鳥部勝則『黒と愛』登場人物論&図像学レビュー

      【ネタバレ注意】飛鳥部勝則氏の『黒と愛』のネタバレが含まれています。 【カドサカ信子】 彼女は物語序盤に出てくる霊能力者である。 彼女が倒れたことにより、急遽代役の霊能リポーター役として示門黒が召還される。 「海のことはわからねえ――わかるもんじゃねえ!嵐がくるぜ」 「きっと嵐がくる。わしにはわかるんだ」 「祈るがいい 祈るんだよ。審判の日が近づいている」 「お前さんに言っているんだよ、お若いの。審判の日はすぐそばまで来ているのだ」 (アガサ・クリスティ『そして誰もいなく

      • 西澤保彦『仔羊たちの聖夜』読了

        再読。クリスマスイヴの夜、一人の女がマンション最上階から転落死した。偶然、現場に遭遇したタックとタカチ。状況は自殺だが結婚式を控えた彼女に動機はなかった。ならば殺人か? 事件を調べる二人は五年前にも同じ場所での高校生の飛び降り自殺を知る。 久々の再読本。クリスマス前なのでこれを選んでみた。法では裁かれない嫌悪感を催す邪悪が勢ぞろい。再読して意外だったのは酩酊推理が今回大人締め。どちらかというと章題に現れている「巡礼」通りに、タックとタカチが聞き込みをするという方が多かったと

        • 方丈貴恵『孤島の来訪者』読了

          孤島のクローズド・サークル&特殊設定物。謀殺された幼馴染の復讐を誓い、ターゲットに近づくためテレビ番組制作会社のADとなった竜泉佑樹は、標的の三名とともに無人島でのロケに参加していた。島の名は幽世島―秘祭伝承が残る曰くつきの場所だ。撮影の一方で復讐計画を進めようとした佑樹だったが、あろうことか、自ら手を下す前にターゲットの一人が殺されてしまう。一体何者の仕業なのか? 先にも書いた通り、この「特殊設定」というのが、所謂触れると「ネタバレ」になるので書かない。しかし中盤できちん

        手記はいかにして改訂されたか?――法月綸太郎パッチワーク論

          櫻田智也『蝉かえる』読了

           昆虫好きの青年・エリ沢泉(えりさわせん。「エリ」は「魚」偏に「入」)。彼が解く事件の真相は、いつだって人間の悲しみや愛おしさを秘めていた。  全編ホワイダニット。それでいて最終的に連作として、探偵役の悲哀を帯びる幕引き。 ただ、ブラウン神父や亜愛一郎につづくと書いてあったが、逆説的なものは少なめ。飄々さではどこか金田一耕助を思い浮かべた。  掌編としてのロジックなら、「コマチグモ」、「彼方の甲虫」。探偵役の心理まで踏み込むなら、「ホタル計画」「サブサハラの蠅」が良かった

          櫻田智也『蝉かえる』読了

          相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』読了

           推理作家として難事件を解決してきた香月史郎は、心に傷を負った女性、城塚翡翠と出逢う。彼女は霊媒であり、死者の言葉を伝えることができる。しかし、そこに証拠能力はなく、香月は霊視と論理の力を組み合わせながら、事件に立ち向かう。  やっとこさ手に取って読了。帯の例の言葉通り……という訳では無いが、最終章で語られる、点線までついたある部分がユニークだ。おそらく感の良い人なら、特定の部分には気づくのかもしれないが、そこから先は気付けないと思う。ある種、倒錯的なミステリ。  ただ、

          相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』読了

          大山誠一郎『ワトソン力』読了。

           目立った手柄もないのに、なぜか警視庁捜査一課に所属する和戸宋志。行く先々で起きる難事件はいつも、居合わせた人びとが真相を解き明かす。それは、和戸が謎に直面すると、そばにいる人間の推理力を飛躍的に向上させる特殊能力、「ワトソン力」のおかげだった。  新しい形の連作短編集。美しい雪密室に銃殺という「雪の日の魔術」、一つの手がかりで反転を見せてくれる「探偵台本」、意外な犯人と探偵役が光る「不運な犯人」がベスト。個々の手がかりは目の前にあるのに、それを巧く隠すという技巧も良かった

          大山誠一郎『ワトソン力』読了。

          東野圭吾『沈黙のパレード』読了。

           突然行方不明になった町の人気娘が、数年後に遺体となって発見された。容疑者は、かつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。さらにその男が殺された。祭りのパレード当日、復讐劇はいかにして遂げられたのか。  東野版、某有名古典。謎が明かされていくについて、事件にかかわった人々の心情が明らかにされていく様は、いつもの東野節。 フーダニット、ハウダニット、ホワイダニットについては最初辺りから想像がつくが、その先に待つものとは?  先で

          東野圭吾『沈黙のパレード』読了。

          白井智之『名探偵のはらわた』読了。

          地獄から蘇り人鬼と化した現実の殺人鬼(作中では名前が多少変えられているが)と、名探偵の対決。猟奇殺人犯、毒殺魔、大量殺人犯にロジックを駆使した、名探偵が立ち向かう。 言うならば国内版「切り裂きジャック対シャーロック・ホームズ」の様な作品。だが、そこは白井節全開。グロ要素は控えめだが、この世界観でしか出来ないヘンテコロジックを堪能できる。 ロジックの分厚さで言えば、前に読了した『おやすみ人面瘡』に分が上がるが、エンタメ性で言えばこちら。 ラストも白井作品には珍しい(?)、華

          白井智之『名探偵のはらわた』読了。

          鳥飼否宇「幽霊トンネルの怪」(密室と奇蹟 J.D.カー生誕百周年記念アンソロジー収録)読了。

          綾鹿市シリーズ。カーのマーチ大佐物(『不可能犯罪捜査課』)のオマージュである。謎解きには(ある程度の)特殊知識が必要だが、消えた幽霊自動車の謎は早々と分かる。問題はその先の人間関係のいざこざ。怖いです。 【ネタバレ注意】  トンネル内の非常駐車帯というのは、早い時点で読者の目に触れているので分かるだろう。問題は、その先。犯人は何故そのトリックを使ったのか? という部分と人間関係のいざこざが難しい。  しかし共犯者がいたからこそこの不可能犯罪が成立したというのは、やはり苦

          鳥飼否宇「幽霊トンネルの怪」(密室と奇蹟 J.D.カー生誕百周年記念アンソロジー収録)読了。

          横溝正史『夜歩く』読了

          再読。仙石直記と探偵小説家の私の二人は酒を飲みながらキャバレー『花』での事件を振り返っていた。古神家の娘、八千代は去年の十月三日。キャバレー花で芸術家・蜂屋小市を銃撃した。これが妖異と邪智、血族の呪いの始まりだった。 二十年以上前に読んだので、良い再読になった。犯人は覚えていたが、その犯人を決定づける、金田一耕助の推理の前提など完全に忘れていたので、感心させられながら読んだ。二人の障害を持った男、首無し死体、そして第二部に入ってからの岡山県で起こる一族のいざこざ。実に横溝だ

          横溝正史『夜歩く』読了

          道尾秀介『骸の爪』読了。

           ホラー作家の道尾は、滋賀県の山間にある仏所・瑞祥房を取材に訪れた。房主と弟子たちが仏像制作に勤しむ工房を見学した後、そのままそこに宿泊することになった道尾だが、夜中に様々な怪異に遭遇する。20年前に行方不明になった仏師が最後に彫ったという千手観音が怪しく笑うのを目撃し、“……マリ……マリ……”という不気味な声を聞き、さらに――その夜撮影した写真を現像してみると、仏像の頭から血のようなものが流れ出ているのが写っていたのだ。道尾は心霊現象を研究する友人・真備とその助手・北見を伴

          道尾秀介『骸の爪』読了。

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          冷やし中華。

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