大山誠一郎『ワトソン力』読了。

 目立った手柄もないのに、なぜか警視庁捜査一課に所属する和戸宋志。行く先々で起きる難事件はいつも、居合わせた人びとが真相を解き明かす。それは、和戸が謎に直面すると、そばにいる人間の推理力を飛躍的に向上させる特殊能力、「ワトソン力」のおかげだった。

 新しい形の連作短編集。美しい雪密室に銃殺という「雪の日の魔術」、一つの手がかりで反転を見せてくれる「探偵台本」、意外な犯人と探偵役が光る「不運な犯人」がベスト。個々の手がかりは目の前にあるのに、それを巧く隠すという技巧も良かった。

 インタールードの終わりも、連作式短編として良い。「これこれ、こういうロジックが読みたかったんだよ!」というのを堪能した。また大山作品によくある、偶然の多様が今回は無かったのも好感が持てた。



【ネタバレ】

「赤い十字架」のダイイングメッセージと見えたのは? というの、トリックを他のトリックで隠すというミスリードは「理由ありの密室」にも使っていた。


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