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職場のメンタルヘルス対応はなぜ難しい?(後半)

前回の「職場のメンタルヘルス対応はなぜ難しい?」という記事で

会社としてメンタルヘルスを

「医療的」な視点から、

「業務的」な視点を持つことが大切とお伝えしました。


今回はそれぞれの視点について具体的にみていきます。


まず医療的な視点とは、医療の考えに基づく

福利厚生的な健康管理のことです。


例えば、幻聴の症状を持つ従業員が

これまでのようなパフォーマンスは出せない状態だけれど、

お休みすることなく継続した出勤を希望しているとします。


上司や人事担当者、同僚は病気である

その従業員の希望にどうにか応えようとして、

これまでになかった余分な労力が必要になることは

容易に想像できるのではないでしょうか。


結果として部署や会社全体の生産性が下がるとしても、

その従業員のためには「仕方ない」と考えて、

部分最適化が発生します。


こうした個別にフォローする対応は、

あくまでも個人の希望に基づく支援であり

やらないよりもやった方がいいという

福利厚生的な健康管理となります。


一方、業務的な視点とは、ビジネスの考えに基づく

業務運営のための健康管理のことです。


業務的な視点では、労務管理の観点から問題を捉えます。


本来、会社は営利を目的とした組織です。

そのため、業務に支障がない労働力の確保をするために

全体の最適化が必要です。


大前提として「職場は働く場所」です。

労働契約に基づき、

会社は従業員に賃金を支払うかわりに、

従業員は定められた労務提供します。


先に述べた医療的な視点では、

病気にフォーカスした対応を取ってしまいがちです。

そうすると、医学的には素人である上司や人事担当者などが

病気が悪化しないように過度な配慮をしようとすると

業務上での問題解決をすることが難しくなります。


業務的な視点では

・勤務状況が悪い

・周囲とのトラブルが多い

という客観的事実をもとに、

「病気」を改善しようとするのではなく

労働契約上の「通常業務」ができているかどうか

という視点で問題を整理します。


例えば、

・業務効率や質、生産性に問題はない

・勤務態度や勤怠に関して職場のルールである就業規則や服務規律を守っている

・働くことで健康上の問題は生じない(悪化しない)

という視点を持つことで

医学的な専門知識を持っていない上司や人事担当者でも

自分たちの裁量で問題の解決をしやすくなるのではないでしょうか。


会社が求める通常業務が提供できないと判断した際には

個人の希望の基づく支援をする部分の最適化ではなく

・通常業務ができるまで休養していただくこと

もしくは

・労働契約に立ち返って見直す(職種や処遇の変更)

といった全体最適化をすることがポイントです。

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