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アート鑑賞の醍醐味とは?_アートエデュテイメント#07

アートエデュテイメントについて、主にビジネスを熱心に進められている方々を読者として想定してお話ししてきています。
 

ミュシャ展


先日、地元八王子で開催の『ミュシャ展』に、友人と行ってきました。


会場は大盛況で、「多摩地区にもこんなにアートファンの方がいるんだ…」と勝手に感激。内容も素晴らしくて、これはもう色々と感想を交換したいと、連れの様子をチラ見。すると、私以上にじっくりと鑑賞していらして、これは途中でお声がけするのも悪いと思い、コメントをお聴きするのは、後ほど場所を変えて、お茶でもしながらということにしました。
 
〝おちゃけ(お酒)〟もいただきながらの振り返りでの会話はこんな感じ。

私「いやぁ~、本当に凄かったね」
友「うんうん、感激したよ」
私「なんかさ、美人の概念を作ったって感じがしたなぁ」
友「歳とってからの活動が半端なくて尊敬しちゃう」
私「アールヌーボーって生々しい感じで、色気も出てくるよね」
友「アメリカに行って支援者募るなんて、ファンドレインジングの先駆けだよ」
私「大衆が好むところを確信もってやってるなぁ」
友「祖国のために無償で奉仕できちゃうところ、偉大だわ」

ん? 何か全然かみ合っていない? 

年寄り夫婦の会話みたいなやり取りですよね。でも、これが、全く持って面白いのです。


正解はないけど引き出しは多くて良い


「美術鑑賞ってどうすればよいですか?」

アートに関心を持たれた方が最初に抱く「疑問」だと思いますが、回答には大きく二つの系統があると思っています。

一つ目は、《〇〇美術の鑑賞法》《誰でもできる作品の見方》…的なご指南系。なるほどなぁと思うことが多いのですが、鑑賞する際には、何かしらスキルを身につけないとなかなか楽しめないのかもと、心配になってきたりもします。
二つ目は、《先入観を持たずに素直に向き合う》《感じたように見ればよい》…的な伝道師系お気楽に鑑賞できそうな言い方なのですが、実はこれが結構ハードルが高い。そもそも自分が鑑賞に慣れてないのに、〝そのまま観れば良い〟と言われても途方に暮れちゃいますよね。

まぁ、どちらが正解かという話ではなく、どちらも鑑賞の本質を現しているということなのだと思いますが、そうすると「じゃぁどうすればよいの?」ってことになっちゃいますね。

「美術鑑賞」を意味する英語は"art appreciation“これが私としては一番しっくりする「意味づけ」です。"Appreciation”を逆引きすると「感謝」が日本語訳。作品を通じて価値や尊敬、あるいはつながりや、孤独等々、何らかのものを受けとったことへの「感謝」の気持ちが生まれることが、「アート鑑賞の醍醐味」なのかなと。

そのためには知識は多くても良いし、素の自分で向き合う姿勢も大事なのだと思います。鑑賞のアプローチ方法、言い換えると感謝が芽生える「引き出し」を自分の中に多く持つほど、鑑賞が面白く豊かな時間になっていくのではないでしょうか
 

他の人に「引き出し」を増やしてもらう


ということで、冒頭の友人との鑑賞体験の話に戻るわけです。私はもっぱら作品の(特に美女?)の描写を中心に「いやぁいいもの見ました」と感謝していて、友人は作者の歩んできた道のりを知って「生き様が素晴らしいわ」と感謝しているという感じだったわけですね。

「引き出し」の数を増やすのは、自分一人でコツコツと努力するだけでなく(まぁその過程も結構楽しいのですが)、こうやって誰かと一緒に鑑賞して、感想を共有することで、楽しく簡単に?できちゃうのが、アートエデュテイメントなのです。

多様な視点を身に着ける! どうです、ビジネスセンスを磨くのにうってつけのような気がしてきませんか?(笑)


<筆者紹介>
臼井 清(うすい きよし)
株式会社 美術出版エデュケーショナル 教育研修支援事業プロデューサー
合同会社 志事創業社 代表 事業開発アーティスト
<プロフィール>
セイコーエプソン入社後、国内や台湾、英国、ドイツでマーケティングと人材資源管理(HRM)を中心に多くの経験を積む。2014年「人生を豊かにするチャレンジ」を応援するコンサルティング会社 志事創業社(しごとそうぎょうしゃ)を設立。各種研修・セミナーのプロデュース、ファシリテーション、顧客開拓マーケティング、企画運営などを手掛ける。美術出版エデュケーショナルの教育研修支援事業プロデューサーとして、アートのビジネスシーンでの活用も推進中。日経BP総研講師、丸の内プラチナ大学講師、(公財)パブリックリソース財団シニアフェロー。アートナビゲーター1級。


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