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創造性を発揮しやすい「場」とは?_アートエデュテイメント#06


 人生を豊かにしてくれる“アートエデュテイメント”を支える土台、「創造性」は、私たち誰もが持っている能力であることを、これまで繰り返し強調してきました。

 創造性は私たち人間を特徴づける大きな資質の一つです。チャットGPTに代表される昨今の著しいAIの進化も、まだまだ人間の創造性には及ばない…のかどうかはだいぶ怪しくなってきた気もしますが、ともかく創造性が人間に備わっている事は間違いありません。

 一方で、この創造性を発揮しにくい状況も、周りからの影響や私たち自らが生み出している事が、往々にしてあります。
今回は、創造性を発揮しやすい「場」をどうやって生み出していくのか、ワークショップの場づくりを具体例として考えてみたいと思います。
 

ワークショップって何?


 こちらをご覧になっている皆様は、「ワークショップ」という言葉はよくご存じだと思いますが、馴染みの薄い方もいるかもしれないので、少しだけ説明を加えておきましょう。早速、話題のチャットGPTに聞いてみましょう。

《ワークショップとは、特定のテーマについて、参加者が集まってアイデアを出し合ったり、実際に手を動かして何かを作ったりするイベントやプログラムのことを指します。一般的には、グループワークやディスカッションを中心に行われ、参加者同士で情報や知識を共有し、問題解決や創造的なアイデアの発掘を目的としています。》

OpenAI ChatGPT


 おお! まずまずのお答えですね。「創造的」なんて言葉も使われていますが、複数の参加者が集まってコミュニケーションを重ねることで、「個人の想像(創造)」を超えた、何かしらの新しい気付きや発見を得られることが多いという、ワークショップのイメージがわいてきます。

 ワークショップ開催のポイントも、この際チャットGPTに尋ねてみましょう。

ワークショップを開催する際には、以下の点に注意することが重要です。
1.目的を明確にする…
2.参加者をターゲットにする… 
3.適切な場所を選ぶ…
4.時間の配分を考える…
5.アクティビティを用意する…
6.フィードバックを収集する…
これらの点に注意してワークショップを開催することで、参加者が有意義な経験を得られるようなプログラムを提供することができます。

OpenAI ChatGPT


 言い回しの不思議な箇所含めて、正直、創造性をあまり刺激しない回答ですね。

 この辺で、〝生身〟の自分がこれまでの体験から、ぜひ共有しておきたいと思うポイントを、ワークショップのスタート地点、アイスブレークのプロセスに絞って挙げてみたいと思います。

創造性を発揮しやすい「場」づくりのポイント

1.期待値を外す


 参加者を迎えるに当たり、最初に意識することは、「期待値を外す」ことです。これは「期待を上回る」ことを意図しているのではなく、文字通り「外す」ことを指します。

 ワークショップで「今日、期待することは何ですか?」といった質問を冒頭にするケースは多いと思いますが、この期待値というのが実は「創造性」の発揮を阻む一つの大きな要因です。

 第3回で〈思い込み〉の話を書きましたが、「期待」はこの思い込みと同じ性質のものだからです。「このワークショップでは、こういう気付きや発見があるに違いない、あって欲しい」というマインドセットは、外に向けた感度を下げている状態です。最初から、欲しい答えを絞っているので、実はそれ以外の〝情報〟を受け入れにくくなっているのです。

 「想像もしていなかった発見を得る」には、既に持っている「期待」を外して、真っ白なノートを自分の中に用意しておくことがお薦めです。いわゆる、「アンラーニング」の機会を、最初のステップとして設けるということですね。

先ほどの例で言うと、ワークショップの冒頭に「今日の期待値」を付箋紙などに一旦書いてもらい、全員でそれを破いて捨てるなどといった、「ワーク」にしてみるのが良いですね。
 

2.身体を動かす


 ワークショップと聞くと、主に頭を使うイメージですが、身体を動かすということを最初の段階で実施することも、「創造性」を発揮するために有効です。

 身体を動かすことで、自身に備わっている様々な「器官」が、まさに動き出します。五感を開くため準備運動ですね。こり固まった頭や、緊張している心をほぐす効果もあります。
 
 何かになりきってポーズをとってみるとか、今の気持ちを簡単な動作であらわすとか、その場で事前の準備もなくできる方法は、工夫次第でいくつでも考えられるでしょう。また、参加者皆さんが身体を動かしていると「場」の雰囲気が柔らかくなってくるという、副次的効果も得られます。
 

3.フラットな関係を作る


 創造性を発揮しやすい「場」には、誰もが発言しやすい(無言でいることも含めて)雰囲気が必ずあります。最近流行の言葉で言うなら、「心理的安全性」が確保されている状態があるということですね。この雰囲気を、早い段階でつくることができるにこしたことはありません。

「大好きなおにぎりの具が一緒な人通しで、グループを作ってください」
「(会場の)窓から見える景色で、最初に気になったものは何ですか」

 これまでの経歴や、知識などが、全くといって関係しない、一見無意味な問いに参加者全員が取り組むといったワークが適しています。

「へぇ~。そんなことを考える人なんだ」

 相手のコメントの面白さを感じたり、自分の意見が尊重(珍重?)されたりすることで、お互いの立場がフラットになっていきます。

まとめ

 何か、ワークショップのアイスブレイクの進め方みたいな話になってきましたが、創造性を発揮できる「場」とは、どんな「場」なのかを具体的にイメージしてもらえたら嬉しいです。
 
そうそう、チャットGPTにこんな問いを投げかけてみました。 

「あなたに創造性はありますか?」
 
回答はぜひ、ご自身で「創造」してみてください(笑)。


<筆者紹介>
臼井 清(うすい きよし)
株式会社 美術出版エデュケーショナル 教育研修支援事業プロデューサー
合同会社 志事創業社 代表 事業開発アーティスト
<プロフィール>
セイコーエプソン入社後、国内や台湾、英国、ドイツでマーケティングと人材資源管理(HRM)を中心に多くの経験を積む。2014年「人生を豊かにするチャレンジ」を応援するコンサルティング会社 志事創業社(しごとそうぎょうしゃ)を設立。各種研修・セミナーのプロデュース、ファシリテーション、顧客開拓マーケティング、企画運営などを手掛ける。美術出版エデュケーショナルの教育研修支援事業プロデューサーとして、アートのビジネスシーンでの活用も推進中。日経BP総研講師、丸の内プラチナ大学講師、(公財)パブリックリソース財団シニアフェロー。アートナビゲーター1級。


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