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仕事の基礎を教えてくれた人

新卒で入社して出会った上司がとても良い人だった。
面接の時から変わった人だなぁと思った事を覚えている。
当時、面接で上司から言われた言葉は「自分は教えるのが上手い。ちゃんと最初から教育するから心配しないで。」だった。
普通自分で「教えるのが上手い」とか言うかと思ったが、実際に入社して上司の下で働いてみると、本当に指導が上手い人だった。
嘘じゃなかった事に驚いた。
今まで学校の先生など「教える」を生業にしている人にはお世話になってきたが、ダントツでこの上司が教えるのが上手かったと思う。
まず、例え話が本当に分かりやすい。
私が分かるものに例えて説明をしてくれるのが、とても助かった。
システム開発の研修時には図を書きながら、全てエクセルに例えて説明をしてくれた。
ちんぷんかんぷんだった物が、するすると自分の中に入っていく感覚は今も覚えている。

入社した部署の新卒は私ひとりだけだったので、上司とのマンツーマンでの研修だった。
緊張していた私に、「とりあえず今は会社に来ることが大事で少しずつ仕事を覚えて言ったらいいよ」と声をかけてくれた事を覚えている。
多分あまりにも緊張しすぎた私を見て、気を遣わせしまったのだと思う。
物覚えがそこまで良くない私に根気よく丁寧に指導してくれた。

上司はひと通り説明した後に必ず私が考える時間をくれた。
自分で考えて答えを出す練習をさせてくれていたのかもしれない。
自分なりの答えが出たあとは上司との答え合わせの時間。
別に間違った事を言っても、否定はされない。
「その考えもいいね。こんなのもあるよ。」という感じ。
社会人として働いていて、こんな表現は間違っていると思うが、先生と生徒みたいな関係性だった。

良い関係を築けていたと思う。
仕事量は多かったが、毎日それなりに楽しかった。
早く上司みたいになりたいと思って、上司の真似をしていた。
仕事だけではなく、社内での立ち振る舞いなど、出来る範囲で真似はしていた。
現場に呼ばれた時は私は呼ばれていないのに、ついて行き、仕事を教えてもらった。
よく社長から「お前は金魚のフンのように付いて回ってるなぁ」と言われた。

当時ひとつ後悔している事があると言えば、自分がひとりでできる仕事が増えていき、仕事量が増えた時に助けをもっと求めるべきだった事だ。
早く一人前になりたいという気持ちが大きすぎて、もっと仕事をやらなければという気持ちになり、適切な場面で助けを求められなかった。
心のどこかで「私の状況を察して欲しい」という気持ちもあったかもしれない。
自分で自分の気持ちを伝えないと、相手には伝わらないという事を理解していなかった。
なんでもひとりで解決しようとした所は反省している。
もしあの時、上司に相談していれば…なんて事を考えてしまう事が今でもある。

結局色々あってこの会社を辞めることにはなったが、あの上司は今でも私が将来の目標にしている人のひとりだ。
この会社を退職した後に、1冊の本を読む機会があった。

「3年間、自分を捨てて真似をして、どうしても真似できなかったところが、君の個性だから」という内容がつらつらと書かれている本だった。
この本を読んだ時に、こうなりたい、真似をしたいと思えた人に最初の会社で出会えた事は幸せな事だったということに気づいた。
仕事に対する自分の価値観は最初の会社の上司のおかげで形成されたと思う。

あの人の下で働けた事はとても運が良かった。
自分が仕事に対して前向きになれたのは、上司の優しさがあったからだと思う。
今更考えても仕方ないが、もう少しあの人の下で学びたかった。
それぐらい私に与えてくれた影響が大きい上司だった。

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