【NYY】Montas,Effross強襲への所感
TDL期限まで30時間ほどとなった深夜1時44分,シカゴ・カブスから中継ぎ投手のScott Effrossを獲得。対価として傘下7位の先発右腕Hayden Wesneskiを放出。
そして早朝5時31分,オークランド・アスレチックスから市場の目玉投手であるFrankie Montasと,今季不振のLou Trivinoを抱き合わせで獲得。対価としてKen Waldichuk(傘下5位)を筆頭に計4名のプロスペクトを放出。
今回のnoteでは,本日発生した2件のトレードについてまとめたいと思います。
また,宣伝ですが本日(8/2火)の夜9時よりヤンキースラジオを緊急開催予定!Twitterスペース上にて実施しますので,よければ僕のTwitterアカウントからご視聴ください。
(1)待望のエース級投手を補強!
まず取り上げたいのが今季のTDLでTierⅠの先発投手とされていたFrankie Montas(RHP)の獲得でしょうか。同Tier帯のCastilloがSEA入りしたこともあり,Montas獲得に猛プッシュをかけていたとの事前報道もありましたよね。ただ,SFのRodonが市場に出たタイミングで「Rodon獲得もあるか…?」と思っていたりもしました。そんな矢先の大きなトレード成立は,停滞していたMLBのトレード戦線を活発化させるには十分すぎる出来事でしたね。
Montasのスペックとしては最速100mphに到達する4シームと,マネーピッチのSplitterで奪三振を生み出しています。そこにRunValueに優れるCutter&Sliderを織り交ぜるなど,相手に的を絞らせない投球も魅力。高い割合でSinkerも投じますが,こちらはSplitter以上に多くのゴロボールを生み出せている印象。近年のNYYは,移籍後の投手に対して配球割合の大幅変更を行うことがしばしばあるため,MontasにもあえてSinkerを投じさせないなどのプランがあるかもしれません。
過去にOAKのエースに対してそういった行為をしたがために大失敗した経緯があるため,個人的にはそのままでいってほしいところ。。。
Montas獲得の利点として,優勝候補であるHOUへの対戦相性が挙げられるかもしれません。キャリアを通して13先発し8勝を挙げるなど,NYYにとってのMontas獲得のエッセンスはここにあるでしょうか。
そして契約自体も今季5M程度であることに加え,FAも2023年オフというのが魅力。Taillonが今季FAになることを考慮すればこの上ない戦力維持に繋がります。もしかすれば今オフにエクステンションを結ぶヴィジョンすらあるかもしれませんね。
ちなみにMontas獲得後,Severinoが60-day ILに移動しています。
(2)今季不振のビッグネーム
OAKとのDealにおいて忘れてはいけないのがLou Trivino(RHP)を抱き合わせで獲得した事実。2018年にデビューすると平均98mphの速球に,代名詞のCutterを織り交ぜて奪三振を量産。今季は曲りの大きなSliderも投じていますが,39試合でERA6.47 WHIP1.88 とここまで苦戦。特に対LHBには被OPS1.072という悩ましいスタッツが見えます。今季で31歳になることもあり,各球種の平均球速にも衰えが見られる印象。ただし,wOBA.390に対してxwOBA.322と乖離が大きいのも気になるところ。K%=28.7という点ではNYYのニーズである「奪三振能力を備えた中継ぎ」を満たすともいえます。
ただ,Trivinoが移籍したのは近年数多の中継ぎ改造実績を有するNYY。昨年トレードにて獲得のClay HolmesやWandy Peraltaが,移籍後に投球スタイルに調整を加えて飛躍を遂げたことは言うまでもありません。
今季年俸が3Mであることに加え,FAも2024年オフということも考えると,もしNYYがTrivino再起に成功することが叶えば,より強力なブルペンを数年保てるかもしれませんね。
ヤンキースファンとしては2018年のワイルドカードゲームで対峙したのが思い出。あの時の支配力を取り戻せるでしょうか。
(3)変則セットアッパーを補充
Montas獲得によって話題性が薄れましたが,CHCのセットアッパーであるScott Effross(RHP)を陣容に加えたことも触れずにはいられません。
Effrossは昨季デビューした28歳の変則右腕で,今季はここまで47試合に登板しERA2.66 K/BB=4.55を記録している期待星。Sinker&Sliderのコンビネーションで打者を翻弄するスタイルはNYYに至極フィットすると予想。
現在,変則要員のMiguel Castroが60-day IL入りしていることも考えるとこのトレード自体は盤石であるものの,噂の少なかったEffross獲得は流石に驚き。
年齢に対してデビューは遅く,FAは2027年オフと5年半もコントローラブルな点は投球内容以上に価値のあるもの。しかもマイナーオプションが残っているため,プレーオフに向けた陣容調整のためにアクティブロスター外に置ける汎用性もGreat。
後で触れるところでもありますが,Wesneskiは傘下でも屈指で好きなSPプロスペクトだったので相当ショックではあります。
(4)投手有望株を一挙放出
先のBenintendi獲得と同様,本日発生した2件のトレードにおいても投手プロスペクトの放出がほとんどを占めました。
CHCに放出されたHayden Wesneskiは2019年にドラフト指名を受けた先発右腕であり,シャットアウト後の昨季にはHigh-Aで支配力を見せつけ,シーズン終盤までにAAAまで昇格。
90mph後半のフォーシームの他,トレンドの”Sweeper” Sliderの威力はNYY傘下でも屈指であり,コマンドも現時点では苦にしていない印象。見た目どおりタフなポテンシャルを持ち合わせており,先発でなくてもロングリリーフなど適材適所で輝きを放てるのではないでしょうか。
恐らく今シーズン中にもMLB昇格があるのではと考えています。今回放出された選手の中では一番好きな選手。
OAKに放出した中,というより今TDLでNYYが放出した中では最も高いValueを誇るのが左腕のKen Waldichukでしょう。打者に近い位置からリリースされる投球フォームから,Wesneski同様に”Sweeper” Slider,FV65とも評されるMAX98mphのフォーシームで奪三振を積み上げています。(今季76.1回で116奪三振)
昨季High-Aにおいて30.2回を投じ自責点0を記録したことでも有名になりましたが,今季も着実に成長。7月に開催されたFuturesGameにも選出。
正直Wesneski放出の段階で「Waldichukはキープ確定や!」と考えていただけに,結構落ち込んでいます。
JP Searsは昨季Rule5プロテクトされたうちの1人であり,今季NYYにてMLBデビュー。先発2登板含め計7登板でERA2.05を記録しています。マネーピッチとまで呼べる直球・変化球はないものの,コマンドや高い総合力を有しており,少なくともMiLBでは敵無し。先発は難しいとしても,Wesneskiのようにロングリリーフなどの起用がメインとなるでしょうかね。顔がイケメン。
ちなみに,昨季FangraphsにてWaldichukやSearsにフォーカスした記事が出ているので参考までに。メカニクス等にも触れていてかなり楽しい内容です。
そして遂に放出されたのがLuis Medina。MAX102mphのフォーシーム,落差のあるCurveとChangeup,3球種全てがプラスピッチに等しいもののコマンドが壊滅的な未完の大器。2020年オフのウィンターリーグにて支配的な投球を披露すると評価も急上昇,昨季までにAA階級まで昇格しています。しかしK/9=10.00以上を見せる反面,常にBB/9=5.00以上を記録するなど,課題は明らか。そもそもいつまでも先発にこだわって起用しているNYYサイドにも疑問があり,中継ぎであればMLB昇格も容易いのでは?いずれにせよ今TDLで放出されることによる環境の変化でステップアップを望めるのではと思っていました。
リスクの高さに見合う分の天井の高さを秘めており,もしOAKがコマンド矯正に成功し,先発で大成させることができれば球界Top15投手に君臨しても驚きはありません。
そして最後の内野手Cooper Bowmanの名前が挙がったときは「やられた~!」と感じました。2021年ドラフトで指名されたばかりであるものの,High-Aでは90試合で8HR,BB%=15.1%,35SBを記録するなどオールラウンドな活躍。NYY傘下の中でもフロアーが高く,OAK側がMedinaのリスクを相殺・軽減するためにSears-Bowmanを選択したと言われれば納得。昨年のJosh Smithほどではないにせよ,選手としての総合力を見ても数年後のMLB到達の公算は高いかなと思います。
ちなみに今TDLにてNYYが放出している唯一の野手になります。
(5)総括
今シーズンが進む中での課題であった「左翼手」「先発2番手」「中継ぎ」は市場のTopTierを集めることで目的達成。特に争奪戦が展開されていたMontasを,オーバーペイとは見えない対価で獲得できたことは👏。ただ,Trivinoの抱き合わせによって多少なりアセットの差し替えがあったのかもしれませんね。
また,プロスペクトに目を向ければ,放出濃厚と思われていたOswald Perazaは今のところ動きがなく,その他Everson Pereiraといった野手陣には手を付けていません。これはNYY野手陣がリスクを内包していることもあったでしょうが,MLBの正遊撃手であるIKFの不振や,傘下外野手デプスが薄いことは無関係ではないでしょう。
反対に投手プロスペクトを7枚も放出した点は理解できる反面,Yoendrys GomezやDeivi Garcia,Luis Gilといった自分の趣向に合わない投手プロスペクトが残っていく様はもはや笑える。Will Warrenに全てを託すよ😠
(6)今後の展開
未だJoey Galloや,ネタ抜きにMiguel Andujarの動きがありません。もう1-2個,なんらかの取引が行われても驚きはないでしょう。
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