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【卒制】高校卒業間近で察した恋心『燻し銀の花』0~3章まで更新!
☝️0章~2章は こちら
🌸燻し銀の花 ――『揺るぎなき夢』の大切さ――
3章 新天地の巨人・逆ラブコール
それは唐突に訪れた。
高校生活で最後の席替えだった。窓側から廊下側の新天地へと机を腹の前に抱えて移動する。席替え後の新しい座席の位置をボクが勝手に「新天地」と呼んでいた。
窓辺の日向は、教室のほとんどが陽の光で滲んでいた。そこから移動した新天地は廊下側の日陰だった。
照明灯でほど良く翳っていて目に優しい。薄明のベールが教室全体に掛かっていて、周りを見渡しやすかった。
あの子は何処に行ったのだろう。席がシャッフルして行く様子を眺めていた。できあがってきた新天地の地図を読んでいた。
前後左右の隣の席が埋まった。
「クラフトくん、よろしくね」
話しかけてきたのは、ボクの席の前に机を置いた女子だった。今までは遠目に見ていたから、あまり話を交わすことのなかったクラスメイトだった。不思議ちゃんキャラのイメージがある。「よろしく」と返してみた。
いつの間にか新天地の地図ができあがったようだ。
「こしたかいね」
少し高いね、いや腰高いね、と言ってくれたのだろう。ココロが浮かれていて、聞こえる言葉が「ひらがな」で耳に入ってくる。
「私の胸と同じ高さ」
女子が多い教室で、胸を見ると、そればかりに目が行く。だから胸は見ない。たとえ、誘っているとしても。
「並んでみたらいいんじゃない」
クラスメイトの女子が口を挟んだ。
「ナラブ」
素っ頓狂で弱弱しい声が喉元から飛び出した。
身長差が凄い。前隣の女子がボクの横に来た。わきの匂いが心配になった。冷や汗も嗅がれたくない。腰を揺らすだけで前隣の女子とぶつかりそうだ。動けない。それとも動いていいのか。「ボディタッチをして」という合図だろうか。
「見て」
ボクの視線に噛みついて、視界を引きずり下ろしてきた。
勝手に飛び込んできた両胸の膨らみと、自分の制服のズボンの横から見上げている彼女の顔の両方が随分と下にある。
思っていたよりもボクは巨人だった。
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