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「一生の戦友」▶️#2000字のドラマに挑戦。

💠このショートショートは、高校生時代の実話です。いや、今もなお続く実話です。💠

 ボクの通っていた高校は、まるで専門学校みたいな総合高校。6学科ある中で、ボクらはデザイン科だった。デザイナーを目指す高校生は9割女子で、男子は5人しかいなかった。ボクの提案で、その5人で集まって話をしてみた出逢いの日。無口なシャイボーイを一瞬で仲間外れにするほどボクらは残酷だったけれど、イケメンエリート2人と残り物2人の会話は不思議と盛り上がったんだ。

 ボクらは残り物2人のグループに属していた。彼は生粋のオタクらしい。ポケモンもやっていた。ボクと唯一の共通趣味だった。共通趣味の話題は尽きることなく、他人とは思えないほどに2人とも壁を取っ払い、くっちゃべった。女子同士の他愛もない会話が春の蝉のように教室中を占拠する中、男子5人は居場所を求めて、よく、あの日分かれたグループで集まった。ボクは動かなかったけれど、彼の方からボクの机まで話しに来てくれた。

 もう一人との出逢いはミックスホームルームになった次の日のことだった。ミックスホームルームとは、高校1年生のときだけは学科をシャッフルして普通科のように男女半々のバランスでクラスメイトを築こうという学校の風習だ。ボクは抜けているところがあったから、2日目にして早速ド派手に席を間違えた。他人の机のフックに荷物を引っ掛けて、いつものようにあのオタクとくっちゃべっていると、机の主は「これ君の❓️」とボクの荷物を指に掛けて、なぜか一発正解。勘違いも甚だしく怒り気味で「そうだよ💢」と答えたら、机の主は「そうなのかよ、お前の席あっちじゃないのか❓️」と、さらに正解。「あ、そういえば早くも金曜にはじめての席替えしたっけ❓️」とトボけるボクを大袈裟に笑って許してくれた。机の主と、オタクとボクはあれから一生の戦友。

 放課後、他クラスに集まってポケモンバトルに明け暮れたり、異なる対戦ゲームで切磋琢磨したり、駅伝という伝統行事の最中にゲームで対戦をして、優等生だったボクも巻き添えで叱られたり、机の主とオタクとボクは今でも一生の戦友。コロナ禍に見舞われた就職氷河期でも、みんな最低1回は職に就いて、苦しいときも楽しいときも共にLINEをして伝え合った。LINEの中に彼らがいた。それでも続かないのが現実で、とうとうみんな来年には無職になろうとしている。

 この前も集まって一緒に寝泊まりをした仲だ。皿洗いをしている机の主の、その丸まった背中と素早い手際は父親の理想像さながらで、当時優等生で勉強熱心だったボクよりも遥かに物知りなオタクは嫌な仕事もそれなりに楽しめているようだ。23歳という何者にでもなれる黄金の時代でも、これからますます加速していく未来でも、机の主とオタクとボクは一生の戦友。いや、家族みたいなものだ。

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