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時にはシネフィルな夜「エレクション1・2」

ちょっとした流れで、好きなジョニー・トー監督の香港映画が観たくなって、未見だった2作目を観るため、近頃の自分のボケぶりに我ながら呆れつつある慎重派のオレは確認のためにとネトフリで最初の1から続けて観た。

最近、友人に薦められた配信の「ナルコス」シリーズなどで、中南米の麻薬カルテルの歴史的な興亡についてもかなり明るくなったけれど、コレは香港における中華マフィアの跡目相続のお話。

基本的に、伝統的な取り決めで後継者は合議制で決められるとの前提が物語の冒頭に紹介されるのだけれど、ソレがすんなりそう決まれば映画にはならないわけで…。

それにしてもお国柄ってのは、反社会な勢力の争いにも現れるのだなあと感心することしきり。

ナルコスなどで描かれる中南米は、その抗争においてもやはりシチリアやフレンチコネクション的なラテン文化にその源流を感じるし、その地縁や血縁をベースにした、理屈よりもそれぞれ個人の情や思いの方が行動原理において優位となるエモーショナルな劇中の多くの言動と熱量は、日本の「仁義なき戦い」のような瀬戸内海沿岸部の輩の気性になんとなく近いような気がする。

個人的にオレは、地中海は欧州の瀬戸内海だと思っているしね。

たとえば、パスタはうどんかラーメンで、ピザはお好み焼き、ヤクザをマフィアに、マツダをフィアットに置き換えれば大して変わりないでしょ? 男は血の気多めで女好きのバクチ好き。往々にして本業より、何かと芸術や音楽、道楽全般に入れあげるしさ。

一方、本作の中華というか香港は、敵味方をどう峻別して操るかの三国志的な深謀遠慮の策からの実力行使(一旦やるとなったらそのやり方はかなりエグいけど…)という、物語を俯瞰した時にキャラの動きに政治的な匂いを濃いめに感じるかな?

さらに続編の2になると(漢字の原題は「和以為貴」と付いてた。聖徳太子かよ?)そこに大陸の公安警察の治安と経済発展のバランス調整という司法側の裏の思惑も絡まってきて、さらに様相が複雑になってくる。

登場人物も多くて、流し見だと整理して理解するのは少し難しいかもだけど、出てくる男優さんたちは誰もクセが強めでかなり魅力的。

コレを見てると、決まりで合議制にしてるからこそ勢力争いでモメてるのは明白なんだから、いっそのこと端から家督相続にしといた方がよくね? なんでルールの方を変えねえの? とすら今の日本人のオレには思えてくるけれど、そこは命よりも古いしきたりや面子の方が大事なのかもね?

下手に古くから互恵的で民主主義的な(今の感覚ではかなり先進的な)ルールを決めていても、その運用方法がマズいと、まったく本末転倒よね…。

この連作を観終えたら、なにか現在の大陸の政治的な風土にもつながるような複雑な思いを抱えてしまい変なテンションになってしまった。

そこで、気分転換をしたくてさらに同監督の「ホワイトバレット」という作品も続けて観たんですけど、コレがまた、かなりとんでもない(やりすぎ)銃撃戦のクライマックスで「マトリックス」以上にオレにはどうやって撮ってるのかまるで想像がつかない問題作。CG合成(それを結論にしたら今や何でもありなんだけど)してるにしてもさ、それはそれでどうも時間の流れ方がおかしい…。

撮影法がわかる人はぜひ教えてください。

それにしても、オレは女っ気に乏しい男ばかり出てくる映画を好む傾向にあるな…。

さらには、ジョニー・トー作品でやたらヤバい役ばかり(ダンテ・ラム監督の作品でも)やってる、オレの好きなニック・チョンが今回調べてみたら自分と同い年とわかって、それもまた少し嬉しい。

在りし日の勢いはさすがにないけれど、まだまだ香港映画は侮り難し…。

https://news.yahoo.co.jp/articles/10c3ff9b2a40630329a3d5b882619c25bd9b039b


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