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読了記録「ペルソナ 三島由紀夫伝」

毎度のオレの書評など、私的で偏狭な自己流解釈の垂れ流しに近いものだとの自覚はあるのですが、今回改めて本書籍を丹念に読んでみて、いろいろと自分の中に新しい発見と認識が生まれました。

そんなこともあってか、再読しようと思った自分を褒めてやりたいです。

あと、昔と違ってオレの本の読み方も少し変わってきたみたいにも。とにかく一気呵成に読み終わることよりも優先すべきは、時間がかかっても懇切丁寧にとね。残された寿命は減る一方だからこそなのか、これまでより一字一句を大事にしてしまいます。もう読み飛ばすなんて能力もエネルギーも時間の余裕も、オレにはないですしね。

言うなれば、若さにまかせて掻っ込んでたくさん食べるよりも、歳相応に少しのものをゆっくり味わう感じ。

まず大きな発見というのは、改めての著者の猪瀬さんに対する高い評価。

まるで松本清張のような、斬新な着眼点と緻密な取材から構成される、3代に渡る官僚の家系と時代の関係が紐解かれます。

三島由紀夫の祖父と暗殺された原敬首相の関係、父と岸信介の因縁など、同時代性という歴史的角度からの資料の収集分析と論考には舌を巻きます。択捉島まで行って資料漁ったり、取材してるんだもの。

そして、もしオレが偉そうにこの書籍の印象を端的にまとめるとしたならば「三島由紀夫の作品と生涯に対する私小説家パースペクティブ解題」とでも題しますかね?

ジャンル的に貧乏くさい四畳半フォークみたいな私小説は嫌いなオレですが、同時に「作家の表現は、個人の経験や見識を決して上回ることはできない」と思ってもいるので、どんなに重厚で絢爛豪華な浪漫主義的な作品も、生み出すモチベーション自体はどうしても私的な衝動にこそ、その源泉があるはずでしょう。

この本を読み終えて、改めて三島さんの初期からの小説群から読んでみるかなと思っています。コレもオレの人生の学び直しの一環かもしれないですけど、それとは別に、今回、この本に付随して思い出したことが1つあります。

二十歳過ぎの頃に観た貴重な裏ビデオのこと。

それは、ポール・シュレイダー監督の映画「ミシマ:ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ 」をどこからか入手して自分のシェアハウスの皆と観た記憶です。

緒形拳主演の豪華な俳優陣による一種の伝記映画ですが、確か当時は遺族の許可が得られず日本非公開になったため、いわゆる海賊版のソフトでしたから、早い話が裏ビデオだったわけです。

そもそもオレはどういう経緯で入手したのかも、ソフト自体もすでに手元にないので判然としませんが、普通に劇映画として大変面白く観た気がします。

当時のアバンギャルドな表現全般に対して理解のあった三島さんの感性や、安田講堂での学生との対話の姿勢とかに触れるたび、好まない文体とか何だかんだ言いながらもオレは、もしかしたら作家として好きなのかもしれません…。

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