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Back to 80s& 90s憧れと希望は雑誌の中に

先日、古書街神田に行ってきました。最近80年代の雑誌に魅了され、さがして読んでいます。
グーグル検索で簡単に情報を得られる便利な近年、出かけるときには困りませんが、なんというか。なんか。ものたりないんです。
それは最近の雑誌などにも共通して思ったのですがすぐ読み終わってしまい、あまり印象に残らないのです。自分の欲しい情報はすぐ手に入りますが、それだけなのです。物足りなさの根幹は何なのか? 私はいったい何を欲しているのか?
ああ。80年代によく読んでいた雑誌のようなポエムチックな見出しだったり煽るようなキャッチコピーを欲しているのだと。


伝説の雑誌 『OLIVE』


”部屋の中、ぬくぬくと。静かに静かに、時をすごしてゆきたい。”
”空と地面、花と緑、大きく背伸び、深呼吸。”
”手作り派なら一度は足を運びたい。”

『雑誌 OLIVE』より


この不思議感覚のキャッチコピー。
商品説明など一切せず、言葉の浮遊感と写真でイメージを伝えるこの独特な言い回し。

ファッションのこと、雑貨のこと、映画の中のインテリアのこと、アンティークのこと、手芸のこと、絵本のこと、おいしいお菓子さんのこと。

ちょっとロマンティックでメルヘンチックな、非現実的で非日常的な世界がたくさん詰まった雑誌の、その不思議な世界観に浸りたくて何度も何度も読みたくなって何回も何回も手に取って見たくなる。
そんな雑誌でした。OLIVEは。


雑誌の歴史 大正から戦前まで


雑誌の歴史を振り返ってみると面白く、誰がその本を編集しているかで内容も大きく違っています。

最初の女性雑誌は国木田独歩が編集長を務めた『婦人画報』が1905年に創刊したのが始まりとされています。

1917年石川武美編集の『主婦の友』創刊や1920年野間清治編集の『婦人倶楽部』創刊など暮らしの知恵や女子教育と良妻賢母の手引き書のような実用雑誌が多くみられます。

1936年に宇野千代が編集長を務めた『スタイル』創刊で和装や洋装のことなどを扱った雑誌が登場します。

また同年洋装のことを扱った『装苑』が文化服装学園の出版局より創刊されます。女性の編集者によってようやく実用誌からファッション誌になっていきます。

今だに発行されている雑誌が実はこんなに古い歴史があったのには驚きます。

雑誌の歴史 戦後からバブル期80年代


60年代になると海外のブランドを紹介する『ハイファッション』や森英恵のブランドを紹介する『流行通信』などハイブランドの雑誌が創刊されるようになります。

70年代に『anan』や『nonno』が創刊されるとデザイナーズブランドやメイク、暮らしや服飾だけの情報ではなく、恋愛や占い、デートや旅行など話題提供の発信源としての地位を確立していきます。

この頃から80年代にかけて女性誌は百花繚乱を迎え赤文字系の『JJ』『vivi』『CanCan』など多くのファッション雑誌が創刊されます。

そして1982年に今までの実用的ファッション雑誌とは違うテイストの雑誌『OLIVE』が創刊されます。
80年代のオリーブは音楽や映画、インテリア、生活雑貨などを扱ったサブカルチャー雑誌の教祖というべき存在でした。


雑誌の歴史 平成バブル崩壊後


90年代になると10代の女性の指向が以前より現実的なものになり、より実用的なファッション誌が多く輩出してきました。

それまで唯一無二のものであった『オリーブ』の立ち位置が曖昧になっていきました。文化や生活全般を題材にするという姿勢は崩さないものの、外国人モデルを起用して、映画を見ているかのような不思議感覚のその雰囲気は薄れ、より地に足のついた実践的な記事が増えていきました。

2000年代にはスローライフのようなコンセプトが強まっていき、丁寧に暮らす雑誌などが増え、オリーブは2003年8月号をもって休刊になりました。


雑誌のブランディング


30年近く発行され、時代の流れと共に多種多様に変化してきたオリーブですが、私の好きなオリーブは、やはり不思議感覚のキャッチコピー、言葉の浮遊感と写真でイメージを伝える独特の雰囲気の80年代の頃のもの。
映画を見ている感覚におちいります。

それもそのはず。83年頃のオリーブの編集を担当していたのは淀川美代子さん。彼女はなんと淀川長治さんの姪っ子さんで幼い頃より叔父の影響をうけ映画と雑誌に囲まれて暮らしていたというではありませんか。
80年代のオリーブが映画のワンシーンのようにキャッチーで独特な言葉遊びと世界観があるのもうなづけます。
雑誌の世界に映画の雰囲気を持ち込んだ彼女の感性に感謝です。


また80年代はサザビーやアフタヌーンティー、リビングプラス、オン・サンディーズ、オレンジハウス、F.O.B COOPなど手頃な値段で手に入る個性的な生活雑貨やさんが現れ始めた時でもありました。
服だけではなく暮らしを自分らしく!という生活をスタイリングする雑誌オリーブはそんな雑貨たちとアンティークをうまくミックスし紹介してくれ、ページをめくるたびワクワクとさせてくれました。


ブロカント307では


映画と音楽と雑誌。好きなものはここから始まったのかもしれません。
そんな理由で今再び、80年代の雑誌に夢中なのです。

本も雑誌もデザイナーやブランディングひとつでこんなにも
印象が違うのだなと思った出来事です。

変わりゆく時代の中で変わってほしくないもの。守っていきたいもの。大事にしていきたいもの。紡いでいきたいもの。
伝説や思い出の中の出来事など残して行けたらと思っております。


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