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ブリティッシュメイド青山店を訪ねて: LAVENHAM-ラベンハム Part 1

みなさん、こんにちは!
ブリティッシュメイドの新人WEBスタッフ、YOKOです。

私がロンドンに暮らしていたころ、生活に馬の存在が近いことがとても新鮮でした。

例えば、街を歩いていると、スコットランドヤードことロンドン警視庁の騎馬警察隊が2人1組でパトロールをしているのによく遭遇しました。どこからともなくポック、ポックと蹄の音が聞こえてきて、大きな馬に乗った警官が颯爽と現れます。近くで見るとその大きさに圧倒されますが、馬はよく訓練されているのでとても穏やか。警官もニコニコしていてジェントルな印象です。ロンドンらしい日常の光景と言えます。

観光地でお馴染みバッキンガム宮殿近くの Horse Guards(ホース・ガーズ)では、騎兵隊の交代式を見ることができます。ここにいる馬たちは女王陛下にお仕えしているからでしょうか、濃茶や黒の毛並みが美しく、街で見かけるパトロール馬よりも凛々しい雰囲気です。

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Dietmar Rabich / Wikimedia Commons / “London (UK), Horse Guards -- 2010 -- 1921” / CC BY-SA 4.0

さらに言うと、ブリティッシュ馬術競馬などもイギリスが発祥です。英国王室が毎年6月に主催する競馬の祭典「ロイヤル・アスコット」などは、女王や王室関係者が出席する関係もあり、メディアの注目が高いイベントになっています。

このように日常的に馬と触れ合う機会が多いイギリスでは、馬具の生産も盛んに行われてきました。前回ご紹介したグレンロイヤルの「ブライドルレザー」も英国発祥のレザーで、ブライドル=頭絡(馬の頭部に取り付ける馬具のこと)に使用できるほど堅牢性があります。

そして、今回ご紹介する LAVENHAM-ラベンハムのキルティングジャケットもまた、誕生のきっかけは馬の体を寒さから守るために使われるホースブランケットでした。

早速、ラベンハムのキルティングジャケットについて、私が学んだことをみなさんに共有させていただきますね。ラベンハムに興味がある方、ファッションに興味がある方にぜひ読んでいただきたいです!


■ LAVENHAM-ラベンハム 誕生の物語

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Image by Andrew Hill from Wikicommons

ラベンハムは、ロンドン北東部に位置するサフォーク州の、最も美しいと言われるラベンハム村(レイブナム、ラベナムとも)で産声をあげました。この村はハリー・ポッターのロケ地としても有名で、映画『ハリー・ポッターと死の秘宝』に登場するゴドリックの谷の背景は、まさにこのラベンハム村なのだそうです。500年以上も前に建てられたチューダー様式の家々は、石炭採取により地盤沈下を起こしたため大きく歪み、傾いてしまっています。その摩訶不思議な街並みは、魔法族が住む村のイメージにぴったりだと思いませんか?

このラベンハム村に、ラベンハム創設者のエリオット夫人は住んでいました。彼女はエリザベス女王に使える女官でしたが、ある日、女王がお乗りになる馬用のホースブランケットを作ることを思いつきます。

当時、ホースブランケットと言えばジュート麻で作られていたため、保温性が悪く、雨に濡れると重くなるなど、何かと不便があったそうです。そこで、エリオット夫人はナイロン・キルティングを使い、丈夫で保温性が高く、見た目にも素敵なホースブランケットを作ったのです。

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1970年の乗馬競技会の優勝者に贈られたラベンハム製のホースブランケット

1969年に発表されたこのブランケットは、エリザベス女王はもちろんのこと、乗馬を嗜む貴族たちの間でも瞬く間に広まっていきました。英国王室だけでなく、ベルギー王室でも愛用されるようになり、ラベンハムは乗馬用具業界で揺るぎない地位を確立していくのです。

そして1972年、乗馬愛好家から「ホースブランケットとおそろいのジャケットが欲しい」という熱烈な要望に応えて、ナイロン・キルティング・ジャケットは誕生するのです。さらに同年、ラベンハムの名を決定的に印象づけることとなる「ダイヤモンド・キルティング・ジャケット」が発表されました。

ここからは、「これぞラベンハム!」と感じられるアイコニックなディテールを見ていきましょう。


■ラベンハムのアイコニックなディテール その1:ダイヤモンド・キルト

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ラベンハムの象徴とも言えるのが、こだわり抜かれたこの2インチの「ダイヤモンド・キルト」です。

そのこだわりは糸の種類にまで徹底しており、生地の表側にくる「上糸」には収縮性のあるナイロン双糸(2本の糸を撚り合わせた糸)を、生地の裏側にくる「下糸」には縮みの少ないポリエステル糸が使われています。この組み合わせにより、ほつれにくく、耐久性のあるキルト・ステッチが完成します。

また、身頃のパーツとパーツを縫い合わせる糸には、優れた強度とストレッチ性を兼ね備えるポリエステル双糸が使われています。これにより、ジャケットの運動性も高められています。

しかし、どんなに考え抜かれたデザインでも、長年愛用していれば、ほつれが生じることもあるでしょう。そうした場合でも、ほつれがそれ以上広がらないように2つの工夫が施されています。1つ目は、縫い上げるピッチ(縫い目の間隔)を限界まで細かくしていること。ピッチは細かいほど見た目にも美しく上品に仕上がり、ほつれが少なくなるのだそうです。2つ目は、ステッチの角を交差させていること。こうしておけば、ほつれた糸がスルスル抜けてしまうような惨事を防ぐことができます。


■ラベンハムのアイコニックなディテール その2:コーデュロイ

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キルティング・ジャケットにあしらわれているコーデュロイもまた、ラベンハムにとっては定番の素材です。

コーデュロイは丈夫で保温性と吸湿性に優れているため、秋冬を代表する機能素材としてよく知られていますが、その発祥は16世紀頃と言われています。イギリスでは18世紀中頃に始まった産業革命で一気に広がり、特にマンチェスターを中心に大量生産されるようになりました。上流階級の人々は、その機能性と畝(うね)の美しさから、コーデュロイのカジュアル・ジャケットを愛用し、狩猟や野外パーティをする際に好んで着用しました。こうした背景から、コーデュロイは私たちのスタイルに品性と英国らしさをプラスしてくれる素材であると言えるかもしれませんね。

ラベンハムを代表するキルティング・ジャケットのいくつかのモデルでは、襟とバインディング(またはパイピング)部分にコーデュロイが使われています。バインディングとは、生地の裁ち端を細い布地などでくるみ始末する縫製のことです。キルティング生地にコーデュロイの組み合わせが、ラベンハムらしい表情を作り出しています。


■ラベンハムのアイコニックなディテール その3:ラブンスター

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ラベンハムが日本に上陸して20周年を迎えた2014年。キルティング生地に使われていたポリエステル素材が「ラブンスター」と呼ばれるものに変更になりました。従来よりも細い糸をさらに高密度に織ることで、ジャケットの強度を高めることに成功したのです。

また、従来にはなかった撥水加工も施されるようになりました。これにより、以前よりも雨などの水分がジャケットの内部に染み込むのを防ぎやすくなり、シミや汚れにも強いキルティング生地が生まれました。

生地の裏面には、キルティングの中綿が飛び出してしまわないように特殊な加工がプラスされました。以前はスクリームと呼ばれる別素材を裏面に当てていたのですが、これが不要となったおかげで、さらなる軽量化にも成功。着る人の姿勢や動作に馴染む、しなやかなジャケットへとアップデートを果たしたのです。

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いかがでしたか?

ラベンハムのキルティングジャケットについて興味が湧いてきましたか?

次回は、2020年秋冬に発表されたジャケットのモデルについて、詳しくご紹介したいと思います。

どうぞお楽しみに!

LAVENHAM-ラベンハム Part 2 へつづく(ウィメンズ・モデル)
LAVENHAM-ラベンハム Part 3 はこちら(メンズ・モデル)

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