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夜に一人で1445段登った話

高校生の夏の夜。私は1445段の階段を登った。

少し場所の紹介をしておくと
栃木県日光市にある霧降高原キスゲ平園地天空回廊というところだ。
スタート地点に立つと天空に続くように見える階段が1445段ある。
登り切るまでに約50分〜1時間ほどかかる。
最近は秋の景色や初日の出を見る人たちで観光客が増えているという話を聞いた。

どうしてそんな場所に一人でしかも夜に登ったのか

自分語りで申し訳ないが、語ってみたくなった。

高校3年生の夏休み、周りの人たちが自分の進路に向けて進んでいく最中、
自分一人だけ、学びたいことが多くてはっきりせずに
自分の行くべきところについて延々と考えていた。
担任の先生に相談しても、友達に相談しても、提示してくれる道はあるけれど
どの方向に行くのか
決断するのは自分。
自分の優柔不断さに困り果てていた。

夏休みほぼ毎日学校に通う最中
担任の先生が〇日までに、進路について決めてくることと期限を設けた。
期限が決まったことで
◯日までに、、決めないと、、、いけないのか、、、
とズンッとプレッシャーに押しつぶされた感覚になった。

◯日の前日まで、ずっと進路のことで頭が埋め尽くされていて
大学一覧の分厚い本を両手に持ち
自分が興味がありそうな大学を片っ端から印をつけているだけになってしまい
何を学びたいかという前提がすっぽり抜けていた。

そのため前日の夜になっても決めることができずに
とりあえず、頭を冷やすためにベランダに出た。
見上げると少し雲がかっているが星がちらほらと見ることができた。

そこで、ふと昔、家族で夜にドライブで霧降に行って自分が住んでいる街の夜景を見に行ったことを思い出した。久しぶりに観にいきたいと朧げに思った。
部屋に戻り、進路について両親に話している際にそのことも話したら、
急遽、夜景を見に霧降高原に行くことになった。

暗い山道を車の明るいライトが照らす。
走行中に狸と鹿が出たりしてもやっぱり進路のことで頭がいっぱいだった。
曲がりくねった道を通るうちに、ようやく到着した。

到着した駐車場には電灯があるのに
山の方を見上げてみると真っ暗闇で明かり一つもない。

時刻21時。スタート地点に立つ。母は車で待機(登るのは断念したそうだ)
こんな真っ暗闇の中進んで行くのか、、とちょっと不安に思っていたら、
父がスタート地点から降りていった。
『え?なんで?』
てっきり一緒に登って夜景を見に行くと思っていたから、
拍子抜けしていた。

そして父は
『一人で登ってみな。』
と私に告げ、車に戻っていった。

スタート地点に一人佇む。
目の前に広がる真っ暗闇。
ちょっとの不安がちょっとどころじゃない恐怖に変わった。

どうすればいいのかわからなくなった。
もともと進路の話をしていたのに
なぜ夜景を見に行くことになったのか
わからなくなった。

ただ、何もしないで私も車に戻るのは違うなと思った。
何も得ずに戻るだけ?それじゃあ、ここに来た意味って?

目の前にある恐怖から逃げているから登れないんだろう?

その言葉が頭をよぎった。
立ち向かわずに終わってしまうのは、
自分の可能性を潰していることと同じなのかもしれない。

数分経ってようやく最初の1段を踏み出した。
目の前の真っ暗闇を照らすのは
唯一のスマホのライトだけ。

一歩一歩登っていく。
時に聞こえるガサガサ音と変な音が怖くて走って登った。ただ体力が持たず、すぐにゆっくりになった。

もしかしたらクマが出るかもしれないと思ったので
スマホで大好きなEveさんの曲を大爆音で鳴らした。
ついでに大きな声で歌っていた。

登るにつれて怖さはありつつも
なんとか1000段目にたどり着くことができた。
でもやっぱり怖かったので休むことなく登ることにした。

登る最中こんなことを思った。
〈もしかしたら、今悩んでる事って案外ちっぽけな問題なのかな…?〉

最初に足を踏み出せなかったのは、
目の前の何も見えない恐怖から逃げていたと同じように

決断を下せないのは、
立ち向いもせずに
将来の何も見えない恐怖から逃げているだけ

そんなことを思った。

登り続けるとようやく1300段になった。
ここまでくるともう恐怖は薄れ、
登り切るという目的のみ存在していた。
そして1400段目に突入。
足に何故か力が入らない、筋肉痛になりかけている。
残り45段。目的地はすぐそこに。

そしてたどり着いた。

1445段目。
隣にある眺望台に立ち上を見上げると、
地平線から出てきたであろう赤くなった月
雲の合間から見えるわずかな星
視線を変えると
幼少期から知っているはずの今市の町と遠くの宇都宮の街が、街の明かりと信号の青い光が、雲海に反射していて、今まで見たことない別世界になった。
幻想的で不思議な光景。
すごく。きれい。。。
思わず声に出してしまった。

そこから自由な時間を少し過ごした
まず1つ目は、
誰もいない静寂の中ただ一人夜景を眺めて
Eveさんの『君に世界』を聴いていた。
世界観がマッチしていてさらに感動を覚えた。

2つ目は
誰もいない山でやってみたいことがあったので
実践してみた。
それは、やまびこさん。

『やっほーー!!!!!』
思いっきり声を出したら本当に聞こえた。。
内心、出鱈目だろうって思っていたので驚いた。

いつの間にか、進路の悩みについて吹っ切れていた。

自由な時間を過ごしていると
自分の名前を呼ぶ父の声が聞こえた。
父も登ってきていたのだ。
スマホでラインを確認すると大量の電話があった。
気づかなかったのは、スマホが圏外になったり、ならなかったりしていたことだった。
よくよく考えてみたら
完全に危険なことをしていたのだと把握。
多分それを知っていて後からついてきたのだろう。

父と合流して今度は一緒に階段を降りていった。足がふらふらした状態で。
その時に父と進路のことについて話した。
学びたいことを明確にしたら今までの悩みがなんかちっぽけに思えてきた。将来を考えることが怖くて考えることを避けてきたんだ。
そのような旨の話を父に話した。

家にたどり着き、学びたいことを整理させて、
自分が今最も興味のあることが学べる大学にしよう、と
原点に立って決断することができた。

そして期限の日がやってきて担任の先生に
自分の方向性を伝えることができた。

そして今に至る。


終わりに

怖くても1歩歩んでみる。

その1歩で自分の可能性を広げることができるかもしれない。歩んで怖かったら、全然戻ってもいいし
、可能性を得られなかったとしても”得られなかった”という経験を得る。
0じゃない。次に活かせる。
登ってみて誰かに伝えたかったことでした。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
もしも機会があったら、ぜひ霧降高原の天空回廊の階段登ってみてください。
とてもきれいです。







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