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シヴァ神とパールヴァティー|亡き母の記憶


父を無くした当時、母は50歳だった。
今思えば、本当に父は早過ぎた死だったと驚く。


父と母はおしどり夫婦だったため、
ずっと母は父だけを想って、一途に一生を終えたと思っていた。


―――


母の死後、遺品整理等、実家を細々と片付けていたとき。


引き出しの奥から、丁寧に薄いベージュの
薬包紙で包んだ、海外のものらしき銀のネックレスがふたつ見つかった。


また、そのすぐそばに、ちょっとしたメッセージカードのようなものがあった。


“―――〇〇へ行ってきました。
良かったら身につけて下さい。”



男のひとの文字だった。
ネックレスの先についたモチーフは、オリエンタルなもののように見えた。



これを調べてみて・・・。


シヴァ神と、パールヴァティー。インド神話の夫婦のモチーフだということが分かった。




https://www.sekainosinwa.net/entry/pa-ruvateli/


~シヴァとパールヴァティ―~


サティー(※前妻 引用者注)を失ったショックで、悲しみ発狂したシヴァは心を閉ざした。

そして、いつ終わるとも知れない苦行の日々を送るようになった。

シヴァの妻となるため、パールヴァティ―は様々な神の後押しを受けたが、どれだけの時を待とうがシヴァは彼女の存在に気が付くことはなかった。

それどころか、この時力を貸した愛の神カーマもシヴァの怒りに触れ、灰にされてしまった。

そこで、パールヴァティ―は考えを改めて、シヴァからいったん距離を置き、あらゆる苦行を行うようになった。

するとある時、別の苦行者がパールヴァティ―の元に訪れ、シヴァの悪口を次々と話し始めた。

パールヴァティ―はその男の悪口に怒り、反論をすると、苦行者の姿が変わった。

その苦行者の正体は破壊神シヴァであった。

シヴァはパールバティーの愛が本物かどうか確認するため、わざと自分の悪口を言ったのであった。

こうして、パールヴァティ―は苦行の末、本物の愛ゆえにシヴァの妻として認められた。

https://www.sekainosinwa.net/entry/pa-ruvateli/




母の行動範囲で、インドへ行くような
その年頃の男性。


(―――あの、油絵の絵画教室の先生か・・・。)


教室の発表会場で挨拶した、
穏やかでありながら、自由な感覚を秘めている雰囲気の先生の姿が甦った。


わが母ながら、ロマンティーク過ぎると思った。先生はご結婚なさっていたのだろうか。


・・・大人の秘めたる恋。
それも、インド神話からするに、かなり熱烈な。




そう言えば。


「父親に似ている」と言って嬉しそうに買ってきた、西洋雑貨店のピエロの像を、奥に仕舞い込んでいた時期があった。



「結構値が張ったけど、ひと目見てピンときたから、思い切って買ってきたのよ」と言っていたのに。


自分で父親の似顔絵のデッサンを色紙に描き、私に「似てるでしょう?」ときいてご満悦で飾っていたのに、それを裏返して棚の隅にいつの間にか片付けていたこともあった。 


記憶の中で、私の「違和感」が答え合わせされていった。


「―――あれ、どこかへ仕舞ったの?」
と何気なく私が尋ねたとき。


何とも言えない複雑な目をして、
半分泣いたような雰囲気で、
そう言えば口ごもっていた、
あの、母親の表情。


・・・・・


亡き父親をこよなく愛する私としては、母の心模様を歓迎するには至らないけれど、もし許されざる恋でないのなら、子どもたちに遠慮しなくて良かったのに、と思った・・・。





今朝。



私は寝室の棚にある、

いくつかの写真立てに、

水をお供えする。



父、母、テルコ伯母が

笑顔でこちらを見ている。


あたらしい水を供えることは、

その水の清らかさと潤いを通じて、

穢れを洗い流し清浄な状態をもたらす

のを示している。


亡くなった人たちの心の浄化や、 

苦悩からの解放。



「穢れのない浄土」で、

安らかに眠ってもらえるように。


 ・・・手を合わせ、

今日も

故人や仏様への感謝や尊敬を想い、

祈りあげる・・・




✢✢✢


ふたつのインド神のネックレスは
どうなったか。


実は、何も言わずに娘に持たせています。(好きそうなモチーフでもあるので)


娘はおばあちゃん子だったので、彼女がもっと恋愛について分かるようになってきたら、母のエピソードを伝えるつもりでいます。


・・・なかなかに、女のカルマとは、深いものですね。



✢✢✢


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