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少女の秘密〜猫と僕の日々|#短篇小説


#創作大賞2024


Chapter4.

少女の秘密




モンは僕のTシャツの衿元から顔を出して、身体は服の中に埋もれて眠っていた。

(―――いったい、どういうことなんだ?)


状況が変わり過ぎて、ますます頭が混乱してきた・・・。




それから、何日も日常に変化はなかった。


朝モンを家に置いて仕事に出かけた。
内鍵を窓に取り付け、日中少し窓を開けておくようにすると、2階なのでモンはどこかへ遊びに行っているようだった。


夜に帰ると、玄関先までにゃお、と甘えた声で鳴きながら迎えに来た。


僕がダイニングテーブルで夕飯を食べていても、見つめるだけで何も欲しがらなかったし、サブスクで映画を観てくつろいでいるときは、ソファの横に登ってきて、脚などを舐めて身繕みづくろいしていた。


見る限り、まったく普通の黒猫にしか思えないのだ。


また、シャワーをかけて洗うと、あの不可思議な変化は起こるのだろうか・・・。


何日か躊躇ちゅうちょしたが、洗わないのも良くない気がした。


もしも「変身」したら・・・。


幼いとはいえ、女の子の裸の姿を見るのは忍びない。色々考えて、一緒に浴室の中に入るのはやめた。シャワーヘッドを上のほうのフックに掛けて湯を出してから、モンを残して、浴室の外へ出ることにした。


モンを浴室に閉じ込めたら、また怖がってにゃあ、にゃあとしきりに鳴いた。


「―――モン、シャワーの下に行って」


にゃお、という声。


「怖くないから。シャワーで毛を濡らして」


我ながら、猫に必死で外から声をかけているのは滑稽こっけいな感じがする。


「にゃあ、にゃあ・・・

にゃあ・・・にゃ・・

なんだか・・・こわいよ・・・」


あ、と思って浴室のりガラス越しに中を改めて見ると、影が女の子の大きさに変わっていた。




モンはやはり特別な力がある猫なのだ。チェストから僕のシャツを念のため出しておいて良かった。


(これは、下着も買ってやらなくちゃ駄目だな・・・

まいったな、何か幼児愛好の変態みたいだ)




それから何回かモンの「変身」に立ち会った。観察してみて、不可思議な状況の「システム」が分かってきた。


モンは地肌まで濡れたとき、「変身」が起こる。


モンが乾けば、「変身」が解ける。どうも、(髪の)毛が乾くというのが、ひとつの分岐点ターニングポイントのようだ。


何故少女なんだろう、と疑問だったので、サイトで猫と人間の年齢の表を調べてみたら、ぴったりモンに当てまっているようだった。


拾った頃を考えたら今は生後半年くらい。そうすると、人間なら9歳ぐらい、ということなのだろう。


成る程・・・となりながら。


(ということは・・・

これから、どんどん「女性」に変わっていくのか?)


僕はそこに思い至って、パソコンを注視しながら喉がぐっ、と詰まった。


ますますこの不可思議な出来事の深みにはまってしまいそうな予感が襲ってきたのだ。


モンが女性に成長したときに起こりそうな、得も言われぬ不安・・・


その「予感」が現実となったのは、さらに半年後のことだった・・・




【continue】




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