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辛い告白〜猫と僕の日々|#短篇小説
拾った黒猫と僕との話を編んでおります。以下の短篇の続きです。
(過去のシリーズ全部読めます)
↓ ↓
僕:独り暮らしのサラリーマン。前の彼女は年上。
モン:拾った黒猫。シャワーを浴びて、何故か裸の少女に変身した。
「僕」を頼りにしながら次第に成長している。
ーーー
《前回のハイライト》
僕は悪夢を見るようになっていた。
モンが少し大人の女性になり、純白のウェディングドレスを着てブーケを手にしている。
僕は教会の祭壇の近くで、振り返りながら美しいモンを見ている。
モンは微笑みながら僕に近付いて来るが、途中で突然姿を消してしまう。
えっ、と動揺したとき、周囲が雨の公園に変わる。すると、公園の遊歩道で、濡れ尽くした猫のモンが、横たわって死んでいる・・・
―――あまりにリアルで、思わず声を上げて飛び起きることがあった。動悸も酷かった。
(そうだよ・・・モンは、どうしても僕と「本当に結ばれる」ことは無いんだ。
仮にもし、幸せに思えたとしても・・・それはいっときでしかないんだ)
このことを噛み締めると、ベッドで顔を押さえながら涙が出てくるのだった。
![](https://assets.st-note.com/img/1721041210317-KDn3KmIluq.png)
モンは次第に恢復して、餌やミルクを摂れるようになり、鳴き声も確りしてきた。
仕事から帰宅したあとや休みの日は、家に居るとモンはずっと僕について来る。
食事をしているときもパソコンを使っているときも、僕の椅子の下で丸くなって待っている様子だし、ソファでは膝の上に乗ってくるほど僕から離れなかった。
(何か言いたいことがあるな・・・)
勘でしか無いが、そんなことを感じた。
「モン?―――モン、久し振りにシャワーを浴びるか?」
モンは座って僕の顔を見上げていたが、その顔つきのまま、にゃあ、と鳴いた。
「よし。おいで」
僕はモンの着替えを出し、浴室まで行って、いつものようにシャワーヘッドを上のフックに掛けた。お湯の勢いや温度を調整してから、足元のモンに言った。
「―――じゃあ、モン。何かあったら呼んでくれよ。
外に出てるから・・・」
![](https://assets.st-note.com/img/1721043958052-m67zMnEIdX.png)
ドアの下の方に、磨りガラス越しのモンの黒い影がぼんやりと映っている。
僕は浴室の外の棚に、タオルや着替えを置いた。
シャー、というシャワーの軽い音が、ざざ、という重めの音に変化したのが聴こえたとき、ドアを見ると、モンが髪の長い女性に変身して、僕の顎のあたりまで大きくなっているのが分かった。
![](https://assets.st-note.com/img/1721044026612-ehoISTsHlM.jpg)
女性になったモンが、服を着て浴室の外の部屋まで出て来た。
モンと僕の目が合った。
モンの鳶色の瞳が潤み、唇が何か言いたげに少し開いた。
モンは磁石で引き寄せられるように僕の胸にすっぽり入ってきた。僕はモンの背中に手を回して、静かに抱き締めた・・・
![](https://assets.st-note.com/img/1721044652423-vBGBpwlHfq.jpg)
「行方不明になったとき、不安だっただろう?本当に・・・悪かったね」
僕はベッドの中で、モンに腕枕をしながら、改めて謝罪した。
「・・・ううん・・・私が遠くへ行っちゃったのが、いけなかったの。
ヒロキは、悪くないわ」
モンはぐっと近付いて、僕の首筋に顔を寄せて話した。モンの唇が動くのを首で感じた。
「あのね・・・ヒロキは悪くないけど、雨が降り始めたとき、こわいことがあったの・・・」
モンはそう言って、しばらく黙り込んだ。
「―――何?」
僕はモンの表情を見ようとしたが、見せてくれなかった。
「あのね・・・怒らないで、聞いてね。
私・・・公園の奥まで行ったの。そうしたら、野良猫みたいな雄のトラ猫がいて、突然追いかけられたの。
おしりを引っ掻かれて、一生懸命逃げたんだけど・・・」
僕は怖気だった。
モンは確かに、猫の盛りのシーズンに、標的にされる格好の雌猫なのだ。
「どうした!?・・・逃げられたのか」
「・・・・」無言。
「―――モン?どうしたんだ、捕まったのか」
モンは、顔を押し付けて泣いていた。喉の奥に固まりが入ったように、僕も言葉が出なくなった。
モンの涙は、すべてを物語っていた。
雄猫に捕まって、襲われてしまったのに違いなかった。
耐え難い出来事だが・・・そのことが、更に違う悲劇を生むとは、このときモンも僕も、知る由が無かった。
【 continue 】
▶Theme Song
回春/女王蜂feat.満島ひかり
![](https://assets.st-note.com/img/1721043154057-bjaVvYoum1.png)
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