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書籍作りの裏側見せます、校正者エッセイ『文にあたる』

 普段読んでいる本や、雑誌、漫画、およそ世の中に出回っている文章のチェックを行い、何か齟齬がないか、誤植がないかを確認し綺麗な形に整える職業、校正者のエッセイ。
 著者の牟田都子氏は、現役校正者。普段どうやって構成の仕事を行っているのか、本と漫画の公正の比較や、エッセイの校正で作者が引用している詩について調べて右往左往する様が語られてる。
 調べ物で辞書にあたり、引用元が分からなくて国会図書館に赴いたり、会社においてある辞書を全て引いて何が「正しい」のかを追求していくのには脱帽だ。そこまで調べるの?と読んでて思わず声に出かけること多々有り。単にお仕事エッセイとしても楽しい。

 でもそれ以上に、この著者の言葉や、本にかける愛情ゆえに調べ物を厭わない姿勢や、ノンフィクションと小説の校正のポイントの違いについて述べたところなど、言葉を生業している人特有の姿勢自体が味わい深い。
 軽やかな文体で各エッセイが2、3ページ程度なのですきま時間に読むのもよし、一気読みして、いっちょ自分も頑張ろうと、滋味として消化するもよし。
 この本を読みながら、紙の辞書を引き引き、あの小説のここがそう言えばわからないままだったなと寄り道するもよし。文章を味わう道連れに最適な一冊だ。


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