歴史エンタメは最高
小説を読むにあたって、もしくは映像作品を観るにあたって、どういう作品がもっとも興奮するかは人によって様々だろう。
勿論アクション映画やサスペンスはハラハラドキドキが醍醐味のものもあるし、興奮するに違いない。
ただそれとは別に、私は、作品が自分の生きている世界と繋がった時にとても興奮する。
完全なファンタジーよりも、この登場人物はどこかで生きているかもしれないな、と思える作品が好きだ。私はお仕事ドラマが大好きなのだが、コレに通づるものがある。
異世界よりも、もしこの時この人がこうしていたら今住んでいる世界はもっと違ったものになっていたかもしれないのか、と思える作品が好きだ。その点、歴史物というのは史実を元に作られていることが多いので、自分の生きている世界と繋がっていると感じる。建造物とか史跡が今も残っていると、もしかしたらこの人は、ここでこんな事を考えていたもかもと想像することも難しくない。
前置きが長くなった。タイトルにもある通り、歴史エンタメはいいぞ、という話をしたい。
歴史エンタメ、と括らせてもらったが、歴史物の作品は実に多岐にわたる。なるべく史実に沿ったドキュメンタリーテイストのものから、いやはやそんなこと有り得ないだろうと思うようなギャグテイストのもの、歴史上の有名人物が主人公のものもあれば、時代のどこかに生きていたかもしれない架空の人物の話もある。最後者は時代小説などと呼ばれることもある。(調べてはみたものの、歴史小説と時代小説はかなりボーダーが曖昧)
どちらにせよ、舞台は実在した日本の過去で、基本的な歴史的出来事は共通して起こる。
だから、どの新選組を題材にした小説でも芹沢は殺され、池田屋事件は起こり、山南敬介は切腹し、鳥羽伏見では敗れ、近藤勇は斬首され、土方歳三は函館五稜郭に辿り着く。
ただここからが面白いもので、これだけ共通のシナリオがあるにも関わらず、誰が主人公かによって、出来事を追うのか人物を追うのかによって、もしくはどこの時代に重きを置くかによって、全く異なった小説が生まれる。さらに面白いのが、文献や資料や史実の狭間の猶予は作家の想像に委ねられているという点である。だから、土方歳三と山南敬介の間一つとっても全く違う印象の話があるし、会津に残る隊員と仙台へと向かう隊員の間のやり取りも様々だ。龍馬暗殺の下手人もバラバラだし、龍馬生存説や土方歳三生存説が出てくるのも、面白い。資料に残っている出来事さえ、辻褄さえ合っていれば、龍馬と土方がバディを組む話も成り立ってしまう、面白すぎる。それだけ歴史物には夢がある。だから同じ題材で基本条件も同じにも関わらず、多くの作品が生まれる。
これの最たる物は、本能寺の変だと思っている。ここ数年のうちに一体何回本能寺の変が起きただろう。大河ドラマだけでも5年経たぬうちに2回本能寺の変が描かれている。しかも主人公は明智光秀と徳川家康という全く立場の異なる人物で、本能寺の変に至るまでのそれぞれの関係性も全然異なっていた。私個人は、麒麟がくるのファンなので、前者の作品の本能寺が好きなのだが、ここまで描かれ方が違うのにはかなり驚いた。麒麟がくるの本能寺の変は、信長が「十兵衛か、であるならば是非も無し」と満足さえも見えるようなすがたを見せる一方、どうする家康の本能寺は、信長が謀反を起こしたのが家康ではなく光秀であると知って大層不満な表情を見せる。どうする家康はかなり斬新なパターンだと思うけれども、本能寺の変に諸説ありすぎることは言うまでもない。秀吉黒幕説も、信長生存説も、光秀生存説も、確かな記録がない故に、何もかもありえなくないのだ。作品を作るものにとって、この「諸説あり」こそが最高の武器だ。
そして見る者にとっても、最高のロマンである。
最後に私の好きな歴史エンタメをいくつか紹介したい。
小説「相棒」五十嵐貴久:これが龍馬と土方のバディものです
小説「黒龍の棺」北方謙三
小説「一刀斎夢録」浅田次郎
NHK大河ドラマ「麒麟が来る」主演:長谷川博己
NHK連続テレビ小説「あさが来た」主演:波瑠
NHKドラマ「大奥」原作:よしながふみ
舞台「髑髏城の七人」監督:いのうえひでのり
小説「のぼうの城」和田竜
ひとまず思いついたものだけ書いたので、また思い出したら追記しよう。
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