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「ルミネッセンス」窪 美澄(読書感想部)

はじめに

2023年7月に刊行された本書、表紙が可愛いなと思い手に取りました。
最近の本といったイメージ、ページ数も200弱で読みやすそう。
私は普段あまり小説を読んでいなかったのですが、とっつきやすそうに見えました。(結果、割と時間をかけず読めました。)
小説って相性が合わない文体や書かれ方だと、全然読めないと思います。こちらはその点とても読みやすかったです。

著者:窪 美澄さんについて

窪さんといえば、映画にもなった「ふがいない僕は空を見た」に代表されるように女性向け小説で、R18のテイストの作品が多いですね。
こちらもそういった描写があったり、全体的な雰囲気がまさに夜、性、といった匂いがしました。そうでない話も収録されているのですが。(※短編集です)
作者の経歴としては、広告代理店を退社後、編集ライターとして、妊娠・出産・女性の健康や、占星術、罨法についてもライティング活動をされているようです。

読んだ感想

5作の短編集なのですが、1作目から、「あぁ、窪美澄だなぁ」と感じさせる湿度があります。王道からそれてしまった恋愛と、性的な水っぽさを持つ話がしょっぱなから出てきます。個人的には、読んでいて、じとっとした気持ちになってしまうのであんまり好き内容ではないですが、
違和感のない書き方と、光景が頭に浮かぶ描写はさすが有名作家だなと思わされました。話の起承転結もうまく流れていき、勢いであっという間に読み切れます。

5作品とも、話として繋がってはいないのですが、登場人物が学生時代の同級生であったり、同じ団地を舞台にしていたりどこかしら、話同士の連鎖があります。

いちばん好きな、タイトルと同名の話「ルミネッセンス」。
主人公の少々武骨なキャラクターと、不倫の話なのですが、その中でも一線を越えまいとする多少のプラトニックさが、まだ胸糞悪い感じがせずに読めました。同情できる部分もありました。
1話を覗いて、最後は主人公が破滅していくのですが、この主人公の最後が一番、泥沼というよりは、エモい感じで幕引きを迎えます。

まとめ

「ルミネッセンス:原子や分子が外部からのエネルギーを吸収して発光する現象」
なるほど読み終わった後だとタイトルの意味と表紙の意味が分かります。
キャラクタたちが心の奥底に持っていた感情の種火が、周りの人物によって増強され、収まりがつかなくなって、暴走する。その感情のたぎりを発光とたとえてるのだと思います。また、(話の方の)「ルミネッセンス」は実際に蛍の光や車のライト、主人公が失明するそのときの強い光、光が話の中に出てきます。この話も本も、タイトルはやはりルミネッセンスがふさわしいですね。

総じて、読みやすくて良い本でした。小説も爽やかなものばかりでは物足りないので、本作のようなダークなのも面白かったです。

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