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体温管理の重要性知っていますか? 体温調節機構と薬剤の関係


こんにちは。手術室看護師のnanaです。



皆さんは手術室内でなぜ体温管理が重要か知っていますか。

手術室看護師であれば、必ず勉強する周術期の体温管理。
今回は周術期の体温管理についてです。


体温の調節機構


ここはちょっと堅苦しい話になるので、苦手な方はざっと流し読みしてください。


言うまでもなくなく人は恒温動物です。

人の中枢温は、視床下部・中脳・延髄・脊髄などを介し極めて狭い温度の範囲内で細かく調整されています。
さらに交感神経・副交感神経が複雑に絡んできます。

基本的には抹消と視床下部を結ぶニューロンの刺激によって調整されています。


体温調節機構は大きく3つに分けることができます。

①温熱情報の中枢への伝達

皮膚は温度に関して全身のうちで最も感覚の鋭い器官であり、理論的には3/1000℃の温度の変化を感じることができるそう。特に顔周囲は他の皮膚に比べて約5倍感度が高いのです。

体温中枢への温熱情報は前部脊髄にある脊髄視床路を通るため、この部位が何らかの影響で障害されると体温調節機構が破綻することに繋がります。

視床下部・それ以外の脳部位・脊髄・腹部と胸部の深部組織・皮膚の大きく分けて5箇所がそれぞれ20%ずつ中枢へ温度情報を送り、視床下部で統合された温度情報によって体温を調節しています。そのため例えば、皮膚温が1℃変化したとしても、中枢温は0.2℃しか影響を与えないとされます。


②中枢における温度情報の統合

先ほど書いてしましたが、体温調節は視床下部を中心として行なっています。また視床下部は覚醒や睡眠のリズムをつかさどる部位とも関連があるため、体温は睡眠や覚醒に伴って常にごく僅かな変動を繰り返しています。これがいわゆるサーカディアンリズムと言われるものです。


③末梢における反応

体温が低い場合は末梢血管収縮やシバリング、シバリングによらない熱生産を行い、逆に体温が高い場合は発汗や末梢血管拡張によって熱放散を行い、体温調節を行なっています。



薬剤の影響


全身麻酔の手術の麻酔導入時によく使用される薬剤の体温への影響のみに焦点を当ててまとめてみます。



・フェンタニルとレミフェンタニル: これらのμオピオイド受容体作動薬は、中枢神経系での疼痛伝達を抑制します。しかしながら、これにより交感神経活動が抑制され、末梢循環における血液流が減少し、体温の再分布が生じる可能性があります。

・プロポフォール: GABA-A受容体を活性化することで中枢神経系を抑制するプロポフォールは、血管抵抗の変動を引き起こし、体温の再分布が生じる要因となります。これが手術中や手術後に患者が寒さを感じる一因となります。

・ロクロニウム: 非脱分極性の筋肉弛緩薬であるロクロニウムは、筋肉の弛緩をもたらします。この弛緩が代謝活動の低下を招き、体温の再分布を引き起こす可能性があります。

・セボフルランとデスフルラン: これらの揮発性麻酔薬は、中枢神経系を抑制し、体温の再分布が生じやすくなります。これが患者が手術室で冷感を感じる一因となる可能性があります。

・ネオシネジン:神経筋遮断薬であり、アセチルコリンの受容体に競合的に結合して筋肉の収縮を阻害します。この薬剤が使用される場合、筋肉の動きが制限されることから代謝活動が低下します。


このように麻酔導入でよく使用される薬剤は体温低下を引き起こすリスクがあります。



全身麻酔下での体温の変化


さて体温調節機構と麻酔導入でよく使用される薬剤の体温への影響を踏まえた上で、全身麻酔下での体温の変化をまとめます。

全身麻酔下では体温調節機構が喪失するため、徐々に低体温に至ります。


第1相:再分布性低体温

手術を受ける患者は、精神的な緊張から交感神経が優位の状態にあります。手術室の室温が低い場合あるいは、手術台が冷えていると、中枢の熱が奪われないように末梢血管の収縮反応が起こります。末梢組織への血流が減少し、熱は中枢の重要臓器に集まり、体温の維持を行います。しかし全身麻酔導入によって急激に未血管が拡張すると、中枢から末梢へ熱の再分布がなされます。麻酔開始直後から30~60分以内に起こるこの中枢温の急激な低下を再分布性低体温といいます。



第2相:熱喪失

生体から熱が喪失する場合、伝導(conduction)、対流(convection)、蒸発(evaporation)、放射(radiation)の4つの経路があるといわれています。

ドレープで覆われていない部分の体表からは放射(不感を含む)によって、手術台と接触している部分は伝導で、呼吸回路からは蒸発で、ドレープで被覆されている部分は対流で熱が奪われます。麻酔導入から1時間後以降は中枢から末梢へ熱の再分布がゆっくり継続します。再分布性低体温では放射と対流が熱喪失の大部分を占めていると言われています。対流は空気などの分子の移動によって促進される熱交換のことをいい、体表面の限界層の空気を循環させることで体表面の温度を変化させることが可能です。




第3相 :熱平衡

第2相が続いた後で、生体周囲の気温、手術台の温度と生体の体温が近づいて熱喪失が少なくなっていきます。麻酔薬による体温調節範囲が、34.5~38.0°Cまで拡大し、34.5°C以下になると体温調節機能が出現し体温低下が抑制されるといわれています。


OPE nursing 2023 vol.38 no.11 (1029) 7 より引用



少し堅苦しい内容になりましたが、私自身が新人看護師の頃なかなか良い参考書に巡り会えず、様々な参考書を読み漁ってたので今回1つのページに私自身の振り返りのためにまとめてみました。

良ければ参考にしてください。


最後まで読んでいただいてありがとうございました。



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