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最後のホームラン〜泥棒と呼ばれた本塁打王〜 0話

一人のファンとして、それは目が覚めるほどの朗報だった。

 松崎がグラウンドに帰ってくるんだ-。

 私は兼ねてから、いやこの世に生を受ける少し前くらいからの筋入りのポメラニアンツのファンだった。
 というのも父が熱狂的という言葉では足りないほどのポメラニアンツ狂だったからだ。
 全盛期ポメラニアンツのスタメンはおろか、各年代ごとのベンチ入りメンバーまで諳んじることができる人間はそう多くないだろう。そのうちの一人が、そう私だ。
 

 少し話が逸れたが、先刻の朗報に話を戻そう。

 突如として姿を消すこととなったポメラニアンツの生え抜きの大砲がグラウンド復帰を宣言したのだ。

 その背景にこそ、若干の暗い影を落とす問題があることはわかっているが、この際そんなことはどうでもいい。

 でかでかと復帰の文字が記された新聞の記事をさらに読んでみると、どうやらいきなり支配下登録での復帰ではなく、育成契約からの再スタートになるようだ。

 松崎が3桁の背番号を背負うことになるというのも、それはそれで珍しくて心躍る展開ともいえよう。このポメラニアンツ狂にとってみれば。

 早速キャンプ地行きへのチケットを手配し、今年のシーズンへの期待値を最大限にまで振り絞った優勝予想と共に家を出るのであった。
 
 
 
 
 この物語はそんな一人の野球選手の復帰への道のりを追った物語である-。
 
 

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