積読の詩
お部屋は 5月の光にうっすらと濡れていて
あちらこちらに積まれた本は 砂浜で静かに風
を受ける 滅びた貝の街のようです
私がすべすべとしたページを落とすときにでる
小さなそよ風が 浜にふくのです
あぁ 母のやわらかき腕(かいな)のように 積もった本が じっとわたしをみつめていました
ぷいっと私は顔を背けました 活字は 冬の蠅に似ていると思いました
つい喉が震えました
そして ため息が吐き出され ふんわりと軽くなった私の頬は ついつい浮いてしまうのでした
今読んでいる本を読み終えて 次に読む本を決めたとき
私は高らかに叫びましょう
ついにこの本を読めるんだ!
と
5月の風が窓を叩きました
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