猫背曲(ネコノセマガリ)

宮崎の高校生です!若々しくはありませんので、お水をください。できれば、ガラスのコップに…

猫背曲(ネコノセマガリ)

宮崎の高校生です!若々しくはありませんので、お水をください。できれば、ガラスのコップに入ったものを。 人文学Love。 はてなブログの方でも書いています!→https://kodamatakashi.hatenadiary.jp/entry/2024/03/07/094701

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積読の詩

お部屋は 5月の光にうっすらと濡れていて あちらこちらに積まれた本は 砂浜で静かに風 を受ける 滅びた貝の街のようです 私がすべすべとしたページを落とすときにでる 小さなそよ風が 浜にふくのです あぁ 母のやわらかき腕(かいな)のように 積もった本が じっとわたしをみつめていました ぷいっと私は顔を背けました 活字は 冬の蠅に似ていると思いました つい喉が震えました そして ため息が吐き出され ふんわりと軽くなった私の頬は ついつい浮いてしまうのでした 今読んでい

    • 病室

      白が私に噛みついて 閉じた瞼は私を突き放して 病室には静けさが降り積もります かなしいのです やわらかなベットにかなしいしわができていて いたたまれなくなって わたしは廊下に逃げ出しました ああ 病院の清潔な床は なんて哀れな音をださせるのでしょうか わたしはきっちりと手入れした ぴかぴかの革靴を履いてきたことを 後悔しました あのひとのところに戻るのが 恥ずかしいような気がしました 涙が すべすべとした私の頬に流れていました こすったら 甘いりんごのかおりがしました わたし

      • くずれる

        朝には魚が 鱗を光らせて ちぎれた挨拶を ひきつれます ほろほろ落ちる 工業団地の けむりはとけて 魚たちの 大きなえらに かけこみます ひろがっていきます あっという間に 彼らは光りになって   ちいさくなっていきます 夜には鱗が 沈んで 輝く泥となります ひっそり歌う 濡れた森に おうむは一匹 音は 流れる川をかためていきます くずれていきます なにをみているのですか  くずれていきます

        • メモ:ちょっと考える―〈倫理〉が〈語られる〉ということ―

          学としての倫理学、または倫理を〈語る〉ことは、〈倫理〉から離反することになる。 〈倫理〉は最も人間的なものであり、だからこそ人間に最も反するものとなる。これは、〈倫理〉が、〈真理〉とは異なるということ、そして〈倫理学〉が〈真理〉を扱うことを〈至上〉とすることを暴きだすものである。 〈私たち〉は〈反省〉といったかたちでしか〈倫理〉を取り扱えない。そもそも、〈倫理〉は〈反省〉、つまり〈懺悔〉である。 もし、この〈反省〉を度外視して、〈倫理〉の〈存在〉を問題にしたとき、私たちは〈倫

          詩 かがみにふれないで

          かがみにふれないで 無関心に立つ、背筋が伸びた鏡の前で 気難しい青年のような顔をしないで。 曇りのない鏡には、赤く目をはらしたあなたの顔が より子供っぽくなって映っている。 かがみにふれないで 閉じ込められて動けなくなった光である鏡は、 あなたの瞳を揺らす涙をぬぐってはくれないでしょう ただ、あなたの生活の光を映し続けていた鏡は、 あなたのその涙が、〈光〉であることをあなたに知らせます。 かがみにふれないで 私だけに涙をみせて 輪郭ばかりがはっきりして 常にぼや

          詩 かがみにふれないで

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          いまだ、誰かの手にある本を想う 頼んだ本が届くまでの期間は、少しの活字も読みたくなくなる。それは読んでいる本に対して無礼な振る舞いをしないためである。そしてこの期間は、恋人が見せた視線の意味を考える時間のような、幸せで少し苦しい思いに似ている、と私は思う。 図書館で朝食を ―おや、あそこの棚に、やけに分厚い本があるな。冷たいアスファルトで休んでいる雨水たちのような色をしている。うん、フランス文学の棚だ。『失われた時を求めて』だったらもう少し厚いかな。近づいてみよう。ああ

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