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模倣するなら、まずは読む

物事を習熟するのに、すでにできている人の真似をするのが手っ取り早い方法です。会社では先輩の仕事を見て真似をして、漫才師はテレビや舞台で先輩芸人の芸を真似します。

小説家も例外ではありません。先人の優れた作品を読んで、自分もこんな小説が書きたいなと思い、真似をして書きはじめるものだと思います。小説を読んだことがないのに書きはじめた人っているのかな。

もちろん、盗作はダメです。だけど、他人の作品を読んで真似して書いているうちに、プロの小説家の作品がいかに優れているか知ることができます。自分とプロとの実力差に落胆し、それでも少しでも差を埋めようと試行錯誤を繰り返すうちに自分なりのスタイル(作風)ができてくると思います。

小説の場合は、優れたものを手元に置いて研究することができます。
出版することをひとつのゴールとするなら、「ゴール」である本を書店で購入できるわけです。
絵画のように本物を入手することはそれほど難しくありません。
多くのスポーツのように相手がいたり、天候やコースによってやり方を変えたりする必要はありません。
完成した小説は常に安定して、僕らの前にあります。高い評価を得ている小説は、それ自体が「正解」なのです。

ただ、小説の難しいところは、他の模倣をしても誰も評価してくれないということです。
スポーツではプロ選手と同じことができるようになれば一流になれます。三笘選手のようなドリブルができて相手選手をぬければ、三笘選手と全く同じやり方でも評価されるわけです。
でも、小説家は違います。他の作家の作品と異なる作品を残さなければなりません。小説にはオリジナルティというものが必須です。

小説家が模倣で学べることはやり方であって、結果はそこについてきません。ただ、模倣によって基礎ができれば、その上に自分が設計した家を建築することはできると思います。

小説を模倣して学ぶ方法に「模写」があります。優れた小説を自分で書いてみて技術を習得する方法です。
僕も何度か試したことがあります。昔は手書きでノートに、少し前はパソコンでプロの小説を書き写してみました。
しかし、ちょっと書いてすぐにやめてしまいました。ひとつの作品も模写することができませんでした。
やめてしまったのは、自分の集中力のなさが主因ですが、やってみて時間の割に効果が薄いと感じました。
自分で模写することで、作者の表現方法、文章の意図が、ただ読むだけよりもはっきりと伝わってきました。だけど、模写はあまりにも時間がかかります。
集中力があれば良いのでしょうが、長い時間写していると飽きてきて「作業」になってしまいました。そうなれば、文章の行間からプロの技術を盗み出すことよりも書き写すことがゴールになってしまいます。

模写は諦めて、一冊でも多くの小説を読むことを自分に課しました。新しい物語を読めば、多くの表現技法を楽しみながら学べます。
知らない技法や興味を引く表現があれば、メモをしておいて、自分が小説を書くときに使うようにしています。

集中力がある人には模写が有効だと思いますが、そうでない人は、とにかく読んで、プロの技術を模倣するのもありかと思います。

初の商業出版です。よろしかったら。

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