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図書館好きが多すぎる

最近読んだ小説が連続して「図書館」が舞台でした。図書館が出てくる小説はたくさんあります。「図書館戦争」「図書館の神様」や、村上春樹さんの作品には「海辺のカフカ」「街とその不確かな壁」など図書館が登場する小説が多いです。
図書館以外にも、本好きの人物が登場する小説は数限りなくあります。感覚的には、2割ぐらいの小説には本を読む人が登場する気がします。

どうして小説家が図書館や本好きを小説の登場人物に採用するのか。まず考えられるのは、図書館好きの小説家が多いからでしょう。小説家の多くは読書好きで、ほぼ例外なく図書館が好きです。
自分が好きなものだし、よく知っているから図書館を物語の中に使ってしまいがちなのではと思います。

もうひとつの理由は、本を買う読者が図書館好きからだと思います。本を買って読むぐらいですから、図書館も好きな人が多いでしょう。
映画の舞台がよく知っている土地だと嬉しいように、自分が好きな場所が小説に出てくると嬉しいですよね。
読者が知っている場所だと作家も描写が楽ちんです。読者が見たことがあるので、「図書館の書架」と書けば、詳しい説明をしなくても読者は大体どのような風景かイメージがつきます。

拙作「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」に登場する主人公のふたりは本好きです。
文庫本を刊行するときに増補した書き下ろしの掌編には図書館が出てきます。文庫本として刊行するなら、紙の本が好きな人に喜んでもらえるようにと図書館のシーンを追加しました。

もちろん、読書好きな人向けに図書館が舞台の物語を提供するのは悪いことではありませんが、あまり増えすぎると、本を手に取るターゲットが狭まってしまう気もします。本好きの人ためだけに本を提供していたら、マーケットは広がりません。普段、小説を読まない人が手に取ってくれて、読書する人を増やさないといけません。

もちろん、好きな人に好きなものを届けるのも大事な戦略ですので、要はバランスが大切だと思いますが。

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